できるプロジェクトマネージャのノウハウとは?有能プロジェクトマネージャ育成術(2)(2/3 ページ)

» 2004年09月07日 12時00分 公開
[大上建(株式会社プライド),@IT]

抽出されたG氏のPMノウハウ

コンサルタント 「Gさんは、このような協力会社リーダーとの対話を励行されていますが、貴社の一般PMの皆さんはどうされているのでしょうか」

G氏 「多くのPMは、このような対話はしていないと思います。定期的に会議はしていると思いますが、ひどい場合はメールだけで済ませようとしているようです」

コンサルタント 「会議やメールだけではどうしていけないのですか」

G氏 「直接会わないと、際どいことはいえないし、聞くこともできませんよね。会議では周囲に人がいますから、能力問題など口にできません。またメールでは普通に伝えたつもりでも感情的にヒートアップしてしまうことがありますよね。メールだけでOKと思っているPMは、そもそも事務連絡しかする必要はないと考えているのかもしれません」

コンサルタント 「Gさんはそれに比べてどんなことに気を付けていらっしゃるのですか」

G氏 「私はプロジェクト遂行中の、自社と協力会社との間の貸し借りに気を付けています。特に皆の前では公にできないことで、相手の注文を聞いてあげたり、こちらの注文を聞いてもらったりします」

コンサルタント 「ということは、協力会社リーダーとの直接対話の結果を、相互に改善するということですね」

G氏 「ええ、そうです。能力問題などの際どい話は互いに相手から聞いたといわずに改善するようにしていますし、相手にもそれを求めます」

コンサルタント 「なるほど、つまり『人のレベルや体制に関する問題は3人以上の人がいるフォーマルな場では、よほど問題が大きくなるまで指摘することがはばかられる。だから協力会社リーダーと1対1の対話の場を持ち、そこで積極的にこのような問題を相互に指摘し、対応をすることで早期に問題をつぶし、一般のPMよりも高い生産性を上げている』わけですね」

G氏 「ええ、そのとおりです」

コンサルタント 「論理はよく分かりました。しかし論理が分かったからといって誰でもできるわけではなさそうですね。例えば貸し借りの状態を認識し続けることとか、どこまでいえるか、そもそも相互に指摘できる関係をどのように作るかなどについて教えてください」

(インタビューは続く、以下省略)

 このインタビューによって抽出されたPMノウハウは次のものである。

PMノウハウ:協力会社責任者と1対1の対話を持つ
概要 協力会社責任者と1対1の対話を定期的に持つことで、公的な場では発言がはばかられる、人のレベルや体制に関する問題を、相互に指摘し合う。これによりフォーマルな場だけでは得られない問題に関する情報を早期に得ることができ、対応が可能になる
背景と価値 人のレベルに関する問題や体制に関する問題は、フォーマルな会議の場や3人以上の場では、よほどその問題が大きくならない限り、指摘することがはばかられる問題である。一般のPMはそれが理由となり、相手に対して指摘もしなければ、相手からの指摘を求めることもしない。そのため、問題の認識が遅れることになり、手を打たなくてはならない時点では、すでに手遅れか次元の異なる対策を求められることになりがちである。本PMノウハウはこのリスクを防ぐ価値がある
成功要因
(1) 互いに人のレベルや体制に関する問題、およびその影響と要望する対策を正しく伝える
(2) 1対1の場を作り、記録も残さない
技術・知識
(1) 人のレベルや体制に起因する問題が引き起こす影響について、正しく見通す技術
(2) 体制的な問題に関する対応策の知識
(3) 自社と協力会社リーダーとの間の「貸し借り」を管理する技術
プロセス
(1) プロジェクトの最初の段階から、協力会社リーダーと信頼関係を構築し、問題を相互に指摘し合うことの合意形成をしておく
(2) 顧客、自社、協力会社について、それぞれが持っている問題と体制上の余力を見極めておく
(3) 相手側の問題に関しては、問題を放置した場合の影響と、相手が受け入れられると考えられる要望を決め、それを相手に伝える
(4) 相手からも顧客や自社側の問題とそれを放置した場合の影響を積極的に聞き出し、対応可能な対策を考案して相手に提示する
(5) 相互に対策を約束し、持ち帰った後にそれを相手から聞いたとはいわずに対策を実行する

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