接続形態の違いによって危険性に差はあるのか

 接続形態は契約している回線,接続方法により異なってくる,一般的に利用されているのはISDNやADSL,CATVといったものになるだろう。

 まず,ダイヤルアップ接続と常時接続時の違いについて考えてみる。ダイヤルアップでインターネットに接続している場合,接続先のプロバイダから割り当てられるグローバルIPアドレスは接続ごとに変わるため,同じグローバルIPアドレスを長時間にわたり保持することはない。長くともせいぜいテレホーダイ時間などの限られた時間のみだろう。

 ただ,常時接続となると,なんらかの障害,もしくはユーザー側でインターネットへの接続を切断しない限り,割り当てられた同一のグローバルIPアドレスを利用している場合が多い。つまりグローバルIPアドレスが半固定状態となってしまうわけだ。半固定状態になれば,サーバ運営やリモート操作などには好都合であり,サーバ運営時に,利用者あてに毎回グローバルIPアドレスを告知する手間が省ける。中にはこれを目的に常時接続に移行するユーザーもいるだろう。

 しかし,グローバルIPアドレスが半固定状態になるということは,クラッカーがいったん侵入に成功したマシンに,ふたたび侵入することが簡単になるということでもある。プロバイダの中にはサーバ運営のためなどに,オプションで固定のグローバルIPアドレスを与えるサービスもあるが,この場合はさらに危険度が増すことになる。

○TA,ADSLモデムでの接続

 では接続方法による違いをみてみよう。まず,1台のコンピュータとの接続を,TAやADSLモデムで接続しているケースだ。この場合,インターネットに接続した際のグローバルIPアドレス=接続したコンピュータとなるため,グローバルIPアドレスがわかればパソコンに侵入,攻撃することは簡単だ。

図2■TAやADSLモデムにマシンが直結している場合
図版
TAやADSLモデムにマシンが直結していると,利用しているマシンにグローバルIPアドレス与えられるため,攻撃に直接さらされてしまう

○ダイヤルアップルータやブロードバンドルータを使用した接続

 次にダイヤルアップルータやブロードバンドルータなどを用い,複数のコンピュータを接続している場合だ。これは小規模な家庭内ネットワークなどでよく使用されている接続方法だ。この場合,ひとつのグローバルIPアドレスを,NATやIPマスカレードを利用して,複数のコンピュータから同時にインターネットへアクセスできるようになっている。ここでは,家庭内ネットワーク上のコンピュータはプライベートIPアドレスを利用するため,ルータが簡易ファイアウォールとなり,インターネット側からの攻撃を回避することができる。

図3■ダイヤルアップルータやブロードバンドルータを利用した接続
図版
ダイヤルアップルータやブロードバンドルータを利用していれば,ルータ側にグローバルIPアドレスが与えられるため,簡易ファイヤウォールとなり,攻撃を回避しやすい

○CATVインターネットを利用した接続

 CATVの場合,CATV会社のファイアウォールを介したインターネット接続となる場合が多く,直接インターネットからの侵入は免れられる可能性が高い。ユーザーのマシンにも,グローバルIPアドレスを割り当てるのではなく,プライベートIPアドレスを利用しているケースもある。しかし,同じケーブル会社に契約しているユーザーとは,同じネットワークを形成している形となるため,内部ユーザーから侵入される可能性がある。

図4■CATVインターネットを利用した接続の場合
図版
CATVインターネットの場合は,CATV会社がファイアウォールをもうけていることが多く,外部からの攻撃には比較的強い。しかし,内部は同一ネットワークとなるため,内部からの攻撃には弱い一面もある

 接続形態別に見た場合,「TA,ADSLモデム」や「CATV」で接続している場合にはソフトウェアファイアーウォールをインストールし,不要なパケットを通さないよう設定するほうがよい。また,ダイヤルアップルータやブロードバンドルータなどを使用している場合は,ルータにパケットフィルタリング機能などが付いていれば,それらを用いセキュリティを高めることができる。これらの詳しい設定方法については,回を改めて解説するので参考にしてほしい。

One Point
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレス
 グローバルIPアドレスとは,インターネットを利用しているマシンに,世界中でただ1つ割り当てられるIPアドレスのことだ。いわばインターネット上での「住所」にも当たるもので,グローバルIPアドレスをたどれば,インターネットに接続している機器が特定できる。プライベートIPアドレスとは,LANなどのインターネットに接続していないネットワークや,小規模なネットワークで利用するためのIPアドレスで,「10.0.0.1〜10.255.255.255」,「172.16.0.1〜172.31.255.255」,「192.168.0.1〜192.168.255.255」が利用できる。RFC1918に定義されている。

NATとIPマスカレード
 「NAT」とはNetwork Address Translatorの略で,プライベートIPアドレスを利用しているLAN内のマシンと,グローバルIPアドレスを対応させるための仕組みだ。プライベートIPアドレスを持っているLAN内のマシンからはインターネットに接続できないため,この方法が用いられる。「IPマスカレード」とは,プライベートIPアドレスを持つ複数のマシンから,1つのグローバルIPアドレスを利用するための仕組みで,接続の際に「ポート番号」(httpの80,POPの110など)もあわせて変換してくれる特徴を持つ。大まかに言うと,NATは1対1,IPマスカレードは多対1のグローバルIPアドレス変換と考えてよい。ただし,ダイヤルアップルータやブロードバンドルータの説明書に書かれている「NAT」のほとんどは,NATとIPマスカレードの機能をあわせ持つ場合が多い。


PREV 3/5 NEXT