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» 2001年03月15日 12時00分 UPDATE

eCRM実現のためのメソドロジー入門(1):第1章  eCRMにおけるリレーションシップ・マーケティングとは? (1/3)

[松尾順,@IT]

[1]顧客を創造するということ

 「ビジネスの目的は顧客の創造である」

 こう看破したのは、あのピーター・ドラッカー大先生でした。よく考えてみると、ビジネスが成立するのは、製品やサービスが売れるからではなくて、お客さんがその製品やサービスを買ってくれるからなんですね。

顧客中心という視点

 もちろんこれは、同じことを違う視点から述べているにすぎません。つまり、製品中心主義(Product-centric)、あるいは製品志向型(Product-oriented)で見るか、それとも顧客中心主義(Customer-centric)、あるいは顧客志向型(Customer-oriented)で物事を見るか、という違いです。

 この「視点」の違い(阪本啓一氏の言葉を借りれば「立ち位置」の違いといってもいいと思います)が、実際の発想や行動に大きな変化をもたらします。サービスを含めた「製品」を起点として発想し、行動すると、どうしても企業側の“勝手な思い込み”により、機能過多の製品ができてしまったり、土足で踏み込むような強引なマーケティング・販売手法に陥ったり、また「釣った魚に餌はやらぬ」といわんばかりのおざなりなアフターサービスを提供してしまうといったことになりがちです。でも、こんなやり方が通用したのは、モノ不足時代のとにかく「作れば売れた」、つまり売り手側が買い手より優位な立場にあった時代です。

顧客は何を基準にモノを買うのか

 いま、消費者は、不足しているからという理由だけでは購入しません。その製品が自分にしっくりくるから、自分らしさを表現してくれるものだから、あるいは単純に「好き」だから、といったことが購入を左右する要因なのです。

 製品そのものだけでなく、その製品を提供する企業が持つビジョンやイメージへの共感を重視するようになってきたのです。例えば、環境にやさしいライフスタイルを維持したいと考えている消費者は、購入に当たって、まず製品が環境に配慮したものであるかという点を見ますが、同時にそのメーカーの環境保護に対する考え方や行動が妥当であるかどうかをとても気にしているのです。

 もし、環境にやさしいパッケージを採用した製品を開発していても、実はそれを製造している工場では排水を無処理で川に垂れ流すといった、ビジョンと行動に一貫性が感じられない場合、環境を重視する消費者は、そのメーカーの製品を決して購入しないでしょう。

 このような状況では、明らかに製品を起点とする考え方ではなく、顧客を起点として、より深く顧客を理解することから始めなければならないことがお分かりだと思います。

なぜ「顧客を維持すること」が重要なのか

 さて、「顧客の創造」といっても、何もないところからお客さんを新たにつくり出すわけではありません。正確には、「顧客と自社との“良好な関係”を創造する」という意味です。すなわち、自社製品が購入され、利用してもらった結果、十分な満足を覚えてもらうことを通じて、顧客との良好な関係を作り出すということですね。

 実は、そこに至るまでにはとても時間やお金、そして手間がかかります。商品・サービスの名前を知ってもらい、理解してもらうためには、広告宣伝を繰り返し行い、関心を持った見込み客にアプローチして購入を勧めなくてはなりません。そして、そのためのマーケティング体制・営業体制・サービス体制を立ち上げ、きちんと回していく必要があるのです。ですから、こうして多大なコストをかけて築いた良好な関係をきちんと維持し続けるための努力が求められるわけです。

「顧客創造」の概念図 図1 「顧客創造」の概念図

 一般に、1回限りの製品購入で終わってしまった顧客の場合、新たに良好な関係を築くまでに要するコストというのは、その顧客から回収できないといわれています。従って、「顧客満足」にとどまらず、「顧客ロイヤルティ」を育成することによって、顧客をつなぎとめることに成功しない限り、十分な利益を得ることができないのです。

 ここでいう顧客ロイヤルティとは、その商品・サービスを気に入っているという状態・心理を指します。顧客が強い顧客ロイヤルティを持つと、同一製品を繰り返し購入・利用したり、周りの人たちにもその製品の購入を勧めてくれたりといった、企業にとってありがたい行動をもたらしてくれるのです。

まつおっち先生の“ココがポイント”

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「顧客創造」とは、顧客との良好な関係を構築するということであり、そのためには、顧客に対して「顧客満足」を与え、かつ「顧客ロイヤルティ」を育成するための努力が必要である


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