連載
» 2002年07月16日 12時00分 UPDATE

ミドルサイズERP大研究(3):中堅・中小企業におけるERPパッケージ選びのポイント

前回までは、中堅・中小企業のERP導入が成功するためのポイントをレポートした。今回は、ERP導入に携わるコンサルタント各社の声を聞きながら、実際のパッケージ選びの傾向とその要点を探っていきたい

[造田 覚,@IT]

「導入コンサル」以前のコンサルタントがポイント

 本特集Part2「中堅・中小企業がERP導入に成功するためには」では、ERP導入には人こそが大事だという指摘があった。自社がどのようなビジネスを展開するのか、そのためのビジネス・プロセスはどうあるべきか、それに対応する情報システムはどのように設計するのか。そうした点を的確に理解してくれた上で、導入作業を行ってくれるSI業者(システムインテグレータ)が必要だという話だ。しかし、一般にシステムインテグレータは、どんなERPパッケージでもこなせるとは限らない。自社で扱える特定のパッケージを強くする勧めるという傾向がないとはいえないのだ。そこで、自社に最も合致したパッケージを選ぶにはどのようにすればよいのだろうか。

r8image01.jpg アーク・シンク・タンク シニアマネージャー 井上 実 氏(中小企業診断士・システムアナリスト・ITコーディネータ)

 そこで、注目されるのが専門のコンサルタントである。主に中堅企業のERP導入プランニングを手掛ける、アーク・シンク・タンクのシニアマネージャー井上実氏は「いきなりERPを始めようと思っても目的が定まらず、とん挫してしまう。導入以前の綿密なプランニングこそ、成功の早道では」と語る。

 同社の特長は、企業の現状把握から課題の抽出、目的の設定、実現するためのビジネス・プロセスの設計まで調査し検討を重ねたうえで、候補となるERPパッケージの調査を行うことだ。事前のプランニングで目的を明確に描き、ERPの適用範囲を定めることで、おのずと製品の候補が絞られてくるという。生産管理、販売管理、人事管理、財務会計管理など、各プロセスにいまどのような課題があり、どこを改善し組織として何を目標に情報システムを構築していくか。「場合によっては、大掛かりなERPパッケージではなく、単体の財務会計ソフトなどを導入することで、当面の最適化を実現できるケースもある」ため、何が何でもERPを導入することは勧めないという。

 ERP本来の意味からすれば、「全体最適化」をゴールとして、各プロセスの再構築が手段となるが、実際の導入ケースはさまざまで、投資効果をシビアに求める今日では、「部分最適化」というアプローチもERP製品選びの1つのポイントとして見えてくる。

製品の“血筋”を知ったうえで、検討することが大事

r8image02.jpg 株式会社電通国際情報サービス 製造システム事業部 東日本営業2部長 荒井俊明氏

 では、実際のERPパッケージについては、どのような特質があるのだろうか。大手企業や中堅企業のERP導入コンサルから設計・構築、保守・運用まで、トータルソリューションを提供する株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)、製造システム事業部の荒井俊明氏は「傾向としては、機能の標準性(使いたい機能が標準で装備されているか)、値段、親和性、ワールドワイド性、将来性、ポピュラー性(OSなどのインフラを常に追随するか)などが選定基準として挙げられる」という。

 しかし、SAP(R/3、mySAP.com)、オラクル(Oracle Applications、E-Business Suite)、バーン(iBaan ERP)、ピープルソフト(Peoplesoft8)などの総合パッケージを筆頭に現在、各社からERPと称する製品が数多くリリースされている。製品名を見ただけでは、その機能の実態や適用範囲はなかなか把握できない。トレンド化した「ERP」という言葉をうたい文句に声高にアピールするメーカーの姿勢に「これでは何を選んでいいか分からないはず」とコンサルタント各社は口をそろえる。中には、本来はERPと呼べないのでは? という製品もないわけではない。ERPパッケージと呼ばれる製品の線引きがあいまいになった現在、その「性格」を見極めることが成功のかぎを握るようだ。

r8image03.jpg 株式会社電通国際情報サービス 製造システム事業部 システムコンサルティング部 部長 佐藤公一 氏

 同じくISIDの製造システム事業部・佐藤公一氏は「機能はもちろん、各ソフトに思想や“血筋”といった性格があるので、そこを見極めたうえで、自社の業務やビジョンに当てはめながら、選定を始めるべき」という。

 例えば、SAPは人事・財務会計管理から、バーンは生産管理からスタートし現在の総合パッケージ化に至ったという歴史がある。また、SAPは製薬・化学分野の装置系システムで導入実績が高く、組み立て機械系では、バーンが高い実績を誇る。

 一方、人事・給与管理系では、ピープルソフトが強く、富士通のGLOVIAシリーズをはじめ、NTTデータのSCAWなど、国内系製品も評価が高い。さらに販売管理系においても国内パッケージは評価が高いようだ。

 また、NECや日立、富士通などのハードウェアメーカーがリリースするERPパッケージは、生産管理系に強いという声も聞こえてくる。

 逆に気を付けたいところは、海外ソフトの場合、会計モジュールをパッケージ化していないものが多いことだ。また、1つのパッケージとしてメニュー化されていても、あるモジュールは他社製品との組み合わせという形の製品も少なくない。この場合でも、メーカー側は「連携性」をうたうが、万一のトラブルへのメンテナンス(サポートも含めて)を考えると、不安材料ではある。

 モジュール間連携に関しては、XML対応やミドルウェア製品の進化によって、通常のデータ交換であれば問題は少なくなっているが、ERPの特徴の1つであるリアルタイム処理を行うのであれば、単一のマスタ・データベースで各モジュールが稼働する製品が前提になるだろう。しかし、SAPやオラクルなどの大手企業向け製品を別にすると、ミドルサイズERPで単一データベースで稼働するERPソフトは、三井情報開発のMACS.Eagleなど、まだ限られている。

 こうした情報は、製品の機能表だけではなかなか見えてこない。やはり、コンサルタントやSI業者から密に情報を収集することがポイントとなってくる。言い換えれば、これらの情報を豊富に持ったコンサルタントやSI業者と付き合うことが、失敗しないパッケージ選びの秘訣なのだろう。

中小企業での導入ポイントは「だれが使うか」

r8image04.jpg 社団法人中小企業診断協会 東京支部城西支会 中小企業診断士 ITコーディネータ 神谷俊彦氏

 一方、中小企業に目を向けると、パッケージ選びには若干の違いが見られるようである。社団法人中小企業診断協会東京支部城西支会の神谷俊彦氏(中小企業診断士/ITコーディネータ)は、「機能はもちろん前提となるが、実際に『だれが使うのか』ということが、現実的な判定材料として見えてくる」と分析する。

 中小企業の場合、実際にERPソフトを使って入力する人は、経理担当者だけ、データを活用する人も経営者だけ、というように利用者が限られるケースが多い。また大企業と比べて、情報システムに対するスキルも十分ではなく、経営者も財務面などの専門知識が十分でない場合も少なくない。こうした背景から、伝票感覚で簡単に入力できて、入力結果が帳票や分析シートなど、ひと目で分かりやすい形でアウトプットできるパッケージが求められる傾向にあるという。

 このクラスでは、富士通のGLOVIAシリーズをはじめ、スワンのNewRRRや内田洋行のスーパーカクテルシリーズ、オービックビジネスコンサルタントの奉行シリーズなど、国内系パッケージの人気も高い。

 神谷氏は、中小企業向けのERPパッケージを仲間たちとピックアップし、「中小企業向け情報化ポータルサイト」で情報を公開しているが、ここではSAPやオラクルといった、いわゆる「高機能・大容量」のパッケージは対象外としている。中小企業の場合、必ずしも機能性は第一優先ではなく、経営者や経理担当といった限られた人間の使い勝手を考慮したパッケージ選びがポイントとして挙げられるからだ。今後、同サイトでは各製品のユーザー事例やパソコンレベルの製品も紹介する予定だという。一見の価値はあるだろう。

現実路線としては「使いながら」

 実際の導入の場面では、「部分最適化」も1つの方法であると先にも述べたが、中堅クラスの企業では、海外拠点の設立に伴い、全社の基幹システムを見直すケースもしばしばあるだろう。こうしたとき、ERPの適用範囲をどこまで広げるかが課題となってくる。

 例えば、拠点によっては20-30人程度の小規模の工場もあり、これらに対して果たして全社を一元管理するERPの導入が必要か、という問題もあるだろう。もちろん製品によっては、マルチカンパニー機能といった各拠点を一元的に管理できるものあるが、かなり高価である。資材調達先も違えば、会計面においても商法など、その国独自の要素を多分に有する海外拠点の場合、必ずしも全社的な一元化システムがベストプラクティスとはいえない。前出の神谷氏の「だれが使うのか」という観点から考えれば、経営指標や分析シートなどは現地のスタッフが活用する可能性は低く、それならば現地の生産・販売などといった業務プロセスは独立させ、 必要に応じて、本社の管理者層が必要とするデータをやり取りできる(取り出せる) といった、いわば二元的なシステム構築も現実的な方法といえるだろう。

 ISIDの荒井氏は「初めは財務会計管理だけ、生産管理だけといったシンプルな設計で、使いながら、機能を付加していく方法も成功の秘訣」という。現に同社では、このような導入を勧めるケースが多く、カットオーバーが早い分、企業にとっては導入に掛かるコストを抑えられるというメリットもある。また、早い段階で効果を測ることができ、組織の変化、業務の変化に合わせて、的確に拡張していくことが可能だ。もちろん、こうしたアプローチの場合、多くの機能を実装した拡張性の高いパッケージの選定が前提であることはいうまでもない。

 また、これらを成功させるには、SI業者のSEの力量にもかかってくる。自社の業務を熟知し、同じ目的ライン上に立ち、良きパートナーとして、有益な意見を出してくれるSEが望ましい。さらに担当SEの過去の実績を知ることも欠かせない要素である。運が悪ければ、未経験者の「経験の場」とされることもあり、これではERPの成功はもちろん、将来のSCMやCRM展開など、長期的なビジョンの実現は望めない。前回も述べたが、むしろパッケージ選びよりもSE選びの方がプライオリティは高いといえるだろう。

 以上、大まかに述べてきたが、ERPプロジェクトを成功に導くためには、目的の明確化、適用範囲の明確化、それに対応する製品の機能性、そしてSI業者の担当SEのスキルとパートナーシップ性が条件として見えてくる。さらに運用まで視野を広げると、トップとエンドユーザー、企業と担当SEの意識のギャップをいかに埋めるかが重要なファクターとなってくる。特に現行システムから新システムへの移行期においては、エンドユーザーは現行業務をこなしながら、新規システムの研修を行うわけで、エンドユーザーにかかる負担は大きい。その過重を正当化する命題を明確に打ち出し、いかに浸透させるかがポイントとなる。そう考えれば、最初に述べたビジョンの設定がどれほど大事であるか、という結論に行き着くのではないだろうか。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -