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» 2001年07月13日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン(43):宣伝にどどまらないメールが成功のカギインターネットマーケティングのキモは人材

[三浦優子(コンピュータ・ニュース社),@IT]

 記者なんて仕事をしているもので、毎日たくさんのメールが手元に届く。製品のニュースリリースや企業が発行するメールニュースなど、たくさんのものが届く。誠に申し訳ないが、すべてを詳細まで読むのは難しい。大体の場合、見出しやメニューを見て詳細まで読むかをどうか決めるというパターンがほとんどだ。

 しかし、そんな中に何通か、届いていることが分かるとすぐに読みたくなるメールも存在する。その1つが、エー・アイ・ソフトが毎月発行するメールニュース「A.I.SOFT HOT NEWS」である。

もしやバーチャルアイドル

 このメールニュースの冒頭にある、担当の加藤るみさんが書く一言が楽しい。習い事をしていて感じたことや、旅行に出掛けた折の感想など、彼女の日常生活の思いのようなものがつづられてるのるだが、これを読むのが楽しみなのだ。仕事にはまったく関係のないことが書かれているのだが、「今月はどんなことが書いてあるんだろう……?」と思うと、届いたメールの中でつい優先的にこのメールニュースを開いてしまう。

 実は、加藤さんが書いたものを読んでみて、最初のころはあまりにかわいらしいことが書かれているうえ、「加藤るみ」というアイドルタレントみたいな名前だったので、彼女は実在しないバーチャルアイドルで、文章も男性社員が作ったものなんじゃないかと思っていた。

 しかし、彼女は実在していた。それもかなり正統的な美人で、実物を見て驚いてしまったのだが……、そんなことはさておき、昨年社会人になったばかりの彼女が、偶然メールニュースの担当となったのだそうだ。そして、特に大きな意図もなしに日常感じたことをメールの冒頭に書き始めたのだが、反響は大きかった。

 「それまで、こういう宣伝メールみたいなものは送ってくるなという返信がほとんどだったのに、加藤が担当になってからは“頑張ってください”とか、そういう返信ばかりになりました。加藤の前任者である男性社員は“お前は今まで何をやってたんだ!”ってことになりましたよ」と、加藤さんの上司は笑う。加藤さんを担当に起用したのはまったくの偶然だったものの、彼女のフレッシュな一言が読者の共感を呼んだようなのだ。

偶然や社内ボランティアに頼ってよいのか?

 企業が発行するメールニュースについては、「宣伝目的で発行しているものであっても、内容がそれだけでは読者はつかない」という意見はよく耳にする。別のあるソフトメーカーでも、「うちはオンラインでもソフトを販売しているから効果がよく分かる。宣伝的なことしか書かないメールにはほとんど反響はないのだが、それにとどまらないソフトの使い方などを紹介する内容だとダウンロードの数がぐっと増える」と話していた。あくまで販促目的のメールニュースであっても、従来型の宣伝だけでは読者には飽きられてしまうのである。

 しかし、単純な宣伝では読む人がついてこないとは分かっていても、企業側では宣伝以外の内容を盛り込んだメールニュースを作っていくのは、なかなか難しいのも事実だ。労力からいったら、単純な宣伝メールを作るほうがずっと楽だろう。

 さらに、宣伝にとどまらないメールを発行するといった業務を人事考課上、きちんと評価しようとしているかといったら、はなはだ怪しい。ネットベンチャーならともかく、日本の大企業の人事考課システムはそれを評価したり、適材を適所に配置できるようにはなっていないだろう。

 「宣伝にとどまらない」というのは、インターネットでのカスタマリレーションシップの肝の部分のように思えるのだが、果たして、インターネットマーケティングに適した人材をどう見いだし使っていくのかが、日本でのインターネットマーケティング進展の大きなカギといえるのではないだろうか。

Profile

三浦 優子(みうら ゆうこ)

コンピュータ・ニュース社

1965年、東京都町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。

メールアドレスはmiura@bcn.co.jp


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