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» 2001年05月09日 12時00分 UPDATE

eCRM実現のためのメソドロジー入門(4):第4章 セールス・システム 〜eCRMにおいては“逆転の発想”が効く〜 (1/2)

[松尾順,@IT]

[1]従来のセールス施策を覆す“逆転の発想”

 “見込み客を購入客に変換する”という役割・機能を持つのが「セールス・システム」です。ここでの「見込み客」とは、第3章で解説した「マーケティング・システム」によってノン・ユーザーから変換された人々で、対象商品を購入する可能性のある人々のことでした。

セールス・システムを確認しよう

 まず、セールス・システムをホッパー図で確認してみましょう(図1)。

図1 セールス・システムのホッパー図 図1 セールス・システムのホッパー図

 第3章のマーケティング・システムのホッパー図と同様、右側に2つのシステム要素が新たに追加されています。「セールス施策」、そして「IT施策」です。「見込み客」は、セールス施策とそれを支えるIT施策によって、「顧客」になるということをこのホッパー図は表しています。

 ところで、eCRMにおける「見込み客」とは、どのような顧客でしょうか。対象商品を購入する可能性のある人々というのは、コミュニケーションという視点でとらえると、事業者側からコンタクトすることを許してくれた人々ということになります。つまり、「パーミション」をくれた人々です。

 ですから、「セールス施策」とは、これらパーミションをくれた人々に対して、対象商品を購入してもらうまでに行うべき一連のコミュニケーション企画であるということになります。

購入のための「必要条件」と「十分条件」

 セールス施策の立案にあたっては、忘れてはならない重要な点があります。それは、購入における「必要条件」「十分条件」を見極めるということです。

 「必要条件」とは、そもそも見込み客が当該商品を必要としているかどうか、ということです。購入意思の本気度を探るということですね。たとえ、本当に当該商品を欲しい、購入したいと思っていてもそれだけで必ずしも購入に至るわけではありません。

 実際に購入に至るには、必要条件以外に「十分条件」がそろわなければなりません。この十分条件として挙げられるのは、「購入資金」と「購入のタイミング」です。

 例えば、私が本気でイタリアの高級車「フェラーリ」が欲しいと思っていたとします。しかし、現実的には購入には至らないでしょう。というのは、残念ながら十分条件としての「購入資金」がないからです。この場合、「購入しない」というより、「購入できない」という言い方の方が正しいかもしれませんね。

 それから、仮に購入資金を準備できたとしても、すぐに購入するとは限りません。それは、十分条件としての「購入のタイミング」ではないからです。つまり、いま乗っている車がまだ新しく、少なくとも次の車検時期までは買い替えはしない、ということです。

まつおっち先生の“ココがポイント”

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セールス施策を立案する際には、ユーザーが購入する場合の「必要条件」「十分条件」をきちんと見極めることが重要である


従来のセールス施策の落とし穴

 セールス施策立案にあたって、こういった「必要条件」「十分条件」を考慮しておかないと、とんだ無駄骨を折ることになります。「必要条件」、つまり購入意欲を高めることは、コミュニケーションの仕方を工夫することによってある程度変化させることが可能です。

 当該商品を購入することで、何がどう便利になるのか、どのように生活が向上するのか、などといったことを効果的に説明することで、購入意欲は高まるかもしれないからです。しかし、購入資金の不足や、購入のタイミングといった十分条件については、購入意欲の高まりとは違う次元の問題であり、企業側が容易に解決することができるものではありません。

 実際、法人客相手の場合でも、担当者は商品の良さを理解してくれていて、購入したいと思っているのに、“予算がおりないから”“まだ現在の機種が十分使えるから”といった理由で、取引を断念せざるを得なかった経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。

 従来のセールス施策においては、マーケティング担当者が顧客の購入のタイミングを見極めて広告を打ったり、ダイレクト・メールなどを顧客に郵送したりしていました。しかし、顧客の購入のタイミングを知ることは、それ自体がなかなか難しいものであり、また顧客によって異なる購入タイミングに合わせて、個別にセールス施策を行うのはコストがかさむものです。

 ですから、ある特定の時期に一斉に実施せざるを得ませんでした。当然の結果として、購入のタイミングにはない顧客に対して、ダイレクト・メールが届けられたところで、効果は期待できないわけです。

逆転の発想による“待ちの戦略”

 実は、eCRMを構成する主要ツールとしてのWebサイトや電子メールは、このような十分条件、特に購入のタイミングという問題をある程度解決することが可能です。それはまさに「逆転の発想」であり、しかもそれを実行に移すことができるのです。

 つまり、「購入のタイミングをつかみにいく」という従来のマーケティング的発想を捨て、「見込み客との関係を保ちつつ、購入のタイミングがくるのを待つ」という方法に切り替えるのです。「購入のタイミングに合わせてコミュニケーションを行う」という前提が完全に覆されるわけです。

 購入のタイミングがやってくるまでの間、見込み客との関係を保つために継続的なコミュニケーションが必要となりますが、Webや電子メールは、1人当たりのコミュニケーション・コストがほかの媒体と比較してはるかに安いため、このような“待ちの戦略”が可能になるわけです。

 具体的な施策としては、Webサイトでは掲示板やチャットなどの「コミュニティ」機能や電子メールを使って定期的に発行するメール・マガジンなどによる情報提供戦略がその中心的役割を果たすことになります。

まつおっち先生の“ココがポイント”

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逆転の発想による“待ちの戦略”とは、「購入のタイミングをつかみにいく」という従来のマーケティング的発想を捨て、「見込み客との関係を保ちつつ、購入のタイミングがくるのを待つ」という方法に切り替えることである


では、“待ちの戦略”の代表的な事例を見てみましょう。

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