フタをあけてみると、オトナが楽しめるシブい作品でした:「ロストオデッセイ」レビュー(2/2 ページ)
前列・後列の役割がより際立つ「壁システム」
ここからは、本作の戦闘システムについて解説していこう。戦闘自体はよくあるターン制で、キャラクターたちの行動をコマンド形式で入力し、全員ぶん入力したらあとは自動的に実行される。登場するキャラクターは多数いるが、戦闘に参加できるのは最大5名までで、前列・後列といった隊列を指定する。
本作では、この前列・後列といった役割を際立たせる「壁システム」が採用されている。簡単に言えば、前列のキャラクターが後列のキャラクターを守るシステムで、GC(ガードコンディション)ポイントによって数値化されている。
GCポイントの最大値は、前列キャラクターのHP最大値の合計で、戦闘開始時のGCポイントは戦闘開始時の前列キャラクターのHP合計となる。単に“前列のHP合計=GCポイント”ではなく、戦闘中に前列のHPを回復してもGCポイントは回復しない。GCポイントによってGCレベルが4段階に変化し、レベルが高いほど後列が攻撃を受ける確率が下がり、さらに後列の守備力が飛躍的に増大する、というメリットがある。そして、前列がダメージを受けるとGCポイントもその分だけ減少する仕組みだ。言葉で解説すると結構わかりにくいが、実際にプレイすればすんなり理解できることだろう。長期戦になればなるほど、後列キャラのリスクが高まっていくシステムといえる。
「壁システム」のメリットのひとつである、“GCレベルが高いほど後列の守備力が増大する”効果は非常に大きい。気持ち程度ではなく、GCレベルが最高の時と最低の時を比較すると、受けるダメージは数倍〜数十倍も変化するのだ。加えて、後列のキャラクターが主に使用するであろう攻撃魔法の威力は非常に大きいため、いかに後列を守りながら戦うかが重要になるのである。
前列のキャラクターによる物理攻撃はさほど強力ではないため、「どんな敵もボタン連打で勝てる」というシチュエーションは非常に少ない。ザコ戦であっても、しっかりと後列を守りつつ、効果的な魔法やスキルを使う……という戦略が楽しめるのだ。
ちょっとしたアクション要素が楽しめるシステムも
戦闘シーンにはもうひとつ、「エイムリングシステム」という珍しいシステムが採用されている。これは、装備品のひとつである「リング」を装備しているときに発動できるシステムだ。
「リング」はショップで購入するほか、冒険中に入手した合成素材を元に自分で作成することが可能だ。“火属性ダメージを与える”、“機械系に大ダメージを与える”、“MPを少し吸い取る”等、その効果はさまざまだ。敵を倒して素材を集め、新しいリングを次々と作り出していく楽しさも味わえる。
さて、これらのリングを装備して戦闘中に「たたかう」を実行すると、攻撃時にターゲットには小さな輪が表示されるようになる。このときRTを引くと、さらに外側にある大きな輪が、小さな輪に向かってどんどん縮小していく。小さな輪と重なった瞬間にRTを離せば、「エイムリングシステム」成功となり、リングの効果が発動するという仕組みなのだ。小さな輪と大きな輪の距離によってBad、Good、Perfectという3段階に評価され、効果が変化する。Badの場合はリングの効果は発動しない。
リングの追加効果はなかなか強力なので、上手に発動させられれば戦闘を有利に進められる。だがタイミングは結構難しく、さらに入力には時間制限があるため、攻撃するたびに適度な緊張感が味わえる。ゲームのジャンルは全く異なるが、「Gears of War」のアクティブリロードに近いと感じた。小さなアクション要素ではあるが、単調になりがちな戦闘シーンの程よいアクセントとしてうまく機能しており、単なるザコ戦でもなかなか飽きないのだ。
キャラクターの性能を大きく左右するスキル
ここでは、キャラクターの能力を大きく左右するスキルについて述べていこう。本作にはカイムをはじめとする不死者と、そうでない人たち(通常者)がパーティーに混在することになる。通常者はレベルが上がれば、戦闘に有利な多彩なスキルを覚えていくのだ。ちなみに魔法も「レベル1白魔法」や「レベル3呪術」というようにスキル扱いになっており、これらのスキルを所持しているキャラクターのみ対象の魔法を使用できる仕組みだ。
不死者は自動的にスキルを覚えない。通常者が覚えたスキルをメニュー画面で「リンク」させたり、アクセサリーを装備した状態で戦闘を繰り返すと覚えていく。
スキルの数は膨大で、これらをちょっとずつ覚えさせていくのが、キャラクター育成の楽しさである。不死者は、覚えたスキルをメニュー画面でセットすると使えるようになるのだが、その数は限られているので、どのスキルを組み合わせるかという戦略的な楽しさも味わえるのだ。もっとも、不死者は最終的にすべてのスキルを覚えることができるため、ちょっと強すぎるように感じた。もうちょっと通常者が役立ってもいいと思うのは、筆者だけであろうか。
大作にふさわしい完成度
最後に、プレイしていて気になった点をいくつか挙げていこう。筆者がもっとも残念に思ったのは、ロード時間の長さ。特に戦闘シーンに入ってから操作できるまで10秒ほどかかるため、かなり不満を感じた。物語自体はサクサク進むため、そのテンポを阻害しているのがとにかく残念である。
また、一部の謎解きも不満に感じた。敵に見つからずにゴールまで向かうというダンジョンがあるのだが、敵に見つかるたび、ちょっと長いイベントシーンを再び見させられるのだ。数回失敗しているうちに、かなりイライラしてしまった。
映像面での驚きがなかったのも、個人的には残念だった。映像自体は全体的にハイレベルでまとまっているのだが、Xbox 360にしてみればこのクラスは普通。逆に、一部の乗り物に影がなく不自然だったり、キャラクターの口パクが合っていない(英語音声に合わせられている)等のアラが目立ってしまった。
……と、残念に思った部分をつらつら書いてみたが、それでも筆者は本作にハマってしまった。個々の戦闘シーンが楽しく、カイムに大きく感情移入できるため、続きのストーリーが気になって仕方がないのだ。物語がテンポよく進むのも、好印象である。正直、プレイ前のワクワク感は「ブルードラゴン」の方が上であったが、プレイしてみると筆者は本作の方が楽しめた。
RPGの王道を歩みつつも、いろいろなアプローチで楽しませる仕掛けが満載の本作。Xbox 360ユーザーは年末年始の大作ラッシュで遊ぶ時間の捻出に一苦労していると思うが、ぜひとも本作のための時間も捻出していただきたい。オトナだからこそ楽しめる、渋いゲームですよ、コレ!
「ロストオデッセイ」 | |
対応機種 | Xbox 360 |
ジャンル | RPG |
発売日 | 2007年12月6日 |
価格(税込) | 7140円 |
CERO | C(15歳以上対象) |
(C) & (P) 2007 Microsoft Corporation. All Rights Reserved.
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