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CEDEC 2008:「99のなみだ」はどうして生まれたのか? (1/2)

「自分や自分に似た人に向けた製品を作りたい」――。ニンテンドーDS用ソフト「99のなみだ」の起源は思いがけないものだった。

 9月9日より開催されているゲーム開発者カンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2008」(CEDEC 2008)において、「女性ががんばる新しいゲーム開発+α in 『99のなみだ』」と題したセッションが行われた。

 本セッションの講師として、ニンテンドーDS用ソフト「99のなみだ」に携わったバンダイナムコゲームスの石田実緒氏(パブリッシング・プロデューサー担当)、磯桂子氏(企画立案・研究、システム・シナリオのディレクション担当)、青木奈津子氏(システム・シナリオ担当)、鈴木恒氏(制作プロデュース担当)が登場した。

 「99のなみだ」は、10分程度のショートストーリーで感動の涙を流し、気持ちをすっきりさせるという、人への心理的効果を利用した新しい試みの製品。この企画誕生の経緯なども気になるところだ。

photo 2006年1月スタート今年6月発売 構想と技研を入れて1年半、製品開発で半年という流れ

「99のなみだ」は予期せぬ出来事から思いつく

photo 磯氏

 まず、磯氏から企画誕生の経緯について語られた。発端は、3年がかりのプロジェクトの突然の中止という予期せぬ出来事だそうだ。すべてを失って引きこもっていた時期、「99のなみだ」の基礎が生まれたのだという。「病気とか治せるような、人の役に立つものは作れないのかと考えるようになりました。自分や自分に似た人に向けた製品を作りたいなと思い始めていたんです」と磯氏。

 それから、当時同じ部署だった青木氏とランチを食べながら話したことが、「99のなみだ」開発のきっかけとなる。「2人でピザなんか食べながら、心身ともに『癒されたいね』『元気になりたいね』なんて話していました。そこからどんどんアイデアを出していった感じです」(磯氏)。

photo 「癒されたい」から「99のなみだ」は生まれた

 企画書の書き方は分からなかったが、アイデアはどんどん出した。そのとき出た案は大食いする、旅行をする、イルカと泳ぐ、日記を書く、マッサージ、お笑い、泣ける映画など。でも時間がないし、簡単に元気を取り戻したい。さらにたくさん出したアイデアをまとめると、ストレスを解消するにはたくさん笑ったり泣いたりすることだという結論にいたったのだそうだ。磯氏は「短時間で手間をかけずにできるもっとも有効なストレス解消法が、喜怒哀楽だったんです」と説明する。

 アイデアがまとまったら、そこから製品内容を人に伝える必要がある。「どんな時に、とんな人にどんな風に使ってもらいたいかということを、できる限り具体的にしました」と磯氏。そこで注意したのは、思い込みとかこだわりを排除することだったそうで、磯氏は客観的に見るということを徹底したという。「詰め込みすぎないで、どんどん削って、思い切って角を立たせて……。既存の製品で間に合うのだったら、残念ながらそのアイデアはなしということに。つまり新しいかどうかということを中心に考えました」(磯氏)。

 磯氏と青木氏の中で、おおまかなコンセプトは決まっていたが、喜怒哀楽でストレスを解消することができるというのは実際どういうことなのか。自分たちだけで製品を作るのは無理かもしれないと考え始めていた。そんな時に早稲田大学の河合隆史教授に出会い、産学連携プロジェクトがスタートした。

 研究の目的は、特定の心理効果を有したゲームソフト開発。最終的にはソフト開発だけではなく、特許の出願、人間工学学会での発表などの成果をあげている。

photophotophoto 左から産学連携プロジェクトの経緯、泣いた時の気分を表したグラフ(男女別)、泣いた時、泣かなかった時の疲労の違い

 研究スタートの時点では、涙に特化したソフトという構想はなかった。青木氏は「1つ1のアイデアを検証していくということからスタートしました。学術的な資料を読みあさるという地道な作業になりました」と振り返る。

 その地道な作業が実り、「泣く」という行為が自分たちのコンセプトに非常に近いということにたどり着く。そして自分自身が泣くとすっきりするという実感があったのだと青木氏。

泣くということはどんなことなのか

photo 青木氏

 青木氏いわく、涙には「基礎的な涙」「反射性の涙」「情動の涙(エモーショナルティア)」の3種類の涙があり、それぞれの涙は役割が異なるという。情動の涙には、ストレス物質(マンガン)というものが多く含まれており、流すと体内のストレス物質が排出される。またストレス解消のほかにも、例えば脳内リセット効果や、体的にも免疫効果が高まるなどいろいろな効果が挙げられた。「情動の涙は、わたしたちのコンセプトにマッチしていると感じました」と青木氏。

 そこから、人はいったいどうやったら情動の涙を流すのかという点を掘り下げ、アンケート調査を2回実施。この結果、男女を見て、泣きのつぼ(何に泣くか)というのが大きく違っていることが分かる。同時に男女共通のコンテンツを作るというのは非常に難しいという懸念材料も出てきた。

 その後、感動することに関係する個人の特性(性別など)、感動の対象になるもの(小説なのか映画なのかなど)について洗い出し、最終的にゲームで提供すべき要素、泣けるコンテンツ(「ショートストーリー」)、泣けるシステム(後の「なみだのソムリエシステム」)、泣きやすくする工夫(最適な環境を整える)というのが見えてきたと青木氏は言う。

 講義では、泣きやすくする工夫として、涙は下を向くと止まってしまうため、目線をなるべく下げないで見てもらえるよう、あえてニンテンドーDSの上画面だけを使用する仕様にしたことなども明らかされた。

 「なみだのソムリエシステム」は、自分に合った感動のストーリーを届けるというもの。人が感動する大事な点は、共感を得ることが重要になってくる。「経験、行動、家族構成、それらを抜き出していって、質問に答えてもらうことで特性を決定していく方法にしました」と青木氏。要するに個人の泣きやすいランキング生成を思いついた。

 「特性に応じて泣きやすいものを集めているので、すごく似たような話が上位にきてしまう。そればかりを立て続けに出してしまうと、泣ける物も泣けなくなる。この辺のバランスはどうするのか、大きな課題でした」と青木氏は語る。気分(今日は本当に泣きたい気分だとか)などをうまく組み合わせて出し課題をクリアしたそうだ。

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