連載
» 2002年10月26日 12時00分 UPDATE

外部コンサルテーションの活用で実現:マネックス証券株式会社 ユーザーエクスペリエンス重視のサイト改造

オンライン証券会社として確たる地位を築いてきたマネックス証券株式会社は、Webサイトリニューアルに当たって、外部のコンサルテーションを採用し、「ユーザーエクスペリエンス・フロー」の考え方を取り入れ、これまであまり証券会社と縁がなかった新規ユーザーの獲得に力を注ぐ

[松本すみ子,@IT]

課題──事業の進展とともに、サイト構造が複雑化

 企業におけるWebサイトは、事業の進展、商品やサービスの追加・変更など、企業活動が活発であればあるほど、刻々と変化していく。枝分かれした小枝が幹に成長、さらに枝分かれし、それらが重なり合い入り組んで、構造は複雑になっていく。いずれ、どこかで整理する必要が出てくるのは、どのサイトにも共通することだろう。

マネックス証券株式会社 インターネットサービス部長 堀田孝夫氏 マネックス証券株式会社 インターネットサービス部長 堀田孝夫氏

 マネックス証券の場合、さらにネット専業証券としての課題も加わる。オンライン証券会社である同社にとっては、Webは事実上唯一の窓口。1999年10月、証券手数料の自由化に合わせ、ネットベンチャーとして華々しくスタートしてから2年、スピード感を重視し、新たなサービスを開発・提供し続けてきたが、コンテンツを次々と積み上げた結果、「当初は、シンプルで分かりやすく作ったはずのサイトが、まったく使い勝手が悪いものになってしまった」(インターネットサービス・堀田孝夫部長)という。

 マネックス証券のユーザーは、20万人弱(2001年末)。もともと利用していたユーザーは、さほど問題にしていないようだが、新規ユーザーには整備されていないという印象を持たれるようになっていた。こうした声はコールセンターのオペレーター、サービス部門からも上がってきていた。

第三者の目による客観的なアドバイス

 マネックス証券では、それまで、サイトの設計・制作ともにすべて内部処理で対応してきた。しかし、内部制作ならではの問題点も生まれていた。それは、忙しさに追われ、全体を見渡し、サイトコンセプトや将来のあるべき姿を考える余裕や時間が作れないこと。現在、インターネットサービスの担当者は3名。この体制では、最新情報やお知らせなどの日々の更新作業を賄うのが精いっぱいだったのだ。

 そこでその場限りの対応から、長期的視野に立った計画作り、活用方法などにじっくり取り組む体制が求められていた。時間的余裕を生み出すことはもちろん、その方向へ後押ししてくれるようなサポート体制が欲しかったのだという。

 また内部制作の場合、ユーザーの視点を意識はしているものの、どうしても社内の声に影響される。しかし、他社と比較しつつサイトを見ているユーザーの率直な声を反映させるためにも、リニューアルに当たっては、第三者としての客観的な目が必要なのではないかという考えもあった。

 こうした課題を念頭に、2001年末からリニューアルが検討され始めた。ここで同社初めての試みとして外部コンサルタントの導入も検討され、数社の候補企業の中から選ばれたのは、ネットイヤーグループだった。同社は、インターネットに関するビジネス戦略、ユーザー エクスペリエンスの設計、ソリューション開発、アプリケーション開発で、幅広いネットコンサル事業を展開している。

 選定の際、ネットイヤーグループは、もともと金融業界での評価が高く、実績も多く持っていたが、何より新しいユーザー層獲得のためには、金融業界以外の徹底した外部の目、新規ユーザーの目を活用すべきという判断がされたという。

想定ユーザーをセグメントし、ポイント訴求する

 重要なのは、サイトコンセプトの明確化である。まず、目指すのは新規ユーザーの獲得であった。

 マネックス証券は、個人ユーザーに幅広い金融サービスを提供するということをコンセプトに創業された会社だ。間接金融から直接金融へのシフトが今後確実に進展するという見通しを背景に、株式のオンライン取引以外の金融サービスの提供を視野に入れている。

 そこで、それまで銀行しか付き合ったことのないような、純粋な新規ユーザーを掘り起こすこと、株のトレーディング以外の興味をもって訪れた人にも、毎日使える身近な生活口座としてマネックス証券のサービスを認識してもらうこと。これが今回のリニューアルの最大のテーマとなる。そのために、マネックス証券のWebサイトはどうあるべきか、どうあらねばならないか、その議論が約2カ月にわたって展開された。

 ネットイヤーグループの提案は「ユーザーエクスペリエンス・フロー」。つまり、サイトを訪問するユーザー1人1人にとって一連の行動(経験)を快適に行えるよう、適切に誘導が行われるユーザーの視点に立ったサイト構造を作り上げることである。

 サイト内部の個々の機能がいかに優れていても、入り口にたくさんのメニューが並び、どこを見ていいか分からなければ、ユーザーは二度とアクセスしない。オンライン証券の場合、店舗窓口と違って対話をしながら誘導を行うことが難しいので、分かりやすく情報がカテゴライズされているかどうか、どういう構成にしたら効果的かがカギとなる。

 快適なユーザー体験といっても、現実にはさまざまなタイプのユーザーが存在するので、インターネットの利用頻度、トレーディング経験の有無、年齢、性別、ライフスタイルという切り口から、いくつかのモデルユーザーを設定している。最終的には、特にプライオリティの高い、重点を置くべき5つのセグメントに落し込んだ。「モデルユーザーを設定したのは、具体的なイメージがあると、その人に提供すべき体験というものが考えやすくなる」(堀田部長)からだ。

1. 株に興味は無いけれど…
  これまで株取引をしたことがない人
2. オンライントレードって…
  新しいことへの好奇心が強く、チャレンジ精神の旺盛なユーザ
3. 時代の動きを見ていると…
  メディアから流れてくるペイオフなどの金融情報に関心が高く、何か行動を起こしたいと思っている人
4. 資産は自分で増やしたいけど…
  株や投資に関心が高く、具体的に証券会社を探し始めている人
5. 投資経験はあるけれど…
  リアルな取引よりも、オンライントレーディングの便利さを試したいと思っている人
マネックス証券が設定した5つのユーザーセグメント

 この5つのモデルユーザーに対して、提供するべき体験は何か、具体的には、どんなコピーで訴求し、どのコンテンツへ誘導するべきか、といったことを考えていった。コピーは金融業らしさを抑え、モデルユーザーに語り掛ける口調を意識している。

 マネックス証券のトップページでは、各セグメントに合わせたコンテンツページにリンクされているFLASH上にマウスポインタを当てると、それぞれのタイプに合わせたコピーが表示される。それによって、これが自分に近いと感じてもらい、自然にコンテンツページに誘導する仕組みである。

 各コンテンツページは、セグメントに合わせてカスタマイズされている。例えば、「株に興味は無いけれど…」から入っていくと、クレジットカードや投資信託に関するコンテンツページへの入り口は用意されているが、株式投資の説明コンテンツは排除されている。もちろん、各セグメントで共通のコンテンツもあるが、ユーザーにとっては自分に不要なメニューは表示されないようになっている。

 堀田部長は「株に興味がなくても、新聞などでオンライントレードに興味を持ったり、弊社社長・松本の発言をどこかで知って面白いと感じ、ふらっと入ってきた人にも訴え掛けられる内容が欲しかった。また、すぐに株取引はしなくても、いままでの銀行や郵便貯金口座の代わりに使える機能があるということを訴えたかった。極端なことを言えば、クレジットカードの申し込みだけでもいい」と語る。

口座開設後のフォロー・サイト構築が、次の課題

リニューアルされたマネックス証券のトップページ リニューアルされたマネックス証券のトップページ

 リニューアルオープンは、7月13日。熱狂的なファンが多いことで知られるマネックス証券の既存ユーザーからは、おおむね好意的に受け止められているようだ。これまでに寄せられた具体的要望としては、色合いをはっきりさせて、もっと視覚的に訴えてはどうかという意見が聞かれる程度だという。新規ユーザーの獲得を目指したサイト構築という点では、市場環境が低迷しているとはいえ成功したとみていいだろう。しかし、目指すのは市場回復局面における新規ユーザーのマジョリティ獲得であり、実際の効果が表れるのは、これからというところだ。

 堀田部長は今後、サイト・アクセスのリアルタイム分析もできれば行って行きたいと語る。さらに既存ユーザーに対するコンテンツの提供、口座開設後のフォロー・コンテンツを充実なども課題だという。こちらは実際のトレーディングが関係してくるので、売買上障害があったり、投資情報が正確に伝わらなかったりといった問題があると、大きなクレームとなり信用にもつながりかねないため、より慎重に設計する必要がある。また、新規ユーザー向けのページとは構成も表現も異なるため、この部分は今回のリニューアルとは別のコンセプトが必要になりそうだ。

 現在、株価は低迷中。そのため、当初想定したシナリオどおりには行っていないのが現状だ。株価が底を打って、市場が国民に広く開かれ、多くの人たちが銀行や郵便局以外の金融取引に興味を持ち始めたとき、いかにこのサイトが活躍しているか、新規ユーザーを引き付けることができているかを早く見てみたい──それが担当者の偽らざる心境のようだ。

Corporate Profile

マネックス証券株式会社

所在地 :東京都千代田区丸の内1-11-1 パシフィックセンチュリープレイス丸の内19F

設立:1999年4月5日

資本金:61億5506万1000円

代表者:松本 大(代表取締役社長CEO)

URL:http://www.monex.co.jp/


Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -