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» 2001年03月15日 12時00分 UPDATE

eCRM実現のためのメソドロジー入門(1):第1章  eCRMにおけるリレーションシップ・マーケティングとは? (2/3)

[松尾順,@IT]

[2]リレーションシップ・マーケティングとその展開

 顧客を起点とし、顧客との良好な関係づくりを目的に置いた各種マーケティング施策を「リレーションシップ・マーケティング」といいます。文字どおり「関係づくりのマーケティング」というわけです。

知識と経験のマーケティングを提唱したマッケンナ氏

 ところで、リレーションシップ・マーケティングを最初に提唱したのはだれかご存じですか? 正確にだれが言い始めたのかというところはよく分かりませんが、明確なコンセプトとして世に出したのは、インテルやアップルを現在の成功に導いたとされる経営コンサルタント、レジス・マッケンナ氏です。

 彼は、1992年、米国で『Relationship Marketing』(『ザ・マーケティング』ダイヤモンド社刊)と題した本を出しています。いまでは最も頻繁に使われるマーケティング用語の1つである、“リレーションシップ・マーケティング”は、実はマッケンナ氏が登録商標を持っているのです。

 マッケンナ氏は、リレーションシップ・マーケティングを「知識と経験のマーケティング」と呼んでいます。企業はまず、技術、競合、顧客層、競合環境を変化させる新技術動向や自社の組織、能力、計画、ビジネスの進め方についての知識を習得する必要があります。

 そして、次の3段階の方法で、企業は知識に基づくマーケティングを始めることができるのです。

  1. 単に顧客のニーズと要求にこたえるだけでなく、顧客そのものを製品企画の段階から巻き込んで、顧客の志向そのものに合うような製品を作り出すこと顧客の志向そのものに合うような製品を作り出すこと
  2. ある特定の市場を占有するために、チャネルや市場に関する知識をもとにニッチ思考で攻めることニッチ思考で攻めること
  3. 供給者、販売業者、提携先、ユーザーといった関係者集団を開拓して、自社の評判や技術格差を引き上げてくれるような支持者の一群を作り上げること自社の評判や技術格差を引き上げてくれるような支持者の一群を作り上げること

 また、経験に基づくマーケティングとは、マッケンナ氏によれば、相互作用、関連付けと創造性に力点を置いたものであり、すなわちそれは、顧客訪問に時間を使い、常に競争相手の動きをモニタし、そして市場と競争に関する情報を新製品の中に織り込むような情報フィードバック分析システムを開発することだそうです。

まつおっち先生の“ココがポイント”

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マッケンナ氏が説くリレーションシップ・マーケティングのポイントは、顧客との良好な関係づくりを通じて顧客との距離を縮めていけば、顧客満足を獲得し、顧客ロイヤルティを育成できる製品が開発できるということ


対話を通じた「ワン・ツー・ワン・マーケティング」

 さて、リレーションシップとほぼ同義で使われる言葉に“ワン・ツー・ワン・マーケティング”があります。これは、ドン・ペパーズ&マーサ・ロジャースの共著による、1993年に出版されたベストセラー『One

to One Future』(『ワン・ツー・ワン マーケティング』ダイヤモンド社刊)で一躍全世界に広まった言葉です。

 ワン・ツー・ワン・マーケティングの基本的な考え方は、顧客の要望をまず聞き、その要望に合致した製品やサービスを提供する、というシンプルなものです。

 「ワン・ツー・ワン」という言葉が使われているので、1人1人に個別の対応をする手法であると考える方がいらっしゃいますが、必ずしもそうでなくてはならないということではありません。究極の理想は真の個別対応であり、おそらく下町の八百屋さんなら、なじみのお得意さん相手に日々やっていることでしょう。しかし、ある程度の規模を持つ組織としては、完全な個別対応は「言うは易し、行うは難し」です。

 大事なことは、マス広告を通じた一方通行のコミュニケーションという従来のやり方ではなく、顧客との双方向のコミュニケーション、言い換えると「対話」を通じて顧客の個別のニーズをきちんと把握するということです。

 従って顧客の情報は個別に集めることが求められますが、その情報に基づく対応は必ずしも個別である必要はなく、ある程度共通したニーズを持つのであれば、大くくりの顧客グループ別の対応でも構わないのです。

コミュニケーションにおける「パーミション・マーケティング」

 さて、顧客との良好な関係づくりにおいて、コミュニケーション上の重要なコンセプト“パーミション・マーケティング”を提唱したのがセス・ゴーディン氏です。パーミション・マーケティングとは、顧客とのコミュニケーションを始めるに当たって、企業は顧客のパーミション(許可)を得なさい、というこれまたシンプルな概念です。

CRMという概念 図2 CRMという概念

 これは、顧客の許可を得ずに、土足で踏み込むような強引なマーケティングでは顧客との良好な関係づくりを形成することはできないという問題意識がベースになっています。ゴーディン氏は、1998年に出版した『Permission

Marketing』(『パーミション・マーケティング』翔泳社刊)で、その斬新なアイデアを披露しました。

 “パーミション・マーケティング”もまた、“ワン・ツー・ワン・マーケティング”と並んで、リレーションシップ・マーケティングの枠組みの中で中心的な位置を占める重要なキーワードとなったのです。

 さらに、こういった考え方をすべて包み込むような概念として、CRM(Customer Relationship Management)があります。CRMにおける中心的なテーマは、全社レベルでの顧客データの一元管理を実現することと、Webやコールセンター、店舗などのさまざまな顧客との接点(コンタクトポイント)での一貫したコミュニケーションを可能とする仕組みを構築することにあります。

まつおっち先生の“ココがポイント”

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顧客との良好な関係づくりのためのインフラ(基盤)整備がCRMであるともいえる


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