RFPの作成方法が分からない!システム部門Q&A(6)(2/3 ページ)

» 2004年08月11日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]

ところがRFPの作成は難しい

 このように、システム開発を成功させるには、適切なRFPを作成することが大切ですが、RFPの作成はかなり難しい要因があります。まして情報化の成熟度が未熟なときは、次のような当惑があります。

1.実務ですら何をするべきかが分からない

 「情報化に当たって、目的を明確にすることが重要だ」というが、究極的な目的は明確だ。「もうけたい」のだ。もっと詳細にというのであれば、「今年中に期間損益をプラスにするために○○億円の利益、3年度には累積赤字を解消するために○○億円の利益」と数値的に示すことすらできる。でも、どうしたらもうかるかが分からないのだ(分かっていることは当然これまでにやってきた)。まして、どのようなシステムにすればよいのかなどは見当もつかない。

 ともかく販売の増加がもうけることに直結するだろうから「販売システム一式」としたのだ。ベンダは「ソリューション」を売り物にしているのだから、情報化でもうける算段を持っているのだろう……。


 これはあまりにも極端な例ですが、これまで経営戦略や情報化構想などに関心を持っていなかった企業では、これに近い状況のようです。このような状況では、適切な情報化は期待できません。情報化検討以前に経営戦略の策定をする必要があります。経営戦略の策定やそれを受けた情報化戦略の策定にはいくつかの方法がありますが、その説明には膨大な誌面を要しますので、別の機会に譲ります。

2.どのようなシステムにすればよいのか分からない

 当社は部品メーカーである。利益を上げるには、顧客の納期短縮の要求に応えて欠品を防止すること、コストダウンのために在庫の削減が重要である。それには需要が予測できればよい。ここまでは分かるのだが、需要予測をするためにどのような情報システムが必要なのか分からない……。


 コンピュータで需要予測ができればよいのですが、それを直接に解決する情報システムは現実には存在しません。そもそも需要予測をするには、需要を左右する要因は何か、その要因に関連する先行情報は何か(数値データだけではなない)などが分かっていなければなりません。需要予測のためのソフトもありますが、その多くは過去の実績を統計的な手法を用いて予測するものです。そのような単純な手段が現実に役立つことはまれでしょう。

 それで、需要予測に直接応えるのではなく、それの前提の1つとして「受注状況や在庫を正確に把握する」ための受注システムや在庫システムを構築する必要があります。このように、ステップ・バイ・ステップで情報化を進める総合的な計画を考えることが肝要なのです。

3.どのように説明すれば良いのか分からない

 受注システムや在庫システムを構築することになった。現状の受注業務やそれの望ましい形態も検討した。しかし、それには受注の仕方、在庫の確認、伝票のデザイン、過去の受注の分析など、いろいろな改善提案があり、それをどうまとめるのか分からない。どのような情報システムが欲しいのかが分かったが、情報技術に弱いので、どう説明すればベンダが理解できるのか分からない。ベンダが求める事項を聞き出してほしい。それで「委細面談」としたのだ……。


 このような要件を調査分析して適切なシステム仕様を設計することは、情報技術の中でも最も高度な技術ですし、豊富な経験を要求されます。情報システム部門すら存在しない企業に、このような能力を持つ人材がいるとは思えません。

 しかも、先の「RFP見本」のように、DFDやERモデルなども資料として添付するようにいわれています。

 これらの資料があれば、システム開発の上流工程の大部分が完成したようなものですから、ベンダは容易に理解できますし、システム開発を円滑に行うのに非常に役立ちます。しかし、これは情報システム構築技術でも上級者が担当する分野です。それができる人材がいる企業は限られています。

4.どんな条件を提示するのかが分からない

 例えば「画面が出るまでの時間」が重要だということは、いわれればなるほどと思うが、事前にそんなことまで気付かない。後になって文句をいったら「RFPで要求されていないから……」と逃げられては困る。また、応答時間は短い方が良いのに決まっているから適当に1秒と書いたら、それを実現するために途方もない費用を請求されるのも困る……。


 情報技術の経験や常識がないと、「5 保証要件」に何を要件にする必要があるのか、どのレベルにしてよいかを示すことは困難ですし、「4 開発に関する条件」や「6 契約事項」に何を挙げればよいのか当惑します。しかも、それらが明確になっていないために、後になって大きな問題になることが多いのです。それをチェックするために、上記の「RFP見本」のようなものを参照すること、コンサルタントの協力を得ることが必要です。

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