再び放たれるメンチビーム! シブイ漢(おとこ)たちのシビアな喧嘩の世界:「喧嘩番長2 〜フルスロットル〜」レビュー(1/2 ページ)
メンチビームがプレイステーション 2に帰って来た! 独特の不良文化を背景に自由度の高い喧嘩アクションが楽しめた「喧嘩番長」の続編は、前作以上に広大なマップ、新たな主人公、バイクの運転などの新要素が盛り込まれている。メンチきってタンカきって、ひたすらに殴れ!
2年ぶりの「喧嘩番長」は、エンジン全開フルスロットル!
2005年6月9日にスパイクより発売されたプレイステーション 2タイトル「喧嘩番長」は、ツッパリ少年・田中ヤスオ(名前は自由に変更可能)が番長として天下を取るまでを描いた痛快アクションゲームだった。架空の3D空間で自由に喧嘩やバイトをしつつ不良ライフを楽しめるゲームとして好評を博した作品だ。他の生徒と喧嘩をするために目から“メンチビーム”を出す、など、各要素に突き抜けたセンスがあり、デフォルメされた不良文化に突っ込みを入れながら楽しんだユーザーも多くいることだろう。
徹底した古き良き“不良”、“ヤンキー”を描いている点に加えて、プレイの自由度の高さも「喧嘩番長」の売りだ。お金を稼ぐためにアルバイトに精を出してもいいし、毎日毎晩喧嘩に明け暮れてもいい。広大なフィールドはけして美麗なグラフィックだとは言えないが、郊外の町並みをうまく表現しており、箱庭の中を自由に移動することが可能だった。また、主人公の服装も細かくカスタマイズできるので、気分で服装を変えて街中をうろつく楽しさもあった。
万人に受けるというよりは、ピンポイントでマニアの心を確実につかむ類の佳作だった「喧嘩番長」。その続編が約2年の月日を経て、2007年3月8日に登場した。その名も「喧嘩番長2 〜フルスロットル〜」。前作同様にイメージキャラクターに嶋大輔を起用した本作のオープニングデモでは名曲「男の勲章」が流れる。
つっぱることがたったひとつの勲章……。そんなどうしようもなく不器用でどうしようもなく熱い漢(おとこ)たちの物語を、再び楽しめる日がやってきたのだ。こいつはマジ、シブいぜ!
いつまでも「ポチ」のままじゃねえ……! 1本道ではないストーリーで成り上がれ
本作の主人公は、高校2年生の武田トモヤ(前作同様に名前の変更は可能)。中学生時代は「二中の狂犬」の異名をとり、相棒である如月亮とともにハバをきかせていたが、極東高校で田中ヤスオ(前作の主人公)に敗北を喫してからは「ポチ」と呼ばれている。
プレーヤーはトモヤとなって極東線(架空の私鉄)沿線での生活をスタートする。喧嘩やバイトに明け暮れて日々の生活を送るうちに、極東連合、東関狂走連合の抗争に巻き込まれていくトモヤ。本作では、いずれかの陣営に組したトモヤが極東線沿線の不良たちの間でのしあがっていく成り上がりの物語を楽しむことができる。もちろんどちらの陣営につくかはプレーヤー次第。2週目プレイもできるようになっているので、クリア後に別のアプローチでプレイしてみるとまた違ったドラマが見えてくるに違いない。
トモヤの周りで物語を彩るキャラたちはいずれも個性的な曲者ばかりだ。極東連合の総長にはトモヤを狂犬からポチに転落させた田中ヤスオ。東関狂走連合の総長は、二中時代にトモヤと双璧をなし「ニ中の悪魔」と恐れられた如月亮。その他に極東連合のゴリ男、東関狂走連合の烈火頭領である三島などが脇を固める。クラスメイトの加藤葉子や、武心女子高校の女番長である村上ヒトミなどの女性キャラも華を添える。
シブい男もちょっとした油断でシャバゾウになってしまうこんな世の中じゃ……ポイズン
本作においてもっとも基本的で重要な概念が「シブイ」と「シャバイ」だ。シブイ、というのはかっこいい、いけている、というプラスの評価で、シャバイは、かっこわるい、ダサい、というマイナスの評価。移動中の画面左上には常に“シャバゾウアイコン”が表示されており、主人公のシャバゾウ度が一目で分かるようになっている。
喧嘩に勝利する、バイトに成功する、イベントをクリアする、などの行動でアイコンは“シブイ”方に寄っていく。警察に捕まる、乗り物で人をはねる、交通違反を犯す、自販機を破壊する、などのいわゆる公序良俗に反する行動をとると“シャバイ”状態になってしまう。その他にもメンチビームを無視する、喧嘩に負けるなど不良としてへたれな行動をとった場合もシャバくなる。シャバくなってしまうと、とにかく行動が制限されるので大変だ。
シャバいときは免許をとることもできないし、バイトをすることもできないし、コンビニでアイテムを買うこともままならない。序盤でこの状態を打開するためにはこまめに喧嘩に勝つなどの地味な活動が必要だ。
ちなみに本作のプレイを始めた筆者は、自由に行動できるフィールドに気をよくして自転車で不良をはね、追いかけられてボコられ、全治3日の怪我を負い、顔に包帯を巻いたまま出かけ、今度は不本意ながらも一般人を自転車でひいてしまい、さらにまた不良にからまれ自転車で逃げ、あげく警察に追われ逮捕され、包帯がとれることのないまま何日も過ごす、という最悪のスタートを切った。
さらに何だかんだしているうちに金もなくなり、バイトをしようにもバイト紹介センターまで行く電車代がなくなり、そのへんの不良を倒して小銭をゲットするも状態がシャバイのでバイトもできない始末。ふてくされて自転車でうろついていたら、不注意から不良をひいてしまい、またまたボコられ……。という無限地獄のような高校生活に突入してしまい、我ながら主人公の半端ないシャバさに笑ってしまったほどだ。誰も相手にしてくれない孤独をかみしめながら、最初からやりなおした筆者だった。
本作の面白さは“そういうプレイもあり”というか“できてしまう”という懐の深さにあると思う。「グランドセフトオート」シリーズや「龍が如く」シリーズにも通じる、街を自由に練り歩く面白さがそこにはある。グラフィックの粗さやキャラパターンの少なさが残念ではあるが、自分とはまったく関係なく歩いている男が信号無視をして突然目の前でひかれたり(もちろん自分もボヤッとしているとひかれてしまう)、メンチビームで一般人や倒した学生がへたりこんでしまうなどの、見た目に“おバカ”でちょっとブラックな要素が何とも味わいがあるのだ。
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