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» 2001年05月18日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン(35):伸び悩むパソコン出荷厳しさ増すパソコン・ベンダの収益

[三浦優子(コンピュータ・ニュース社),@IT]

 パソコンの売れ行きに陰りが見えてきたという声が出ている。電子情報技術産業協会(JEITA)が2001年5月に発表した2000年度(2000年4月−2001年3月)の国内のパソコン出荷実績は、対前年比22%増の1210万2000台。順調に売り上げが伸長しているという結果となったのだが、個人向けにパソコンを売っているショップ、企業向けに商品を販売しているディーラーやシステムインテグレータに話を聞いても、「ものすごく売り上げが伸びた」という声がどうも出てこないのだ。

 パソコン・ショップでは、2000年夏以降、パソコンの売り上げが伸び悩みはじめた。年末に入り、一時は持ち直したという声も上がったものの、2001年1〜3月までの間は、「家電リサイクル法施行前に冷蔵庫、エアコンといった製品を買い替えようとする需要が急増し、パソコンに対しては財布のひもが締められたままだ」と苦笑いする販売店の話をよく聞いた。

 今年はWindows XPという大型商品があるだけに、売り上げアップに期待が高まっているものの、「逆にWindows XPが出るまではパソコンの買い替えをしないという人が増えるため、買い控えが助長される」という懸念もつきまとう。さらに、「昨年のWindows Meの売れ行きがいまひとつだったから、今回も……」とWindows XPが出ても果たしてどれくらい売り上げが伸びるのか、期待をしていいものかどうかの迷いもあるようで、今年のパソコン売り上げは不透明感を帯びたままだ。

 企業向けにパソコンを販売しているところの話を聞いても、「一部の大企業はともかく、中小企業は非常に厳しい」という声をよく聞いた。ちょうど前年に2000年問題があり前倒しでシステムを入れ替えた影響もあったということだが、「経済環境がこれだけ悪化した状態では、IT投資だけは別というわけにいかない」と、この不況が直接影響を与えているようだ。もちろん、パソコン導入を積極的に進めている企業もあるにはあるが、「すべての企業がそういう状態なわけではない」という。

 パソコンの売れ行きが鈍化したことに大きな打撃を受けることになりそうなのが、パソコン・ベンダである。パソコン・ベンダの収益は悪化している。最近、新聞の経済面を盛んににぎわせている「デフレ」という言葉だが、パソコン産業はかなり前からデフレ状態にあった。

 店頭でパソコンを販売しても利益率が5%以下となっているという話を、第32回「寝た子を起こしたリサイクル法」で書いたけれど、店頭でこれだけ収益性が下がっているということは、メーカー自身もギリギリの状態でパソコン事業を運営しているということなのだ。

 2001年3月期の決算では、NECはパソコン事業の収益が大幅に悪化し、パソコン事業を再構築することが決定した。NECといえば、日本のパソコン産業をリードしてきたトップ・ベンダである。同社の2000年度の国内パソコン出荷台数は対前年同期比13%増の348万台だったのだが、その同社がパソコン事業の再構築をしなければならないという。ということは、今年のパソコンの売り上げが伸び悩んだら、さらに収益が悪化していくことになるのではないか。

 先ごろ、来日した米デルコンピュータのCEOであるマイケル・デル氏は、「生き残れるパソコン・ベンダはわずかだ」とパソコン産業がさらに厳しい状況を迎えるだろうと示唆する。デルといえば、米国でのパソコン出荷がコンパックを抜いてトップとなったにもかかわらず、リストラを敢行するなど、厳しい環境に耐えられる企業体質を他社に先んじてつくっていることで知られる。それだけにその発言には重みがある。

 果たして、日本のパソコン・ベンダはこれからさらに厳しくなる環境の中、生き残っていくことができるのであろうか……?

Profile

三浦 優子(みうら ゆうこ)

コンピュータ・ニュース社

1965年、東京都町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。

メールアドレスはmiura@bcn.co.jp


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