・マーケティング・プロセスの概要を把握しよう
・せっかく収集した電子メールアドレス、管理方法には気をつけよう
・顧客プロファイルの分析、そこから何を読み取るか
・メールコンテンツを作成したら、格納用データベースも用意しよう
・顧客とコンテンツをどう組み合わせるか
・電子メールの配信能力には余裕を持たせよう
・配信の結果、何をどう分析すればいいか
・自社に合った施策を見極めよう
この連載もこれで4回目になりました。今回は、いよいよ技術者の皆さんが興味のある電子メール配信システムについてです。
ここで私が書くのは弊社ビッグフットジャパン株式会社のシステムの機能だけではありません。eCRMを実践し、電子メールを活用して、マーケティング・プロセスの効率化と収益の向上に貢献するシステムはこうあるべきだ、との私見であるとご理解ください。
電子メールを活用してのeCRM戦略といっても、まず企業内部のマーケティング・プロセスの概要を把握することから始めましょう。下記に電子メール配信までのプロセスの概要を図示しました。
それでは、実際にどんなシステムが関連するかを説明していきましょう。
あなたの会社では現在、どれくらいの数の電子メールアドレスが、マーケティングに活用できるような状態になっているでしょうか? 数千アドレス? 数万アドレス? それとも数十万以上でしょうか?
私たちが訪問しているオールド・エコノミー企業(伝統的な企業)では電子メールアドレスを必死になって集めています。オプト・イン・メール、メール広告、店舗でのアンケート、Webでのアンケートなどを使って、せっせと収集しています。業界にもよりますが、インバウンドでのコールセンターでは電子メールを尋ねるのをオペレータに必須事項としているところもあります。これは主に生保・損保業界で行われています。
いままで出てきた「オプト・インまたはメール広告からWebへの誘導」→「Webで電子メールアドレスを記入」であれば、Webのデータベースに電子メールアドレスやアンケート項目が残るので比較的簡単にシステムを構築できるでしょう。ここではWebページが電子メールアドレス収集の入り口として機能していたわけです。
店舗でのアンケートによる電子メールアドレスの収集は「人的」に難易度が上がります。ここでいったん、店舗用電子メール用のデータベースなどを作成してしまうと後でWebから収集した電子メールアドレスとマージするときに苦労するのが目に見えています。
さらに、さまざまな収集方法が混在して、収集した電子メールアドレスを管理する部門もばらばらになっていると、大変なことになります。どの電子メールアドレスに対して、どのようなメールを配信していいのかさえ分からなくなってしまいます。
顧客
プロファイルの分析とは顧客のデータ(例:性別、年齢、住んでいる地域、趣味、興味、購入商品、購入時期など)をもとに次の作業を行うことを指します。
メールのコンテンツ作成については特に言及することはありませんが、原稿中に機種依存文字(参考リンク:http://apex.wind.co.jp/tetsuro/izonmoji/ )を使用してはいけないという点には注意が必要でしょう。
ここでの問題はコンテンツを管理する仕組みが挙げられます。特にメールのコンテンツをルールによってパーソナライズして配信する場合にはコンテンツの多くが(ほとんどすべてが)データベースに格納されていることが必須になるでしょう。
ここでいうコンテンツとは、「レターの文章」「商品の名称」「商品の価格」「商品の説明文」「商品画像のパス名」などなどです。
前の顧客プロファイルの分析で得た結果をここで活用します。「ルール1ではXXを購入した顧客にZZのコンテンツを表示する」など顧客の属性情報に基づいてルールを設定します。運用者は企業のマーケターの意向を想定して、ルールの入力・設定画面のGUIは相当工夫する必要があります。
具体的には、電子メールアドレスとそれに付随する属性すべてをルールの要素として扱えることや、扱えるデータ項目名(カラム)が画面を操作するユーザーから透過的に見えることが必要でしょう。そのデータ項目ごとに簡単な記号(<、>、=、Likeなどなど)でルールを設定できるようにする必要があります。ルール設定のための画面をご覧ください(ただしデモ用)。
メール配信自体は単純な機能です。SMTPサーバの設定やハードウェアのチューニングにより配信数を増やすことが可能です(ただし、これはとても大変)。ちなみにビッグフットジャパンのシステムは5000〜6000万通/日の能力であり、かつルールによりダイナミックなコンテンツの差し替えを行うことができます。
いままでの電子メール配信システムの多くは、ルールごとに配信リストを作成することで、「「擬似的なパーソナライズ」を行っていましたが、弊社の仕組みでは「1つの電子メールアドレスリストを分割することなく、ルールに応じて、表示する電子メールアドレスを入れ替えられる」点が画期的だといえます。
メール配信時には当然のことながらリンク先のデータを取得するためにユーザーごとにユニークなIDを振ります。
メール配信直後からリアルタイムでアクティビティを見られるようにすることで、配信がどれくらい完了しているか把握できます。また、エラーログを内容によって自動的に仕分けることができ、次回以降の配信時には「ごみアドレス」を修正したりできます。
基本的な電子メール配信の結果分析の機能とは下記のものを想定しておくと大体はOKでしょう。
いままで書いてきた機能を自社で開発しようとするとおそらく莫大な投資が必要になるでしょう。そればかりでなく、開発には何カ月もの時間がかかるでしょう。
そうした点を考慮して、「配信のアウトソース」「ASP」「ソフトウェア導入」「カスタマイズ自社開発」など、自社に合った施策を見極めましょう!
武田 一也(たけだ かずや)
明治大学卒業。トステム株式会社にて営業およびマーケティングを担当。1997年8月アメリカ国際経営大学院にてMIM(国際経営学修士)取得。1997年9月よりプライス・ウォーター・ハウス・クーパース・コンサルタント(現PwCcコンサルティング)に入社、CRMチームリーダーとなる。流通業、製造業を担当。2000年10月ビッグフットジャパンにてCEO/代表取締役。2002年2月よりBFJCコンサルティング代表となる
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