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» 2002年02月08日 12時00分 UPDATE

IT Business フロントライン (69):法人ビジネスはショップを救うか?ザ・コン館リニューアルに見る店舗の新しい可能性

[三浦優子(コンピュータ・ニュース社),@IT]

 秋葉原のラオックス ザ・コンピュータ館が中小企業とSOHOをターゲットとして昨年10月26日にリニューアルオープンを行って、3カ月が経過した。1990年、パソコンショップの大型化の象徴としてオープンし、パソコン業界に君臨した同店舗がターゲットを変更した事実は、1995年のWindows 95発売を頂点するパソコンビジネスが、1つの転換期を迎えたことを如実に示すとともに、店頭で法人向けビジネスを行うという新しい可能性を示した。

「法人需要は絶対にある」と強気の宇陀社長

 もともと、ザ・コンピュータ館の来店客のうち25%が領収書をもらって帰る顧客だったそうで、特にリニューアル前はザ・コンピュータ館の向かい側にあったネットワーク館の来店客の中には、大手SIerも少なくなかった。この背景をラオックス側では、「ネットワーク構築作業をしていたら、1台分だけネットワークカードが足りない──といった駆け込み需要の受け皿になっている」と分析。ザ・コンピュータ館を法人向けにリニューアルすることで、ビジネス向け需要を顕在化し、さらにSOHOマーケットという新市場を獲得することが狙いとなっている。

 1階のサプライ売り場、3階のソフト売り場、4階のパソコン売り場といった従来通りの製品売り場に加え、5階にIT相談カウンターを設置。常時3、4人の相談員を置いて、中小企業のIT化に関する相談を受け付け、ネットワーク化、サーバの導入といった需要の受け皿にしていきたい意向である。

 このフロアについて、「時間はかかるかもしれないが、絶対に需要はある」──今回のリニューアルに協力しているソフトバンク・コマースの宇陀栄次社長は、強い自信を見せる。宇陀社長はソフトバンク・コマース入社以前日本アイ・ビー・エムでRS/6000を手掛けていた、法人向けビジネス出身者。実は店頭向けビジネスよりも、法人向けビジネスの方が得意……というバックグラウンドを持っている。それだけに、「待っていて顧客がやって来てくれることは、法人営業をしていた人間にとっては大きな驚き」なのだそうだ。

 しかも、宇陀社長は、「百聞は一見に如(し)かずということわざどおり、実際に商品を見る場を提供することの意味は大きい。単に商品を売る場としてだけでなく、見て確認できる場として店舗が持つパワーを感じた」と指摘する。

 ビジネス向けのソフト、例えばこのコラムが掲載されているBusiness Computingフォーラムで紹介されているCRM──文字で説明して理解してもらうのはなかなか難しい分野なのだが、「見てもらって説明すれば、理解しやすくなる」というわけだ。一種のショールーム機能を店舗が持つということになる。しかも、メーカー側が顧客を連れてくるのではなく、商品に興味のある顧客が自発的に来てくれるのだから、法人向け営業をしている人にとっては、「なんとありがたい場だ」ということになるのだろう。メーカー側としては、店舗を顧客に見せる場としてもっとうまく活用することができるのではないか。法人向けビジネスを展開するメーカーの方々は一考の余地ありである。

中途半端さを乗り越えられるか

 しかし、店舗側ではまだ法人ビジネスに対し、いまひとつ踏み込めない部分があることも否めない。

 IT相談カウンターに月間100事業所からの問い合わせがあったとしても、店舗でパソコンを売っている数からすれば、「大したことがない数」ということになる。しかも、問い合わせのうちすべてが実ビジネスになるわけではないのだから、問い合わせの数をどう評価すればよいのか、ラオックス側で戸惑っている部分がある。

 商品陳列にしても、3階のソフトフロアには中小企業のIT化に欠かせない業務ソフトコーナーが依然として残っている。思い切ってこれを5階フロアに移してみるとか、4階のパソコン販売フロアではほかの販売店には置かれていない企業向けパソコンを大胆に展示するといった施策があっていいと思う。残念ながら3階、4階に関してはリニューアル前と後の差をあまり感じないのだ。

 IT相談カウンターが5階にあることに対しても、「有楽町のビックカメラではエスカレーター横の目立つ部分に法人相談カウンターを置いている。それに対してラオックスが5階という目立ちにくい部分にカウンターを置いていることに、中途半端さを感じる」と否定的な意見を出すメーカーもある。ラオックス側としても、顧客定着のためにもう一工夫が必要というところだろうか。

 現在、パソコン販売店は売り上げ減少で厳しい環境に置かれている。そういう時期だけに、ラオックスのような「新しいことへのチャレンジ」は大いになされるべきだと思っている。近ごろ、「ああ、標準的なセオリーは全部守っているお店だなあ……」とは思うものの、どうもお客さまの数が少ない店舗が目立つだけに、思い切った新しいタイプの店舗がもっと増えてしかるべきだと思うのだが。

Profile

三浦 優子(みうら ゆうこ)

株式会社コンピュータ・ニュース社

1965年、東京都下町田市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、2年間同校に勤務するなど、まったくコンピュータとは縁のない生活を送っていたが、1990年週刊のコンピュータ業界向け新聞「BUSINESSコンピュータニュース」を発行する株式会社コンピュータ・ニュース社に入社。以来、10年以上、記者としてコンピュータ業界の取材活動を続けている。

メールアドレスはmiura@bcn.co.jp


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