トラウマになるので音楽は後からつけたほうがいい――チュンソフト 中村光一氏(後編)ヒライタケシの「投げる前から変化球」(その5)(2/2 ページ)

» 2009年04月09日 14時00分 公開
[ヒライタケシ/ITmedia +D Games編集部,ITmedia]
前のページへ 1|2       

一発当てることはできない業種になった?

平井 最後にこれからゲーム業界に入ってくる若い人たちになにかメッセージをお願いできますか?

中村 考え直したほうがいいぞ(笑)。よーく考えておいたほうがいい。どうしても入りたいなら任天堂に入りましょう(笑)。というのは冗談で、根本的に思っていたのはゲームや映画もそうだけど、そんなに毎年ぽんぽん作れるわけないでしょ。一生に何本か作れればいいものじゃないですか。現実問題、開発費はどんどんふくれていますよね。。

平井 ビジネスとクリエイティブって相反していることが多くなったんですかね。

中村 日本のゲーム業界のように、海のものとも山のものとも分からないものにはファンドすら集まりませんからね。試みとしてはありましたが。

平井 逆に日本がこれだけ駄目だ駄目だと言われてて、模倣するスタッフばかりになり、発想力のある人が少なくなってきた昨今、ぼくらはどんどん年を取っていっている。そんな時だからこそ、分業化されたそれぞれのジャンルの“言葉”を発する人間が出てくればヒーローになれると思うんです。第2の中村さんのような人が出てくることを心待ちしているんですよ。

中村 すごく難しいよね。本気で言うならすごく難しい。生半可な気持ちで入ると、それなりにつらいし、エライ目にあう。

平井 真剣にこの業界を盛り上げる気持ちを持っている人に入ってきてほしい。

中村 一発当てることは難しい業種でしょ。完全にできないとは言わないけど、昔は夢がありましたよね。それほど厳しい業種になっているんですよ。エンターテインメントというのであれば、例えば作家になるなら作家に、漫画家になるなら漫画家になる方が1人で成功する可能性が高いけど、ゲーム業界に来ると一人では無理。今後、スーパープログラマーとかスーパーグラフィッカーとかが出てくるというのが想像しづらくはあります。

平井 一度作ったからなれる、というものじゃないですよね。何本も制作した後に出てくるというのはあると思いますが。エンターテインメントなのに、そういう難しい業界になってしまっている。あえて言葉を選ばなければ、老舗のRPGを作りたいという人には新しい作品は見えないでしょう。自分のものをやりたいという情熱の強い人に入ってきてほしい。そうしたら変わるかもしれないと思っているんです。そうしなければ生まれてこないんでしょうね。

中村 田舎出身だったからこそ、ボクにとって発信できる場がメジャー誌しかなかったからこそボクの今があると思うんです。もし、東京にいたら秋葉原もあるし、発信できる場があるじゃないですか。

平井 こういう状況だから発信しやすい面というのはもちろんある。例えば、キューエンタテインメントが制作した「EVERY EXTEND EXTRA」(PSP専用ソフト、発売元:バンダイ)は、現役大学生が作ったフリーのゲームソフトが原案なんです。Flashゲームが家庭用ゲームに発展してくる事例も増えてきていますし、与えられた状況は受け止めて、そこから何ができるか考えるしかない。

中村 生まれたときから家にパソコンがあるのが普通、という状況はボクらのときと較べたら信じられないくらい恵まれていると思います。その環境を有効に使って欲しいですね。1回戦から勝ち上がるのではなくて、シードからのスタートなわけで。

平井 僕自身もインディーソフトからインスパイアされることもありますしね。現に今インターネットで展開しているプロダクトで注目している作品もあります。まだ荒削りだが可能性を感じるものはごろごろある。

中村 昔からのゲームユーザーの中には、巨大プロジェクトと化した“ゲーム”に飽いていたり物足りないと感じている人もいると思うんですよね。業界全体が、そういうユーザーにも目を向ける必要があると思います。そして作る側も、ツールや技術や情報は昔よりは得やすいはずだから、自由な発想と情熱で新しいものを作り出して欲しい。

平井 そこから生まれてくるものもあるんじゃないかと。古いものと新しいものが融合することは、お互いのためにもいいことですよね。刺激し合って。そのシナジー効果を最大限に広げる動きをこれからも行っていきたいです。本日はありがとうございました。

第5回2部構成後半でした。

中村光一氏はとても真摯な姿勢で臨んで頂けました。ここに深くお礼申し上げます。ありがとうございました。次回は麻雀でも盛り上がりましょう!

実は中村光一氏と対談していて自分の中で疑問を感じる瞬間がなんどかありました。これはもちろん中村氏に対してではなく自分が枠組みに捕らわれ過ぎてないだろうかという疑問でした。

「日本のエンタテインメントを良くしよう」という発想ではなく、もっと単純に「新しいエンタテインメントを創造しよう」で良いのではないかと。世間でもよく言われますが、ピンチの時代こそチャンスととらえ「ものづくり」の原点に立ち返ってみようと思います。

さて5回連載したということもあり次回の対談は、ボクにこの場を提供していただいた方を交えて、過去の対談も振り返りながら、逆にボクの考えをぶつける場にしたいと考えてます。ご期待下さい!

プロフィール

平井武史(ひらい たけし)

キューエンタテインメント 最高技術責任者/CTO

代表作:「シェンムー」「スペースチャンネル5 パート2」「メテオス」「メテオスオンライン」

エンジニアとしてハイエンドからモバイル、Web、システム管理までほぼすべての環境、言語を話す。ヘアショーのサロン映像、音楽プロデュースを行ったり、海中での写真集を提供したりと守備範囲は広い。海をこよなく愛するMSD(マスター・スクーバ・ダイバー)である。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  2. /nl/articles/2404/18/news025.jpg 生後5日の赤ちゃん、7歳のお姉ちゃんから初めてミルクをもらうと…… 姉も驚きの反応がかわいい
  3. /nl/articles/2404/18/news057.jpg 9カ月の赤ちゃん、バスで外国人の女の子赤ちゃんと隣り合い…… 人生初のガールズトークに「これは通じあってますね!」「ベビ同士の会話、とろけます」
  4. /nl/articles/2404/17/news037.jpg 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  5. /nl/articles/2404/17/news034.jpg 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
  6. /nl/articles/2404/18/news155.jpg 大谷翔平選手、ハワイに約26億円の別荘を購入 真美子夫人とデコピンとで過ごすかもしれないオフシーズンの拠点に「もうすぐ我が家となる場所」
  7. /nl/articles/2404/17/news179.jpg 「ケンタッキー」新アプリに不満殺到 「酷すぎる」「改悪」の声…… 運営元「大変ご迷惑をおかけした」と謝罪
  8. /nl/articles/2404/16/news192.jpg 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
  9. /nl/articles/2404/17/news129.jpg 「ハーゲンダッツ硬すぎ!」と力を入れたら……! “目を疑う事態”になった1枚がパワー過ぎて約8万いいね
  10. /nl/articles/2404/16/news175.jpg 「そうはならんやろ」をそのまま再現!? 「ガンダムSEED FREEDOM」のズゴックを完全再現したガンプラがすごすぎる
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」