ペンで空間を切り取り、過去を修正せよ!――DSで楽しめる本格SFアドベンチャー:「タイムホロウ−奪われた過去を求めて−」レビュー(2/2 ページ)
フラッシュバックを確定させて、ホロウペンでディギング!
本作は何章かの章立てになっており、各章は歩郎が事件を解決することでクリアできるようになっている。
各章では、まず何らかの事件が発生する。周りの人に困ったことが起きたり、いるはずの誰かが死んでいたり、と事件の内容はさまざまだ。それらの事件は“誰か”が過去に手を加えたことでひき起こされたもの。それらの事件について歩郎が知るたびに、歩郎の能力で事件に関するフラッシュバックが起きる。このフラッシュバックは下画面の左下にあるメニューからいつでも確認できる。また、メニューでは歩郎が得たアイテムや登場したキャラクター名鑑も確認できるので、進行につまったらとにかくメニューを確認してみてほしい。特に、事件に進展があってフラッシュバックの内容変更やアイテムの追加があった場合はメニューアイコンが点滅するので、その際はすかさず変更点、追加点をチェックしておくといいだろう。
フラッシュバックを見た歩郎は、その光景がいつ、どこで、どういう状況のものだったのか、というのを探すために情報収集に向かう。場所の特定は見たまんま同じ場所へ行けば確定することが多いので比較的簡単だが、時間の特定はちょっと厄介だ。そのフラッシュバックに映っている人に聞いてみてもいいし、それでも分からなければ周囲の人たちからも情報を集める必要がある。歩郎が住む町そのものがマップになっており、学校、公園、駅前、黒の巣(喫茶店)など行けるところが決まっている(物語の進行に則して行けるところは増えたり減ったりする)。行けるところをとにかく移動して回って、集められるだけ情報を集めるのが基本だ。
そうこうしているうちにフラッシュバックの情報が集まってくる。フラッシュバックの情報が確定したら、その現場に行ってみよう。条件がちゃんとそろっていれば、ホロウペンが緑色に輝くはずだ。ここで本作の目玉である“ディギング”を行うことができるのである。
ディギングとは、ホロウペンでその場の過去を修正する行動のこと。プレイヤーはタッチペンで下画面の特定の場所を囲むことができる。画面全体くらいのサイズで囲むことはできず、画面のほんの一部しか囲めない。囲まれた線の中は多少左右に動かすことができるが、限界がある。そして、歩郎はディギングを行うたびに自らの時間を消費してしまう(ディギングを行うたびにゲージが減っていく)。つまり、適当にあてずっぽうなところをディギングしていてはダメだ、ということだ。画面上の「ここが怪しい!」と思ったところを狙いすましてディギングし、しっかりと修正したいところを修正しなくては、いずれ時間のゲージがなくなりプレイの進行が止まってしまう、という流れだ。
的確なフラッシュバックに対して的確な修正を加えたならば、物語は正しい方向に進んでくれる。そしてさらなるフラッシュバックを得ることもある。これらを繰り返して周りの人のトラブルを解決したり、消えた存在を元に戻したりしながら、物語が進んでいくのだ。もちろん歩郎の最終的な目的は、12年前に失踪したことになっている両親の謎をといて、両親のいた平和な日常を取り戻すこと。そこに至るまでには数々の試練が待ち受けている。ホロウペンを頼りに、不思議なタイムスリップの世界を体験することができるだろう。
ボリュームは小さめだが、ペンによるシンクロが楽しい良質アドベンチャー
キャラデザインや挿入されるアニメーションのクオリティも高く、タッチペンを駆使した操作、ホロウペンでの過去修正という風変わりな設定も面白い。全体のストーリーが比較的短くボリュームは小さめだが、物語もよく練られており、タイムスリップもの、タイムパラドックスものとして最後の最後までしっかり作られている。クリアまでの道のり(特に後半の盛り上がるあたり)はなかなか楽しかった。
筆者としては、本作はペンによる過去への介在というアイデアの面白さに尽きる。アドベンチャーゲームそのものが、物語にプレイヤーが介在することで起きる変化を楽しむジャンルと言っていいと思うが、本作での歩郎がホロウペンで他人の過去に介在して現在を変化させる行動と、プレイヤーがタッチペンをにぎって物語に介在する行動が、うまくシンクロしているのだ。歩郎もプレイヤーもペンを持っているというところで、不思議な連帯感というか、本作でしか味わえないアドベンチャーとしての妙味が醸し出されているように思う。そういったアドベンチャーとしての新境地を味わってみたい人にはぜひプレイしてみてほしい作品だ。
なお、公式サイトでは体験版がプレイできるので、気になるけどプレイしようかどうか迷ってんだよなぁ、という人はぜひ試していただきたい。
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