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» 2003年01月28日 12時00分 UPDATE

特集:営業支援ツール:営業力を強化するITとプロセス改革とは?

営業支援ツールといえば、SFA(Sales Force Automation)が挙げられる。多くのSFAツールは、商談の進捗管理や顧客情報共有にポイントを置くが、営業革新のためには“営業プロセス改善”が欠かせない。今回はそんな営業プロセスを可視化し、プロセスを改革するトリガを提示するツールを紹介する

[生井 俊,@IT]

従来のSFAの問題とは

r3soh01.jpg ソフトブレーン 宋文洲社長

 物の売れない時代に、いかに物を売るか。そこにフォーカスするツールとして、一定の市場を築いているのがSFAである。SFAの機能はほかのITツールと同様、豊富にある。顧客データベースを持ち、見積もり作成から受注へと至る営業担当者の活動をカバーするひな型を持ち、クレーム情報や商品情報がほかのサーバとリンクする形で入手できる。SFAの全体像の概略はこういう形だろう。 だが、「eセールスマネージャー」を販売するソフトブレーンの宋文洲社長は、「SFAのきちんとした定義はない。グループウェアをSFAといったり、販売管理システムをSFAといっている」と指摘する。

 市場にはさまざまな製品があり、機能も豊富だ。だが、何をもってSFAツールと呼ぶのか──売る側も買う側も特に決まったものはないというのが現状だ。ただし、SFA製品の傾向は2つあると宋社長はいう。傾向の第1は顧客情報の共有であり、傾向の第2は営業活動の効率化である。第1の傾向は、CRMにも共通している。また、第2の傾向はSFA製品の目的そのものだといえる。

 これらの傾向は歓迎すべきものであって、問題をはらんでいるようには見えない。情報の共有化は、クライアント/サーバ・システムが普及し始め、企業内で社員1人にパソコンを1台ずつ持たせようという1990年代前半からのスローガンだ。また、業務の効率化は、ビジネス活動にあっては疑う余地のない効果だ。

 しかし、前出の宋社長は、どちらの傾向も営業の強化に役立っていないと主張する。情報の共有化という場合、その情報はドキュメントを指す。ドキュメントは書き手の主観が入り、現実(例えば、商談の進ちょく度)を正確に反映しない。そのため、組織として次にどう行動すべきかの手掛かりに結び付かない。一方、業務の効率化といっても、手書きで書類を作成するよりキーボードのほうが速いというトークでは、「それでどれだけ営業力を強化できるのか」という問いに対して説得力のある答えとなっていない。「人を増やさず、残業時間を増やさず、いかに売り上げを大きくするか。そのシナリオが書けない限り、効率化はできない」と宋社長は語る。営業という業務を改革していく。それができてこそ効率化が実現できるというわけだ。

営業のシナリオ作成を支援

 同社のeセールスマネージャーのコンセプトは、いかに効果的な営業プロセスを構築するか、そのためのシナリオをどう描くかという営業戦略の立案・改革を支援することにある。そのために、重視しているのが情報の可視化だ。情報の可視化によって、営業プロセスを局面ごとに測定することが可能となる。測定ができれば、どこにボトルネックがあるかが見える。ボトルネックが見えれば、プロセス改革が実行できる。営業プロセスの設計・デザインを行うべき、営業の責任者のためのツールなのである。

 eセールスマネージャーも、情報の活用を否定しているわけではない。eセールスマネージャーではエンドユーザー(営業担当者など)が入力すべき情報を、企業(営業管理者など)側で設定する。その設定は、開発や企画、営業、保守という業務の種類と、それぞれの業務内容(プロセス)に応じて設定する仕組みだ。

 営業でいえば、最初の引き合い、訪問、デモンストレーション、提案、価格交渉、成約、納入というプロセスごとにどういう情報が必要かを設定する。個々のプロセスでは求められる指標(目標)が異なる。飛び込み営業ならば訪問先の数かもしれず、コンサルティング営業ならば相手への提案の数や質かもしれない。プロセスごとに設定する項目は、商談におけるキモに相当する。どこでどういうキモを入れるかは、どこで何を見るべきかという指標を営業プロセスに組み込むことを意味する。

 使い勝手としては、個々の営業担当者にとっては、報告フォームができていることが重要だという。営業担当の社員は、PDAや携帯電話のメニュー画面からプルダウンで、個々の商談ごとに該当するプロセス(見積もり作成か納入かなど)を引き張り出し、コメントを入れる。コメントは文章だが、プロセスごとに設定された項目は進ちょく度を測るインジケータとして機能するから、上長(社長や営業部長)は、商談の進ちょく度合いを知ることができるわけである。

 そして、設定した指標に対して十分なパフォーマンスが得られなかった場合、その営業担当者の努力・能力不足なのか、指標(目標)自体が間違っているのかなどを、 企業(営業管理者など)側が再検討し、プロセス改善につなげていく。この“プロセス改善のプロセス”こそが重要なのだという。

 eセールスマネージャーの特徴は、このプロセス設計がお仕着せでなく、企業ごとに設定するということだ。その設計や変更に、「テーマと時間がかからないのが売り」(宋社長)だという。だからまず、自社の現実の営業プロセスを可視化することからスタートし、そこで見えた問題点、改革すべき点を常に改革するというアプローチが可能なのだ。その点で、ベスト・プラクティスをモデルとするSFA製品とコンセプトがまったく異なる。しかも、導入企業の多くは、「どこをどう変えればいいか、自分で気付く」(同)のだという。

 ベスト・プラクティスの提供というコンセプトで開発されたSFA製品は多い。「最良の」と思われる業務ルールを企業文化や社員の性質が異なる企業に当てはめ、社員を従わせるという発想である。だが、そのやり方では、よほどシステムに使用するメリットがない限り、社員はついてこない。まして、入力する情報が多すぎれば、社員にとっては労多くして益の少ないものとなり、使われないシステムになりかねない。

 社員にとっては操作が簡単なこと、そして、経営者層や上司にとっては、営業組織全体の力を強化する道筋が見えること。そうした条件を持つツールが望まれる。そして、営業力を強化するツールとは、“管理するため”のものではなく、上に立つリーダー(シナリオを考える人)が“効果的な営業プロセスを作り出していくため”のものなのだ。

 現代は、市場も顧客のニーズも常に変化していく。自社の製品やサービスも変化するだろう。自社と市場の変化に対応しつつ、最適な営業シナリオを常に作り続けていく。そうした発想のツールが必要なのだと宋社長は強調する。

見積もりを起点にプロセスを効率化

 eセールスマネージャーは、プロセス改革を志向した製品だが一方、それとは別の視点で、営業プロセスの効率化を図る製品がある。その視点とは、見積もりを起点として、それ以降の営業活動に伴う作業の効率化を図ろうというものである。その代表的な製品がファイヤー・ポンド・ジャパンの「SalesPerformer」だ。このSalesPerformerは、LTO(Lead To Order:引き合いから受注まで)のプロセスを最適化することにフォーカスしている。特に、構成する部品や要素が多く複雑な製品を提案する営業プロセスの効率化に力を発揮する。こちらも、顧客情報などの情報共有に重きを置いた製品ではない。

r3lto.gif ファイヤー・ポンドのLTO(Lead To Order)のコンセプト

 同社製品は、自社の製品・サービスの製品体系や価格体系が複雑な場合に、その情報を一元管理するツールといえよう。営業部員にとっては、見積もりを切り口にして営業の標準化、さらには営業・生産・納品までの全プロセスの短縮を図ることがメリットとなる。

 同社の製品のコアとなるのは、「SalesPerformer Configurator」である。特に効果を発揮するのは、顧客の個別ニーズに基づいて、多様な要素・部品を選択して製品としてまとめ上げ、納品する営業プロセスの効率化だ。同社のユーザーを例に挙げると、ヘリコプター・メーカー、エンジン・メーカー、金属加工機メーカー、保険会社などである。これらの会社の製品は、ユーザーが選択する項目が多岐にわたっている。しかも、ある部品を選択したら、あるいはある部品の位置を選択したら、別の部品は使用できないなど、仕様上、複雑なルールを持つのが特徴だ。

 こうした複雑な構成を持つ製品を扱う営業担当者にとって、大きな負荷となるのは見積もり作成である。顧客の選択が顧客のニーズであるとしても、それが生産可能かどうか。もしかしたら、生産できない選択をしているかもしれない。選択に問題がなくても、その構成の製品の価格・納期をはじき出すために労力が掛かる。それを解決するのが、ファイヤー・ポンド製品のコンフィギュレーション・エンジンであるSales Performer Configuratorである。

 このConfiguratorは、いわば商品組み合わせエンジンであり、Configuratorを組み込んだ「Field SalesPerformer」は営業担当者の見積もり作成の効率化を主眼にした製品である。営業担当者のパソコン画面に、製品を構成する部品やカラーが表示され、営業担当者は顧客のニーズに応じてそれをチェックし、選択していく。その際、副次的に選択する項目があればそれが表示され、それをチェックする。これを繰り返して終了に至れば、背後でその商品価格を計算し、見積もりが出来上がるというプロセスである。産業用エンジンの営業支援システムとしてField SalesPerformerを導入したいすゞでは、受注から納品までに3カ月を要していたが、Field SalesPerformer導入後は、3週間に短縮した。ファイヤー・ポンドでは、LTOの短縮を重視しているが、いすゞの事例はまさに、「営業から生産、納品に至る全体のプロセスを改善する」(ファイヤー・ポンド・ジャパンのシニアコンサルタント、成田巧氏)という同社の製品コンセプトが効果をもたらしたといえる。

 以上は、営業担当者がSales Performer Configuratorを利用するケースだが、Webサイトに用意しておき、顧客が自分で選択項目を選択し、見積もりを得るという使い方もできる。Web用製品「Web SalesPerformer」は、そのべースとしてやはりConfiguratorが機能する。実際、ファイヤー・ポンド製品を導入した加工工作機械メーカーのアマダでは、顧客がインターネットを経由して自分のパソコン画面に同社の「バーチャル展示場」で製品が選択できるようにしている。顧客が商品を選択するため同社の製品を利用するという使い方は、保険会社でも行われている。画面の質問に答えていくと、その人向けの商品が提示されるという仕組みだ。

 見積もり作成を起点とする作業プロセスの効率化は、複雑な商品を対象とする営業担当者の仕事を向上させるのだが、ほかの製品と組み合わせて利用することで、営業プロセスを標準化すること、さらには営業・生産・納品までの全プロセスの短縮を図ることが可能になるという。

 それを可能にするのは、「SalesPerformer Opportunity Manager」である。この製品は、商談管理や顧客管理、販売予測などの機能を持つもので、商談を一元管理する。Opportunity Managerを活用することで販売プロセスを革新していくというアプローチを取ることができる。前出の成田氏は、「昨年度の営業活動のターゲット、販売プロセス、ロストした案件を分析して、標準的なプロセスを組んでいく ことが可能」と語る。

 Configuratorは、複雑な商品の見積もりを迅速にすることで営業から納品までのプロセスを短縮する。さらに、Opportunity Managerが営業プロセスの標準化を支援するわけである。


 営業を強化するためには、まず個々の営業担当者の行動が顧客のニーズにフィットしなければならない。そして、それが組織として定着することが欠かせない。

 それこそが営業プロセスの改革であり、営業プロセスを標準化するということだ。ここで取り上げた製品は、着眼点(ツールを利用する入り口)こそ異なるが、従来の商談入力・商談管理の発想ではなく、営業プロセスの革新を目指したものである。単なる現状の業務の効率化にとどまらず、営業プロセスを革新していくための視点を提供すること。営業革新のために求められるのはそういうツールではないだろうか。

Profile

小林 秀雄(こばやし ひでお)

東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。雑誌「月刊コンピュートピア」編集長を経て、現在フリー。企業と情報技術のかかわりを主要テーマに取材・執筆。著書に、「今日からできるナレッジマネジメント」「図解よくわかるエクストラネット」(ともに日刊工業新聞社)、「日本版eマーケットプレイス活用法」「IT経営の時代とSEイノベーション」(コンピュータ・エージ社)、「図解よくわかるEIP入門」(共著、日本能率協会マネジメントセンター)、「50のキーワードで学ぶ情報システムの提案営業の実際」(日経BP社刊)など


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