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» 2001年01月15日 12時00分 UPDATE

最新!e-mailマーケティング事情:〜 第1回 CRMとeCRMの違いとは? 〜 

 今回のトピックではカスタマー・リレーションシップ・マネジメント(以下CRMと呼びます)の基本的な概念とeCRMとの違いについて、私の考えを交えて説明していきます。

[武田一也,BFJCコンサルティング代表]

<今回の内容>


・CRMは関係性構築の経営手法


・多数の顧客接点を最適化できるツール はない


・eCRMの「e」って何の略?


・既存のダイレクト・メールを超えられるか


・CRMからSCMが始まる



CRMは関係性構築の経営手法

 CRMとは「顧客関係性のマネジメント」といわれています。これは商品やサービスの購入を継続してもらうために企業がとらなければならない顧客とのコミュニケーション手法の1つと理解するとよいと思います。「マネジメント」という言葉が入っていることからも、これは経営手法の1つであり、マーケティング戦略の上位概念に位置付けられます。

 CRMの最大の特徴は、従来の企業サイドからのアプローチ(例:作った商品をいかに市場でさばいていくか)ではなく、「顧客の嗜好や属性に基づいて顧客を個客として扱い、かつ個客との対話により一人ひとりのニーズに適合した商品やサービスを提供する」という顧客中心主義の高度なダイレクト・マーケティング的なアプローチにあるといえます。

 CRMという考え方が普及しはじめた背景には、「顧客のニーズがつかみにくくなってきた」「従来の性別・年齢などだけでは顧客のセグメント化が困難になってきた」ことが挙げられるでしょう。

 その一方で、「顧客を維持するコストは新規顧客を開拓するコストよりも低い」ことや「利益に貢献しているのは一定の顧客だけ」であるということが企業の中で少しずつではありますが、理解されてきているということも挙げられます。

多数の顧客接点を最適化できるツールはない

 さて、IT技術者である読者の皆さんの中には、CRMと聞いて幾つかのツールの名前を思い浮かべた方がいらっしゃるかもしれません。シーベルエンタープライズマイナーブロードビジョンなどなどですね。

 どのツールをどの場面で使ったらよいかについてはさまざまな見解があるでしょうからここでは割愛させていただきますが、1つだけ大事なことは「(現状では)すべての顧客接点を最適化できるツールはない」ということです。

 顧客接点とは、文字どおり顧客と企業が出会う物理的な場所または手段のことです。例えば、店舗での接客、顧客訪問時の対応、電話、FAX、Web、電子メール、手紙などが挙げられます。これらの顧客接点を起点にして顧客に関する情報が入ってくるわけですが、その情報をもとにして企業がすべきことがあります。それを簡略化すると次のようになります。

 CRMには大きく分けて3つのステージがあります。(1)優良顧客を維持するステージ、(2)顧客を育成し優良な顧客になってもらうステージ、(3)先に挙げた(1)と(2)でのナレッジを使い、優良な顧客になりそうな新規顧客を開拓するステージです(図1参照)。

ALT 図1 CRMの3つの戦略実現ステージ

 「顧客を理解すること」や「顧客を識別すること」はCRMの前提条件になります。顧客との電話や電子メール、郵便でのやりとり、顧客の購入履歴、Webでのクリック履歴などを総合して「このAさんはどういうニーズを持っているのか」をきちんと理解しなくてはなりません。その後に個として認識された顧客が「欲しがっている/欲しがるであろう商品やサービスは××である」と仮説をたて、その仮説を検証することが必要なのです。

eCRMの「e」って何の略?

 さてCRMとeCRMはどこが違うのでしょうか? 頭に付いている「e」とは何の略でしょうか?

 ここで使われている「e」には、一般に考えられているEC(Electronic Commerce:電子商取引)の「e」 と同じ意味のelectronic(電子的な)の「e」だけではないと私は考えます。CRMを実践し、競争優位を構築するためにはelectronicsだけでは足りません。あと最低2つのeが必要だと思います。それはefficient(効率的に)とeffective(効果的に)の2つの「e」です。

 例を挙げると、既存の郵便でのダイレクト・メールと電子メールによるダイレクト・メールの費用を比較した場合、インターネットの活用により企業が顧客とコミュニケーションを図るための費用は約30〜40%の削減が可能です(図2参照)。これはプロモーション(販売促進)活動での一例です。

ALT 図2 郵便ダイレクト・メール、電子メールでのキャンペーン費用の比較

 少し古い数値ではありますが、1997年度に送付された郵便によるダイレクト・メールの総数は約55億通です(日本ダイレクト・メール協会調べ)。一通当たりの費用(製作費・郵送費込み)を約200円とすると約1兆円を超える金額がこの市場にはあるわけです。

既存のダイレクト・メールを超えられるか

 ところで、反応率(ダイレクト・メールにより来店した人数を郵送したダイレクト・メールの発送総数で除したもの)で3%を超えるものはめったにありません。この理由はいったい何なのでしょうか?

 「個別にダイレクト・メールを作成するのは費用的に困難」「ターゲットをセグメントしながら郵送することが既存の企業のインフラでは困難」「セグメントするためのデータ自体がそもそも存在しない」「単価が比較的高価な商品が多いので『とりあえず送付』することが多い」、などなど。

 ダイレクト・メールの結果についても、たった1回検証しただけで終わらせてしまうせいか、複数の部門から同一の顧客に対して、さまざまなダイレクト・メールを発送していることが多いのも事実です。

 電子メールによるダイレクト・メールは、「個」のデータを活用して関連商品の売り上げを向上させることが可能です。というのも、顧客の状況を考慮しながら「タイミング」のいいメッセージを送ることで、離反を抑制できるからです。

 顧客を維持することができれば、顧客価値は向上し、将来的な売り上げに寄与します。そして、単に1回だけの購買で終わらせることなく、次回以降の購買を促進することで、企業と顧客の信頼関係の構築が可能になります(図3参照)。

ALT 図3 顧客価値の変化

 きちんと設計された電子メールによるプロモーションなら、こうした一連のマーケティング的な課題を一挙に片付けられます。まず、顧客の購買履歴や趣味・嗜好などの属性に基づいた「ルールを作成」して「提供する情報の組み合わせを自由に設定」できます。これは紙の媒体ではやろうと思っても費用的にあきらめていた部分でしょう。

 効果測定に関していえば、弊社のいままでの経験から「36時間以内に顧客の反応の9割を確定することが可能」です。HTML形式のメールにおいては、開封したかどうかを捕そくできる仕組みを入れ込むことができるので、効果測定というプロモーション管理の面からも、今後マーケティング活動の主流の一翼を担う存在になっていくことは間違いないでしょう。

 参考までに、弊社で扱った某PC量販店の電子メール・キャンペーンにおけるHTMLメールの開封率は40%を超え、クリック率は20%以上でした。

CRMからSCMが始まる

 実はCRMを突き詰めていくと、SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の問題にいきつくことに多くの企業は気付きます。CRM戦略からCRMシステムを構築したとしても、「適正なタイミング」で「適正な商品/サービス」を提案し、「顧客の望む方法」で届けるためにはバック・オフィスのしくみ(受発注管理、在庫管理、入出金管理など)と連携をとることが必須になります。

 現状では、多くの企業がWebでの受注をいったんプリント・アウトしてからFAXで物流部門へ流していたりします。しかも、在庫情報は1日に1回のバッチ処理で「Web枠」と称する引き当て分で上記の処理を行っています。いうまでもなく、このような作業フローにおいては、処理できる受注数に限界があります。

 eCRM企業では、electricalなデータをefficientに活用し、effectiveな成果を出すことが求められます。ですから、単にWebを構築しただけではeCRMとは呼べません。eCRMとは、CRMに「e」を加えることで時間とコストを最小限にし、最大限の成果をあげるためのCRM戦略を実現するということです。

 さて、皆さんの会社はeCRM企業と呼べますか?

著者プロフィール

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武田 一也(たけだ かずや)

明治大学卒業。トステム株式会社にて営業およびマーケティングを担当。1997年8月アメリカ国際経営大学院にてMIM(国際経営学修士)取得。1997年9月よりプライス・ウォーター・ハウス・クーパース・コンサルタント(現PwCcコンサルティング)に入社、CRMチームリーダーとなる。流通業、製造業を担当。2000年10月ビッグフットジャパンにてCEO/代表取締役。2002年2月よりBFJCコンサルティング代表となる


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