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» 2001年06月08日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン(38):ブロードバンドサービスの夜明け競争してこそのサービス向上

[磯和春美(毎日新聞社),@IT]

 通信各社やIT関連企業は、ここのところ相次いでブロードバンド実証実験や、ブロードバンド向けコンテンツ開発に取り組んでいる。間違いなく、今年流行するIT関連用語のベスト3に入るキーワードは「ブロードバンド」だろう。FTTH(Fiber to the Home)はNTTばかりでなく、東京電力、有線ブロードネットワークスなどもインフラ整備に余念がない。CATV用の光ファイバを利用したインターネット通信サービスや、既存の通信インフラで高速通信を可能にするADSLサービスも盛んだ。

まずは気になる料金設定

 ところで、ブロードバンドサービスが普及してくれば、期待したくなるのは各社の競争とそれによるサービスの向上だ。すでに、NTTは7月から提供するFTTHサービスで、有線ブロードネットワークスへの対抗心をむき出しにしている。

 有線ブロードネットワークスのサービス「GATE01」は、月額6100円でつなぎ放題、プロバイダとの契約も不要で、映画やコンサートなど、ブロードバンド・インターネットの目玉といわれるエンターテイメント系のコンテンツを楽しむことができる(一部有料)。

 一方、NTT東日本とNTT西日本が提供する「Bフレッツ」では、最大10MbpsのFTTH回線を提供、試験期間中には1万3000円に設定していた月額料金を、7月以降は5900円程度に引き下げるという。現在、国会に上程され、衆議院を通過している電気通信事業法改正法案が承認されれば、NTT地域2社はプロバイダ事業も兼営できるようになる。そうなればより競争力のある価格提示が、複数の通信事業者の間で行われ、価格競争が一気に進むことも期待できそうだ。

 ちなみに、富士通総合研究所などのアンケート調査によると、月額3000円程度の利用料ならブロードバンドを利用してもよいと答える人が7割を超えるという。これが月額4000円となると5割に減るから、やはり利用料の設定は利用者獲得の第一関門になりそうだ。

コンテンツ提供に向けて、企業の準備は?

 もっとも、料金だけではない。競合が始まれば、ブロードバンド時代にふさわしい新機軸のコンテンツの開発や、人気のあるコンテンツの囲い込みが激しくなる。例えば、東京電力は7月から東京都大田区でFTTHサービスの実用化実験を始めるが、この際にコンテンツ配信を担当する東京通信ネットワーク(TTNet)は、吉本興業と組んで、バラエティ、映画などのエンターテインメント系コンテンツを用意する。

 「ブロードバンド時代は、衛星放送開始初期と同じ状況。最初はコスト競争も激しくなるが、それでは続かない。面白いコンテンツを配信できる事業者が最終的に利用者の支持を集める」と関係者は指摘する。

 コンテンツといえば、大容量化を活用して画像が楽しめる映画、コンサートなどの音楽、ドラマ、さらには双方向性を利用した学習、電子商取引などが主要なメニューに挙がってくる。ところが、現在ブロードバンドに向けて最も有望なコンテンツをかかえていると思われるテレビ業界は「地上波のデジタル放送開始に向けて自社の戦略立案とコンテンツの用意にいっぱいいっぱいというのが現状」(NHK関係者)なのだという。人気コンテンツ開発は今後のブロードバンド・ポータルの新たな課題になってくる。

 企業はすでに「ブロードバンド時代のローンチに向けてスタンバイOK」(コンテンツ企業関係者)だという。それでは、利用者の側はどれくらいの期待を持っているのだろうか。情報通信総合研究所の調査によると、利用者が今後最も利用したいブロードバンド・ネットワークは、光ファイバがトップで26%、次いでCATV(24%)、ADSL(23%)なのだという。やはり利用者は常時接続、高速大容量を求めており、野村総研の調査では「映画を週に6本以上鑑賞するユーザーの66%がブロードバンドを利用したいと答えている」という。映画ファンはインターネット利用にそれほど熱心ではないから、ブロードバンド利用が普及すれば、新たなインターネット利用者の獲得につながるわけだ。

普及のカギはやはりコンテンツ

 気になる結果もある。インターネット上の有料コンテンツの利用経験があるのは回答者全体の1割以下。それも、パソコン用ソフトのダウンロードや、ニュースなどのビジネス系コンテンツが主流で、エンターテインメント系コンテンツの購入はまだ少ないのだという。しかもコンテンツ全体の総合評価では、3分の2のユーザーが不満を感じており、同研究所では「現在のコンテンツ市場は、(コンテンツに対する不満度がより高い)無料コンテンツのみの利用者を、有料コンテンツの利用へとけん引する力が弱いといえる」と結論している。

 コンテンツ開発にはまだ課題がありそうだが、ブロードバンド自体の普及はいつごろになりそうなのか。総務省の予測によると、2005年には2500万世帯がADSLなどを含めたブロードバンド接続を利用しているという。また、米ジュピター メディアメトリックスの調査部門であるジュピターリサーチは、2005年で860万世帯にブロードバンドインフラが導入されているという見通しを発表している。

 ところで、ブロードバンドにおける先進国、韓国で圧倒的な人気があるのは「対戦型ゲームとインターネットチャットや出会い系」(韓国系企業関係者)なのだという。テレビ電話形式で、1対1で話ができるオンラインお見合いのようなコンテンツはまさにブロードバンド時代ならではのものだ。そういえば、携帯電話のインターネット接続も、事件などが起きていまや社会的に注目を集めているいわゆる「出会い系サイト」の隆盛が爆発的ブームのきっかけになっている。究極のエンターテイメント系のコンテンツが登場すれば、インフラ普及もサービス向上もあっという間に進むのかもしれない。

Profile

磯和 春美(いそわ はるみ)

毎日新聞社

1963年生まれ、東京都出身。お茶の水女子大大学院修了、理学修士。毎日新聞社に入社、浦和支局、経済部を経て1998年10月から総合メディア事業局サイバー編集部で電気通信、インターネット、IT関連の取材に携わる。毎日イ ンタラクティブのデジタル・トゥデイに執筆するほか、経済誌、専門誌などにIT関連の寄稿を続けている。

メールアドレスはisowa@mainichi.co.jp


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