インタビュー
2007年09月03日 00時00分 更新

SCE社長 平井一夫氏インタビュー:

プレイステーション 3はまだまだ発展途上の前の段階、必ず大きく飛躍できる (1/3)

ソニー・コンピュータエンタテインメントの平井一夫社長に、これまで長く見てきたアメリカ市場と日本市場の比較や、プレイステーション 3の現状などについて話を伺ってきた

 初代プレイステーション立ち上げの時期からソニー・コンピュータエンタテインメントアメリカで活躍されてきた平井一夫氏。2006年12月1日よりソニー・コンピュータエンタテインメント社長兼グループCOOに就任していたが、2007年6月19日付で久夛良木健氏が取締役を退任したことを受け、同日よりソニー・コンピュータエンタテインメント社長兼グループCEOに就任し、名実ともにプレイステーションの顔となった。その平井一夫氏にインタビューする機会を得たので、これまで長く見てきたアメリカ市場と日本市場の比較や、プレイステーション 3の現状などについて話を伺ってきた。

日本とアメリカでは市場が大きく違う

―― 平井さんは、これまで長くアメリカで活躍されていました。今回ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の社長として日本に戻られたわけですが、これまで見てこられたアメリカのゲーム市場と、現在の日本のゲーム市場を比べてみて、どのような印象をお持ちでしょうか。

画像 ソニー・コンピュータエンタテインメント社長兼グループCEO 平井一夫氏

平井一夫氏(以下、敬称略) ユーザーのゲームに対する嗜好も違いますし、流通の方々とのビジネスのやり方や、店頭での商品の見せ方も違います。国が違う、文化が違うということもありますし、本当に大きく違うというふうに感じています。

 例えば、プレイステーション 3向けのタイトルで言いますと、手元にある最新のデータでは、先週のアメリカでのトップ10(注:インタビューは8月上旬なので、この数字は7月29日〜8月4日のものになる)は、1位がNINJA GAIDEN Σ、2位がNCAA Football 08、3位がNASCAR 08、4位がTom Clancy's Rainbow Six: Vegas、5位がThe Darkness、6位がTransformers: The Game、7位がRESISTANCE FALL OF MAN、8位がAll Pro Football 2K8、9位がMotorStorm、10位がVirtua Fighter 5となっています。まだ日本で発売されていないタイトルもありますが、これを見ても明らかに日本のトップ10とは違います。ワールドワイドで広く受け入れられるタイトルも存在しますが、やはり日本のユーザーのみなさんとアメリカのユーザーのみなさんが求めているタイトルやジャンルが違うというのは感じます。

―― 求められるタイトルやジャンルが違うと、もちろん戦略も大きく変わってくると思います。日本市場に対する今後の戦略を練る上で、これまでのアメリカでの経験が役立つとお考えですか?

平井 もちろん市場が違いますから、アメリカで成功した戦略をそのまま持ってきて日本でやろうとしてもうまくいくはずありませんし、逆も同じだと思います。でも逆に言うと、(アメリカでの経験があるからこそ)市場が違うということを肌で感じて認識できています。昨年12月からワールドワイドの視点でビジネスを見ていかなければならない立場におりまして、ヨーロッパ、日本、アメリカ、アジアなど、地域ごとのマーケティング手法や、好まれるタイトルなどの違いを認識したうえで、総合的な戦略を立てていかなければなりません。ヨーロッパはまだマネージメントを行ったことはありませんが、各地域でやり方が違うということは認識しているつもりです。それは、ユーザーのみなさんの嗜好の違いだけでなく、ディーラーの方々とのビジネスのやり方の違いも含めてです。

―― アメリカのゲーム市場は長く拡大を続けてきました。それに対し日本市場はしばらく低迷が続いていましたが、一昨年くらいから徐々に活気を取り戻しつつあります。その原動力となっているのは、いわゆる“カジュアルゲーム”だと思います。アメリカではまだまだコアゲーマー向けのタイトルが強いようですが、日本ではゲーム初心者やゲームから離れていた人に対する市場がかなり拡がっているように思います。そういった現在の日本のゲーム市場に対してどのように取り組んでいくのか、具体的な方策などをお聞かせください。

平井 これは、プラットフォーム別に考えなくてはいけないと思います。我々にはプレイステーション 2、PSP、プレイステーション 3という3つのプラットフォームがあります。市場もさることながら、各プラットフォームのライフサイクルがどこにあるのか、という点も考える必要があります。

 プレイステーション 2は発売されて8年目に突入しましたが、おかげさまで現在でも引き続き好調なセールスとなっています。ワールドワイドでは1億2000万台を突破しましたが、これだけの数をクリアするにはカジュアルゲーマーにアピールするタイトルがないと記録できません。ですので今後プレイステーション 2は、コアゲーマー向けのタイトルも出てきますが、カジュアルゲーマー向けタイトルもどんどん出てくるという状況は変わらないでしょう。

 プレイステーション 3に関しては、まだ発売されて1年経過していません。今後カジュアルゲーマー向けタイトルもどんどん出てきますが、やはり一番大事なのは、コアゲーマーのみなさんに楽しんでもらえるところからスタートして、2年目3年目と進んでいくにつれて、その比率が変わっていくことにあります。これは、初代プレイステーションやプレイステーション 2での戦略と同じです。

 ライトユーザー向け、コアユーザー向けというすみ分けで言うなら、それぞれに位置付けられるタイトルは違ってくるかもしれません。しかしプラットフォームの成長戦略は、基本的にはやり方は同じだと考えています。

―― ただ、この夏に日本でプレイステーション 3向けに発売されたタイトルでは、「ぼくのなつやすみ3 -北国篇- 小さなボクの大草原」や「みんなのGOLF 5」など、どちらかといえばライトユーザー向けのタイトルが中心になっているように思います。もちろん、コアゲーマー向けのタイトルもありますが、今のお話とやや逆の状況のようにも感じるのですが。

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平井 プレイステーション 3はコアユーザーのみのプラットフォームではありませんから、ある程度のバランスは必要です。コアユーザー向けのタイトルばかりを出しているとライトユーザーの方々は付いてこられませんし、逆も同じです。これから、発売して何年経ったのかというところを見極めつつ、バランスを考えていかなければならないと思っています。

 いい例と言えるかどうかわかりませんが、(今年3月に)アメリカで発売された「God of War II」は超コアゲーマー向けのタイトルですが、すでに発売から7年以上が経過しているプレイステーション 2向けとして発売されました。プレイステーション 2向けにまだそんな(コアゲーマー向け)タイトルを出しているんですか? と聞かれるかもしれませんが、その部分もきちんとカバーしなければならないと考えています。逆にプレイステーション 3ではライトユーザー向けのタイトルも少しずつ出していかなければ拡がりがないですから。(プレイステーション 3は)コアユーザー向けのゲーム機だと思われるといけませんから、バランスの問題でしょうね。

プレイステーション 3はまだ発展途上の前の段階。5年以上のスパンで考えることが重要

―― 現在の日本でのプレイステーション 3の売れ行きや市場での立場など、プレイステーション 3の現状をどのようにお感じでしょうか。

平井 発売してまだ1年未満というところですが、最初の立ち上げの時に、特にアメリカと日本については満足のいく台数を市場に投入できなかった、そしてユーザーのみなさんにご迷惑をおかけしてしまったという部分は非常に残念であったと思っています。逆にヨーロッパでは、発売を3月にずらしたこともありまして、かなりの台数をそろえることができまして、かなりの販売台数が記録されたといううれしい結果になりました。

 ただ、長いスパンでビジネスを見ています。成功したか、または成功しなかったか、どういった位置に落ち着いたのかというのは、5年や10年経ってから初めて言えるものだと思っていますので、プレイステーション 3の現状について特に言うことは、実はないと考えています。

 プレイステーション 2を見ていただけると分かると思いますが、発売1年未満の段階で「どうですか?」と聞かれても、先が長い商品なので、そこで成功したとも失敗したとも言えない商品だったと思います。今やっと発売から7年が過ぎて、1億2000万台突破した段階でふり返って見ると、プラットフォームとしても成功したし、ディーラーの皆様やパブリッシャーの皆様もビジネスの面で成功も分かち合え、そして何よりも世界中のユーザーのみなさんが喜んでいただける商品だった、ということで初めて成功と言えるわけです。

 プレイステーション 3はまだこれからですし、発展途上のさらに前ぐらいの段階なので、これからタイトル数を増やして、全世界でインストールベースの台数を増やして、大きく育てていきたいプラットフォームです。そして必ずそういった形に持って行けると思っています。

―― では、プレイステーション 3はどれぐらいの年数がたてば、育ってきたと言えるとお考えですか?

平井 プレイステーション 2でも、5年経って“ここまできたか”という印象を持ち、7年が過ぎ1億2000万台を突破してまた“ここまできたか”という印象を持ったというように、これぐらいのタイムスパンで考えないといけないでしょう。初代プレイステーションは10年間ビジネスをさせてもらいましたし、プレイステーション 2もまだ2〜3年は確実にビジネスができると思っていますので、そのスパンで見て初めて結果が出たなと言えるようになると思います。

 プレイステーション 3であっても、5年ぐらい経ったところでふり返ってみて、台数がどうだったか、ゲームビジネス全体のうちどのくらいの規模を分かち合えることができたのか、というところで見ないといけません。これは短距離走ではありませんから、来年がどうと言うというのではなくて、5年ぐらいのスパンで見なければならないと考えています。

―― ただ、プレイステーション 2が発売された当時とプレイステーション 3が発売された現在とでは、市場の状況が違うように思います。プレイステーション 2は、発売の時点で大きく先行するライバルがいませんでしたが、プレイステーション 3は、特にアメリカ市場ではXbox 360に大きく先行を許しています。そういった状況の中で危機感はありませんか?

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平井 それはよく言われることなんですが、プレイステーション 2を出した当時は、すでにその当時の次世代機と呼ばれるものとして、セガ様のドリームキャストが発売されていました。1999年の東京ゲームショウでも、ドリームキャスト一色だったのを覚えています。初代プレイステーションの時もセガサターンが先に発売されていましたし。実は世代が替わるごとに、その最初でトップバッターになったことは一度もないんですよ。

 もちろん危機感は常に持っています。ただし台数が何台出たからよかったとか、他社の状況を見て、いいとか悪いとかいうようなことではありません。例えば、プレイステーション 2はかなり成功を収めたと言っていますし、先ほどもそう述べましたが、今後まだ2〜3年間は確実にビジネスをしていきたいと思っていますので、ある意味危機感を持ってプレイステーション 2プラットフォームを今後も成長させていきたいですし。プレイステーション 2の話をしない日もありません。

―― プレイステーション 2とプレイステーション 3の時代で大きく違う点は、ネットワークインフラの普及だと思います。プレイステーション 2の時代では、パッケージソフトでの販売が基本でしたが、プレイステーション 3ではパッケージソフトだけでなく、「プレイステーション ネットワーク」を利用したダウンロード配信も行われています。この、パッケージソフト販売のビジネスとネットワークのビジネスはどう違うとお考えでしょうか。

平井 ユーザーのみなさんにコンテンツを楽しんでいただくという最終的な出口は一緒だと思います。ただ、ディスクベースでは、ネットワークがない限り(販売した時点で)コンテンツは完結してしまいます。それに対しネットワークは生きていますから、常に新しいコンテンツを追加したりレベルを追加したりといったアフターケアが必要となります。これは、ディスクベースのように、販売したらそこで完結というものとは全く違いますから、考え方から変えないといけません。ディスクベースであろうとネットワークであろうと、ユーザーのみなさんに”これ楽しいよね”と思ってもらえるかどうか、エンターテインメント性という点では変わらないと思います。しかし、ネットワークにはそれをメンテナンスできるというメリットがあります。それを使わない手はないと思います。

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[聞き手:平澤寿康、ITmedia +D Games編集部,ITmedia]

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