連載
2006年09月20日 00時00分 更新

くねくねハニィの「最近どうよ?」(その1):

E3がなくなっちゃったってどういうこと?

こんちわ〜、はじめまして! くねくねハニィと申します。ちょっとだけ知ってるけどよく知らない海外ゲーム市場について私なりの解釈で解説しちゃうくねくねハニィの「最近どうよ?」。で、第1回目のお題目は「E3がなくなっちゃった?」です。あ、基本的に軽い感じでお伝えしますんでそこんとこよろしこ。

E3がなくなっちゃった?

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 毎年秋には東京ゲームショウがあるように(あ〜昔は春と秋だったなぁ)、毎年5月と言えばアメリカでE3(Electronic Entertainment Expo)があるのだ! と思っていたハニィは、がっかりんこ……。ロサンゼルス コンベンションセンター(過去にアトランタで行われたこともある)で行われていたE3が、2007年から縮小になると発表されたのであ〜る。

 人によってはなくなったとさえ言う人もいるんだけど、これってどういうことかと言うと……。あれだけ大きなショーフロアとか重低音ガンガンのブースとか、ちょード派手なコスチュームのおねぇさんやムキムキおにいさんとかが存在しない、商談会とかカンファレンスのような質素な形式になってしまうからなんですな〜。

 2007年からは7月に「E3 Media Festival」って名前で行われる予定なの。基本は商談形式でショーといえるものではなくなってしまったよう。3月にサンノゼで行われるGDC(Game Developers Conference)と間をあけるという意味でも、東京ゲームショウからも2カ月あけてるってのも、賢明な判断だね。

 でもさー、日本のゲーム業界大移動はもう見られないのだなぁ。LA行きの飛行機に乗ると全部知り合いみたいな。東京ゲームショウにも出展しない任天堂が大きなブースを構えてるってのも魅力だったよね〜。やっぱりE3は世界で開発されているソフト群がいっぺんに見られる! って意味ではかけがえのないイベントだったので、ハニィとしては、おっさん達ではなく、これからの若いクリエイター君たちに世界のゲーム開発レベルをぜひ見てもらいたいと思っていたのだけど、ホント残念。

でもなんで縮小したの?

 理由はなぁに? というのがあまり日本では報道されてないけど、大きく5つの理由をあげてみたよ。

(1)EA(Electronic Arts)と某ハードメーカーが出展拒否?

 ハニィに言わせればこれはあくまでも表層的な理由だけど、2006年第一四半期の財務状況がよくなかったEAがもうE3には出展しないと言ったとか、あるプラットフォーマー(この場合はソニーかマイクロソフト、もしくは両方だな)が出展しないと言ったとか。「そんなことで?」と思うかもしれないけど、EAはE3でいつも真ん中の大きなブースを構えていたのね。しかも世界のゲームソフトシェアの20%はEAなんだぞ! とも言われているほど世界のゲーム業界ではジャイアントな存在なんですわ。そんなジャイアントがいないゲームショーなんてありえないわけ。

 でもさ、今年はハードの切替を前にユーザーが買い控えして市場はよくない、って定説を考えれば、この四半期という短い間の利益が悪いからだけでそんなことにならないはずでしょ? だから表層的って思ったのだよ。

(2)出展コスト高すぎなんだな

 数年前までは数億円といわれていた出展費用も大きなパブリッシャーともなるとケタが1つ違う。そもそも12年前にE3を開催しようって決めたのは、「ゲームソフト制作販売会社として小売店のオーダーをきちんと確保するため」だったから、エンタメっぽい派手めの商談会って感じだったの。ところが年を重ねるたびに肥大化して、お高いショーになってしまって、ビジネスショーの域を超えちゃった感じ。大きな会社は大きなブースを構えて注目を浴びるけど、小さな会社にとっては敷居が高くてなかなか出展できないってのもビジネスショーとしてはどうよ? って感じになってたのも事実。

 メディア向けと考えたとしても、あまりにも売りの段階まで時間が遠く(開発中のソフトだからね〜)話題を引っ張れないから、結局E3自体のコストパフォーマンスは近年???な感じだったんだね〜。

(3)デカすぎなのよ

 出展するパブリッシャーからすると、E3期間を含めほぼ2週間はショー準備のため通常業務がまったくできず、思ったより売りに結びつかないという効果測定結果にげんなり。E3は世界各国からたくさんの人が集まるから、各社が夜に主催するパーティとかも相当重荷みたい。

 本来お相手すべき小売店とよりも、メディアやライセンシーなどと接することが多くなって、本末転倒だ! というのが一番聞かれる声だね。だいたい、海外の大手のパブリッシャーだと、それぞれ自社ソフトを売り込むためのプライベートショー(たとえばEAのHot Summer Nightとか)を持ってるから、競合他社のブースを見に来ている人のためでもあるE3に、なぜここまでしなければならないのか? との不満も出ていたみたい。

 ひと昔前は、日本の東京ゲームショウ、アメリカのE3、欧州のECTSが世界の三大ゲームショーと言われてたんだけど、東京ゲームショウの縮小(年2回から1回に)やECTSの事実上消滅に伴って、全世界がE3だけに注力しすぎたってのも肥大化の原因かもね。

(4)ゲームソフト開発者へのプレッシャー

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 E3は世界中の開発中&発売予定ソフトの発表会なもんだから、それに向けて各社がこぞって出展するわけで、開発者はそれに向けてプレイアブルやデモ制作を無理に強いられるというところも問題視されていたの。ただでさえ納期に追われるゲームソフト開発の途中で、精緻華麗なものをそのためだけに(よくE3バージョンと聞きますな)制作しなければいけないわけだから、本来の目的を失ってるショーのために、開発者に意味のないプレッシャーがかかるのはいかがなものかと、という声も聞かれたんだよね。

 新しいE3(E3 Media Festival)が、年末に発売されるタイトルの商談や大きな発表の機会と考えれば、5月じゃなくて7月にしたってのは、タイトルがある程度の形(デモとかプレイアブルとかもう固まってる時期のはずじゃん?)で無理なく見せられるってことで納得がいくわん。まぁ効率的な商談もできるってもんだ。

(5)他のイベントの台頭

 E3だけがゲームを発表する場を担っているわけではないのね。ポストE3となる(っつーかすでにかなり大きいけど)展示会を紹介するです。

  • GDC(Game Developers Conference)

 GDCが年々存在意義をあげているのね。ユーザーをまったく排除した講義形式のイベントと小さな展示スペースで成り立ってるのね(E3ってホントビジネスショーとは思えなかったなぁ……)。イベント参加費も高いから、そんなに簡単に入れない(一番安いのが展示会Onlyで1人199ドル!)から、意味を持った人たちしか集まらないわけよ。アメリカでもヨーロッパでも行われていて、ゆったりとした日程の中で、商談の時間も取れるし、小さな会議室から始まったイベントが17年かけてゆっくり意味をなしてきたわけですわ。継続は力なりとはまさにこのことだね〜。

  • CES(Consumer Electronics Show)

 アメリカでは、今後はCES(家電ショーですな)が騒がしくなるでしょうな。2004年にITショーCOMDEXがなくなってしまってから、IT業界もごっそりCESに移行してるのね。近年ゲームプラットフォーマーたちも出展していたので、違和感はないのだけど、あくまでもソニーの大きなブースの中にPSPとかPS3が並んでるって感じだったので、E3のような派手なゲームショーと言う感じではないのね。ま、そういう意味ではビジネスライクな展示会になるとも言えて、本来E3が歩むべき道に軌道修正されるってことになるのかなぁ。

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 余談だけど、毎年正月にラスベガスで行われるんだけど、日本人にすればメーワクな話で、おコタでみかんを食べる間もなくラスベガスへ飛ぶわけですわ、LA経由かなんかで。さらに空港から街の真ん中まではタクシーしか手段がないので、空港を出たとたんに2時間タクシー乗るのに並んでやっとホテルまで。夕方になっちゃったのでご飯食べに出たら小さな町なのでCESで集まった輩が徘徊してて、レストランも軒並み1時間待ちとかさ。LAだったら車でひょいと出かければレストランは星の数ほどあるのにね。って、ただの愚痴だったわ。


  • Game Convention

 ドイツのライプチヒで8月で行われるGame Conventionは、業界向けというよりは「ユーザー向け」を明確化したショーなのね。2002年で終了してしまったECTS(於ロンドン)に替わって欧州で最大のゲームショーと言われているの。こちらはユーザーとメディアをターゲットしてるってはっきりしてるし、ライプチヒは欧州からのアクセスはまだしもアメリカやアジアからの直行はないっていう不便なところ。旧東ドイツという英語が通じにくい土地柄(ハニィはレストランでサラダを注文するのに15分かかったのだ、涙)もあって、E3ほど世界中からの人は集まらず、巨大化してない。

ハニィのあとがき

 E3がなくなったのはネガティブにとらえている人が多いかもしれないけど、そうじゃないと思う。ゲーム業界は今まで右肩上がりだったじゃない(最近の日本市場はともかく)? で、急激に伸びてたっていうことと、“エンターテインメント”というキーワードに翻弄されちゃって、派手なパフォーマンスで盛り上げることが求められてる、と思い込んでたんだと思うの。

 世界のゲーム業界が成長期からようやく成熟期に入って、コストの概念が強く要求されるようになったから、「ゲームはエンターテインメントである」から「ゲームはエンターテインメントであり、ビジネスである」に移行したんだと思うんだ。

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 だから目的にあわせて効率的な見せ方、商談会をして行こうという流れは決して悪いことではないでしょ。むしろ、費用対効果の高い、ビジネス性の高い確立された業界として内外から認知されるようになる、という意味では非常によいことなのかもしれないよ。

 確かにE3は逝ってしまったけど、我々日本には東京ゲームショウがあるじゃない! 東京ゲームショウだって世界のゲーム業界情報の発信の場として十分なもの。がんばれ、日本のゲーム! ってことで、ハニィは日本発のゲームが海外市場でがんばってもらうためにこれからも海外市場の情報発信をしていきます! よろしこ!

くねくねハニィのプロフィール

1967年アメリカサウスダコダ生まれの日本人。

小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。

1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。


[くねくねハニィ,ITmedia]

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