肩の力を抜いてタッチペンを握ろう。この快適さはクセになる:「シムシティ DS」レビュー(2/2 ページ)
税金を集めて不足を補い、少しずつ街を大きくする
さて、とりあえず線に沿って最初の街並みが出来たら、それを見ながら少しずつ線を延ばしていく。この時、真っ直ぐ延ばすのではなく、長方形になるようにするのがお奨めだ。一気にやらずに少しずつ。エネルギーと水が来ているかを確認しながら道路を延ばし、そこに沿った地域を3タイプのどれかにする。まだらにするのではなく、住宅地ならその周囲も住宅地にする、といった感じで集中化を図ろう。
ところで何かを建設するのには、当然ながら金がかかる。ゲーム開始時に一定額の資金が与えられるが、それだけでは全然足りない。そこで頼りになるのが税金だ。市民は勝手なことも言うが、自発的にそしてごまかしナシで税金をきっちり払ってくれるスゴイ人たちでもある。こうして集めた税金が建設費になる。人口が少なく、実入りも少ないうちは大建造計画など無理。そこで少しずつ、になるわけだ。
ある程度の人口が集まり、税収入が安定してきたら、次のステップに移るタイミングだろう。何をするのかといえば、ここでも武器となるのは常識だ。ルールを覚える前にちょっと考えてみよう。目的は街を発展させること。そのためにもっとも必要なのは何か。答えは人材である。生きているだけで精一杯の人しかいなくては街を発展させるのは難しい。やはり優れた人材が必要なのだ。
そこで街として最低限の基盤が出来たら、人材確保のために施設を建てていく。具体的には、教育、健康、娯楽に気を配ることになる。やはりいい人材を育てるには勉強が不可欠。学校がなくてはどうにもならない。初等教育だけではキビしいから大学や図書館といった設備もあったほうがいい。いい人材を育てても病気でバタバタ倒れられては意味がないから病院も建てる。精神的なゆとりもないとツラいから、公園や娯楽施設を建てて気晴らしをさせてあげる。こうして次世代を担うリーダーたちを養成していく。街の最初の基盤を造る時に空けて置いたスペースはこうした施設を建てるのに使うのだ。
この先はここまでの作業を繰り返すことになる。空き地になっている区画を選んで、まず最低限の施設を建て、人口の増加を待って、学校、病院、公園などを建てていく。マップの大きさにもよるが、難易度が低めのマップでは、面積的には十分な広さがあるので焦ることはない。ある程度距離を取りながらマップのあちこちを発展させ、それぞれの区域がそこそこ発展してきたら、今度はそれを連結して街を拡大していけばいいだろう。離れた地点を結ぶ場合は道路よりも鉄道のほうが効率的だ。
クエストクリアで日本中の名城を手に入れよう
街の運営に慣れてきたら、マップを埋め尽くす前にいったん「新市長誕生」モードをお休みにして「都市を救え」モードをプレイするのもいい。こちらのモードは、災害やUFOの襲撃などで壊滅的な打撃を負った街を復興させることが目的。途中セーブができないが、それほど難しくなく、時間もかからない。途中ではさみこんだほうがいいのは、クリアするとボーナスとなる特別な建造物が使用可能になるため。このボーナス建物、実は日本の城なのだ。関東、近畿、九州・沖縄など、8つのブロックごとに分かれており、特定地域のマップをクリアすると、その地域にある城が“新市長誕生”モードで設置可能になる。ランドマークとして街の色添えになってくれることだろう。
これまでの内容をあらかじめ踏まえておけば、実際にゲームをプレイする時はかなり遊びやすくなっているはず(だとうれしい)。実際、シムシティは“街の不足を補う”、“そのためには関係ある建物を建てる”という基本ルールで全体が統一されていて、シミュレーションゲームとしては簡単なほうに属する。不足の状況も常識で把握できるレベルだし、対応も感覚的に分かりやすい。
例えば、街で犯罪が起きている区域があれば警察署を建てればいいだろう、というのはすぐ思いつく。ルールはその常識が活きるように作られているので、多少数があっても混乱することはない。ただ、1つのマスには1つの建物しか建てられないから、どう利用するかで頭をひねることになる。時には街の発展に合わせて再開発をしたほうがいいことも出てくるだろう。ゲームスタート直後は郊外だったので工場地域にしていたのだが、住宅街が大きくなってきた、というような場合だ。そのままにしておくと、住宅街が工場に隣接し、土地の価値が下がってしまう。工場を思い切ってさらに郊外に移すか、住宅地の拡大を止めるか。こうした試行錯誤がリアルタイムで発生するのでプレーヤーはつねに最善の状況を作り出すべく、手を打っていくことになる。対策自体はシンプルなので難しくはないが、奥は深い。まさにシミュレーションゲームとはかくあるべし、という好例なのだ。
ゲームならではの教育ソフトしての価値も十分
ニンテンドーDSの発売以降、ゲーム業界では一般に“エデュテイメント”と言われる、教育性の高いソフトが人気を集めている。他の携帯機やコンシューマ機でも発売されているが、数の上では何と言ってもDSが中心にあるのは間違いない。脳機能の活性化を図ったり、漢字や英語を覚えたり、パーティゲーム風のクイズに挑んでみたりと、そのバリエーションは広い。もっとも最近になって誕生し、そして活況を呈しているジャンルだ。
だが、エデュテイメントソフトの隆盛はそれはそれでいいことなのだが、ゲームにはもともと学習性の強い作品が多かったことも忘れてはならない。ゲームを使って学習効果を図ろうという発想は、32ビット機以降、強くなってきたし、現にプレイステーションの初期には純粋な学習を前提としたソフトも発売された。PCゲームはさらに進んでおり、1990年代には早くもそういった動きが出始めている。中でもシミュレーションゲームはその性質上、学習にも応用できることが珍しくなかった。
「シムシティ」は、そうした観点から見た場合、とりわけ優れた学習性を有している。まずテーマ。現代の都市を発展させるという目的はそのまま社会の勉強になる。街がどういう成り立ちになっていて、どんな施設がどんな役割を担っているのか。前述したようにルールがシンプルかつ常識に沿っているため、ゲームの中ではこうだけど、現実は違う、といった齟齬が生じにくい。もちろん現実は遥かに複雑だが、学習の端緒ではまず原則を捉えることが大切だ。リアリティよりも概念を把握したほうが後の学習効果が高まる。加えて、街の状況が刻一刻と変化するというシステムが、つねに試行錯誤を要求するという脳への刺激効果を生み出す。タッチペンの操作は、指先の巧緻性の向上に繋がる(かもしれない)。
任天堂はトランプ、花札のメーカーだった当時から、家庭での遊びを意識してきた会社だ。その企業精神はWiiにもよく表れているが、エデュテイメントソフトを充実させることで、高齢者層も取り込んだニンテンドーDSも立派に三世代が遊べるハードと言えよう。子供がプレイして行き詰まり、高齢者が大人の常識を働かしてヒントを出すことでそれを解決する。孫と祖父祖母とのコミュニケーションがそこに生まれる。「シムシティ」はそれだけの可能性を内在している。ゲームの社会的地位が上がり、生活の中に着実に根ざしている今こそ、「シムシティ」の役割はさらに増しているのかもしれない。
シムシティ DS | |
---|---|
対応機種 | ニンテンドーDS |
メーカー | エレクトロニック・アーツ |
ジャンル | 都市育成シミュレーション |
発売日 | 発売中 |
価格(税込) | 4980円 |
プレイ人数 | 1人 |
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