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» 2001年07月20日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン(44):マイライン、大丈夫?10月には駆け込みで「登録ラッシュ」到来も

[磯和春美(毎日新聞社),@IT]

 5月から始まった電話会社選択サービス「マイライン」の登録作業が遅れている。マイラインの6月末時点の登録は2800万回線。マイライン登録に参加している事業者で作るマイライン事業者協議会の関係者によると、3月までに申し込みを済ませたのに登録が追いつかない「積滞」は、5月時点で800万回線あった。本当なら6月には登録が終わっているはずだったが、単純計算でも6月末時点での「積滞」はまだ200万回線あり、さらにそれから行われた申し込みの処理の滞りぶりを考えると、「積滞は全然減っていない」という。

申し込んだら、電話代が高くなった?

 しかも、マイラインの申し込み手続きにはさまざまな、複雑なルールや不可思議な慣行がある。ところがこれらを利用者に広く告知していないものだから、あちこちで要らぬトラブルが巻き起こっている。

 1つは私の家族の話だ。マイラインプラスで電話料金が安くなる、という説明を聞いた家族は、3月にNTT以外のA社のマイラインプラス登録を申し込んだ。彼女は5月からマイライン制度が始まることは知っていたが、登録のお知らせがくるまでは会社識別番号(例の0038、などというやつである)が必要だ、ということは知らなかった。結果として、5月、6月はNTTコミュニケーションズから大変に高い請求書が届いてしまった。怒った彼女はA社に電話をし、そこで初めて「登録されなければマイライン制度は使えない」という事実を知った。

 協議会によると、3月末時点の申込総数は3000万件で、5月のサービス開始までに登録が間に合ったのは2200万件にすぎなかった。800万件はサービス開始後も、登録終了のお知らせがくるまでマイライン制度を利用できなかったわけだ。協議会ではハガキや新聞広告などで告知を行ったとしているが、実際には多くの人がこの事実を知らなかったようで、各電話会社は応対に追われ、クレームはいまも続いているという。

市内を申し込んだら、国際電話がキャンセル?

 別の例は、同じ業界の友人の身に起きたことだ。友人は通信業界を担当していたこともあり、十分に研究してすべての区分で違う会社を登録してみることにしたのだという。申し込みも2月に済ませ、5月からのマイライン制度には間に合うはずと思っていたという。ところが、どういうわけか、市内で選んだNTTだけは登録されたのだが、国際電話区分で選んだ会社からは「登録をもう申し込まれましたか?」という問い合わせの電話がかかってきた。

 いろいろ聞いてみると、マイラインの申し込みは1通だけで行わなければならないのだという。複数の申込書が同じ回線の所有者から届いた場合、新しい申込日付のものを優先して登録するため、それ以前に申し込んでいた国際電話区分のマイライン登録はキャンセルされ、市内通話のみ、NTT地域網で登録されてしまったというわけだ。しかしこれも、普通の人(どころか、友人は業界にも詳しい)には理解されていない話だろう。

業界内の“巨人”を見る目

 通信業界内部ではもっと面倒な話になっている。マイライン登録を行うのは結局、NTTマイラインセンター。そこで電話関連の代理店などで「都市伝説」のように語られている話がある。「NTTの営業が提出してくるマイライン申込書には、申し込みの日付が入っていない」というのだ。上の話と関連して考えてもらえば分かるように、先に違う会社の市外通話区分で登録を済ませている回線で、「後からNTTも市内だけ登録しておくか」と考えた場合、先に申し込んだマイラインはキャンセルされてしまう。同じことはどの会社にも起こる可能性があるのだが、NTTだけは申込書に日付が入っていないため、絶対にキャンセルされない、という「伝説」だ。

 また、ある業界関係者は声をひそめて「もともと、NTTにとってはマイラインは不利なサービス。だから彼らはマイラインの宣伝はあまりしないし、マイライン協議会でも協力的とはいえないんです」と指摘する。確かに、これまで市内通話を独り占めしてきたNTTにとって、ほかの会社に優先的につながるようなシステムはマイナスだ。しかし、まだ多くの人はマイラインに登録しておらず、登録していない回線はこれまで通り、NTTがすべて抱えることになる。登録済みのシェアも、6月末で7割以上がNTT東西(ただし、県外通話と国際通話ではNTTコミュニケーションズが6割程度)を選択しているのだから、もっと鷹揚にかまえていてもよさそうなものだ。

登録作業の遅れが続くなら、手数料無料期間延長を

 ところが「いやいや、本番はこれからなのです」と話すのは格安電話で知られる某社の広報。10月末まではマイラインの登録は何度変更してもタダだが、11月からは登録1回につき800円の手数料を徴収される。当然、各電話会社とも夏から10月に向けて営業に力が入るのは必至だし、登録を済ませていない利用者も10月までには登録しておくか、という動きが出てくるだろう。これからもうひと山、登録ラッシュがやってくるのだ。

 ところがNTTマイラインセンターの積滞は一向に解消されない。ここで例えばNTT以外のA社やB社が営業に力をいれ、多くのマイライン登録にこぎつけたとする。ところが、利用開始が遅れれば遅れるほど、私の家族のように「あの電話会社、せっかく登録してあげたのに全然手続きしないわね、ヤル気ないんじゃないの!」と、的外れな怒りをぶつけてくる利用者が増えるかもしれない。

 この場合、NTTはマイライン登録をしてもらわなくても一向に困らないのがミソだ。業界の「NTTはわざとマイライン登録をのんびりやってるんじゃないの?」という“邪推”もあながち根拠ゼロとはいい切れない気がしてくる。登録が遅れれば遅れるほど、NTT以外の電話会社は顧客のクレームにさらされる。なんとも不思議なルールではないか。

 業界では「11月から手数料を徴収するといっているが、今の積滞を見ると、そんなことをいっている場合ではない。手数料無料の期間を延ばすべきだ」という声が沸き起こっているが真にその通り。私も一票を投じたい。

Profile

磯和 春美(いそわ はるみ)

毎日新聞社

1963年生まれ、東京都出身。お茶の水女子大大学院修了、理学修士。毎日新聞社に入社、浦和支局、経済部を経て1998年10月から総合メディア事業局サイバー編集部で電気通信、インターネット、IT関連の取材に携わる。毎日イ ンタラクティブのデジタル・トゥデイに執筆するほか、経済誌、専門誌などにIT関連の寄稿を続けている。

メールアドレスはisowa@mainichi.co.jp


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