クラッカーの目的を知る

 なぜクラッカーは見ず知らずの人が所有するパソコンに侵入するのだろうか。理由はさまざまなケースが考えられる。たいていの場合は,

・特定の標的を定め,侵入したコンピュータの
 ファイルを盗み見る
・侵入に成功したコンピュータを踏み台とし,ほかの
 コンピュータに侵入,または攻撃する
 (DDoS攻撃など)
・単純にコンピュータの破壊のみを目的とする

といったものだ。また,いったん侵入に成功すれば,「トロイの木馬」を仕掛けて裏口を作成する。そして,必要に応じてリモート操作で他人のパソコンを利用することが可能になる。

 読者の中には,たとえ侵入されたとしても,「パソコンを始めたばかりで,大切なファイルはないし,データを初期化したり,再インストール(リカバリ)でもすれば大丈夫だろう」とお考えの方もいるかもしれない。しかしクラッカーに侵入されたパソコンが,ほかのコンピュータを攻撃するための踏み台として利用された場合,気づかぬ間に攻撃者となってしまうことを知っておく必要がある。

 クラッカーにとって踏み台として利用するコンピュータは単なる「駒」でしかない。セキュリティの甘いパソコンが常時接続されていれば,それが誰のマシンであろうと関係ないのだ。使える駒を複数用意しておけば,それらを利用してほかのコンピュータへの侵入を行い,攻撃に利用する。

図1■クラッカーが行う破壊活動
図版
クラッカーは第三者のマシンに侵入したあと,ファイルののぞき見や重要ファイルの削除,ほかのマシンを攻撃するための踏み台としての利用など,さまざまな破壊活動を行う

●侵入は難しいことではない

 第三者のコンピュータへ侵入するのに,特別な技術や知識は必要ない。単純な話をすれば,インターネット上で簡単に入手(ダウンロード)できる各種クラッキングソフトウェア使用すれば,クリックするだけで侵入できる。もちろん後述する「ファイル共有」などが安易に設定されていれば,そういったクラッキングソフトウェア使用せずとも侵入されてしまうこともあるだろう。「そんなものがどこにあるんだ?」と疑問に思う方は,迷わず検索サイトで検索してみるとよい。いくらでも見つかるはずだ。

 たとえば「ピッキング」というものを考えてみてほしい。普段自宅を施錠している鍵が,ちょっとしたツールで簡単に開いてしまう様は,TVなどでもよく放映されている。このピッキング行為も,ピッキングツールと,ちょっとした練習で誰でも簡単に鍵を開けることができるようになる。もちろんそのピッキングツールを手に入れることも,決して難しいことではない。

 もし侵入を目的とするだけのピッキング犯であれば,ピッキングツールで簡単に開く鍵(ディスクシリンダー錠)を使用している家やマンションのみを狙い,頑丈な鍵に交換されている家はパスしてしまうだろう。わざわざ面倒な手順を踏まなくても簡単に侵入できる場所(簡単に鍵が開く家)は,探せばいくらでもあるからだ。つまり,ピッキングツールを自分で作成しなくとも,すでに存在するツールさえ手に入れれば,なんの苦労もなく他人の家に侵入できてしまうということになる。

 インターネットでもピッキングと同様に,クラッキングツールを手に入れて他人のコンピュータに簡単に侵入することができる。もちろん,わざわざツールを購入する必要はない。ダウンロードするだけでよいのだ。あとは,鍵の甘い家(パソコン)を探して(スキャニング),侵入してしまえばいい。つまり,パソコンとインターネットに接続できる環境さえあれば,誰でも簡単にクラッキング−侵入・攻撃行為を行えるということは,覚えておく必要があるだろう。

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