短期決戦を戦うシステム開発体制を作れ!企業システム戦略の基礎知識(2)(2/2 ページ)

» 2005年01月08日 12時00分 公開
[青島 弘幸,@IT]
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コンサルタントを活用する

 最近、コンサルタントに起因するシステム構築のトラブルを耳にするようになった。多額のコンサルティング費用を支払ったにもかかわらず、満足のいく成果が得られなかったといったような事例だ。果たしてシステム構築プロジェクトに彼らを参加させるべきか否か。

 確かに優秀なコンサルタントは存在する。さまざまな方法論や経営手法を理解し、その会社に合った戦略を提案し、最適なITの導入を実践してくれる人である。しかし、悲しいかな、そのようなコンサルタントは非常に数が少ないのも事実である。

 私は、コンサルタントは「信用はするが、信頼してはならない」ものであると思う。宮本武蔵は「神仏を尊しとすれど、頼むべからず」といったが、それに通ずるものがある。つまり主体性を持って、彼らの能力を信じて用いるのは良いが、何から何まで頼り切ってしまってはいけない。自社のことは、自分たちが一番よく知っているのだという自信を持つことだ。

 しかし、自分のことは、自分では見えないということもある。そのために、外側の目で見てもらうのだ。報告書の中身が単に現状を整理しただけのものや、視点がITツールありきの、お決まりの提案であるなら、金をドブに捨てることになる。

 そうならないためには、会社名やブランドに惑わされず、コンサルタントの「人物像」を見極める目が必要である。IT知識だけではなく純粋に人間としての懐の深さや人格などを含め、月額200?300万円も払って、この人間を雇えるか──そういった目で、真剣に人物評価をしてみる必要があるだろう。

 例えば、自社あるいは業界における例外的な業務など、極めて特殊な(ちょっと意地悪な)質問を2?3してみればよい。答え方は素直に知りませんという場合、あくまで最新の方法論ではこうなっていると説明する場合、ITツールからの視点で回答する場合など、さまざまだろう。

 しかし、その答えがどんなものであれ、最新の方法論やITツールが世界標準であり、ベストのやり方であるというような回答をする場合は要注意だ。彼らは、自社の方法論やITツールが最高であるということを徹底的に教育されているので、それらについて適切かつ詳細に回答できるのは、当たり前だ。

 そうでなく、例外的な業務に対する質問に対し、顧客の視点から的確な質問を2?3したうえで、検討を加えた自分なりの答えを出してくるコンサルタントは応用力があり業務スキルも懐が深いと考えられる。

 このようにして、あなたが見込んでチームに参加してもらったコンサルタントなら、必ず自社のために一生懸命に考え行動してくれる。また、そういった人物ならば、自社のメンバーとも良いチームワークを形成し、適切なメンバーシップを発揮してくれるはずである。

キーパーソンを専任させる

 システムを最小の投資で構築し素早く投資回収するためには、プロジェクト・チームのメンバーとして、対象業務および組織のキーパーソンを参画させることが必須である。キーパーソンとは、単に実務に詳しいだけでなく、その組織の中での発言力が強くリーダーシップを発揮できる人物である。彼らを当初から巻き込み、ビジョンなどを共有しておくことは、あらゆる断面において有効となる。

 逆にキーパーソンを当初から巻き込むことに失敗し、要件定義で重要な機能が抜け落ちたり、ムダな機能を搭載してしまったり、あるいは、いざ実用展開段階になってからキーパーソンがシステム利用に反対行動を起こしプロジェクトが頓挫してしまう、といったケースも少なくない。

 こういったキーパーソンは、必ずどんな組織にも存在するはずだが、見つけるのが難しい。日ごろから、現場に足を運んで、いろんな人からヒアリングしておかなければならない。もし、そういったキーパーソンを、あそこは誰、ここは誰と、すぐにピックアップできるようなら、それだけでもプロジェクトは成功に向かっている可能性が高い。それほどシステム戦略の成否に及ぼすキーパーソンの影響は大きい。

 システム構築プロジェクトに実務経験者の参加を要請した場合、その部門にとって戦力として影響のない人物がアサインされることがある。目先の部門利益を考えれば当然の結果でもある。およそキーパーソンとなる人物は、その部門において中心的な役割を担っており、常に忙しく、彼がいなくなれば、その部門の戦力はガタ落ちになることは目に見えている。

 特に社運をかけるような案件で失敗が許されないなら、当面の実務での戦力ダウンを承知で、キーパーソンをプロジェクトに専任させることを決断しなければならない。

 折衷案として兼任にして、業務部門に在籍させたまま、プロジェクトに参加させる例が見受けられるが、まずうまくいかない。先に述べたように、キーパーソンは、もともと超多忙である。そんな彼が業務部門に籍を置けば、プロジェクトよりも通常業務を優先することは火を見るより明らかである。しかも、業務部門に在籍するということは、当然、その業務部門に対しての業績で評価されるので、プロジェクトに身が入らないのは当然である。

 実際に優秀な業務部門のキーパーソンが参画しながら現業と兼任であったために、要件定義が遅れ、要件に不備があり、実用開始までに予定の半年以上も遅れ、予算も超過したプロジェクトがある。最小の投資で素早くシステム構築をし、早期に実用化し、最大の効果を生むには、キーパーソンを専任化してプロジェクトに参加させることが重要なのだ。その方が結果的にプロジェクトが長期化することも少なく、業務部門への影響も最小・最短に抑えることができる。

著者紹介

▼著者名 青島 弘幸(あおしま ひろゆき)

「企業システム戦略家」(企業システム戦略研究会代表)

日本システムアナリスト協会正会員、経済産業省認定 高度情報処理技術者(システムアナリスト、プロジェクトマネージャ、システム監査技術者)

大手製造業のシステム部門にて、20年以上、生産管理システムを中心に多数のシステム開発・保守を手掛けるとともに、システム開発標準策定、ファンクションポイント法による見積もり基準の策定、汎用ソフトウェア部品の開発など「最小の投資で最大の効果を得、会社を強くする」システム戦略の研究・実践に一貫して取り組んでいる。趣味は、乗馬、空手道、速読。

システム構築駆け込み寺」を運営している。

メールアドレス:hiroyuki_aoshima@mail.goo.ne.jp


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