素人IT部長に望むこと(2)システム部門Q&A(19)(2/3 ページ)

» 2005年03月09日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]

情報システム部門を業務システム部門に

 自分の行動だけではなく、情報システム部門を業務システム部門に変えていきましょう。それも情報システム部門の戦略部門化などではなく、身近なことから変えていきましょう。

  (1)案外、部下は他部門に詳しい   

 業務システムは、販売部門や経理部門などの部門システムではなく、全社システムとして考えることが重要です。ところが、そのような観点で全社の業務を把握している部門がないのですね。企業により任務が違うでしょうが、例えば人事部、経営部、総務部などは全社的な立場です。しかし、ヒト、カネ、モノの1つしか結局は管理していません。企画部は、とかく戦略的な分野に興味を持ち、日常業務の改革・改善などには関心がありません。

 このような全社の業務を把握(あまり十分とはいえないが)しているのが情報システム部門です。仕事で他部門の人と最も接触する回数が多いのは情報システム部門ですし、他部門との会合では仕事の仕方を変えるので、情報システムを何とかしようという内容です。よく「情報システム部門は利用部門の業務を知らない」と指摘されますが、それは「知らないと仕事ができない」から、あえていわれることであり、生産部門が販売契約を知らない、販売部門が財務諸表を読めないなどと比較すれば、はるかに他部門のことを知っている部門なのです。個別の部門のことについては、その部門の方が詳しいのは当然ですが、多くの部門のことを漏れなく知っているのです。しかも、情報システム部員は、他部門の管理者や担当者とも接触していますので、公式の情報だけでなく、人間関係など裏の情報も知っています。

 あなたは「自分は長くこの会社にいるので、部下よりも多くの部門のことをよく知っているし、仲間も多いので、多くの情報を得ている」と思うかもしれません。ところが、あなたの知らない若い人たちが技術作業の大部分を担当しているのです。環境の変化は急速ですし、多くの部門が情報化により仕事の仕方も変わっています。経営者やほかの部長たちも大同小異です。

 それに対して、部下は担当部門の現状を知っています。部下を集めて、それぞれ担当している他部門に関する知識を共有化すれば、かなりの全社業務が分かってきます。これは、全社的な業務を検討するのに役立ちますし、部下の「業務」システムへの認識も高まります。これも、ナレッジ・マネジメントがどうのこうのではなく、日常の雑談で話題にしたり、交代で担当部門の話をさせるようなことでよいのです。それが定着化すれば、それを整理してナレッジベースに登録するのは、部下が得意とする技術です。

   (2)データを活用させる    

 昔は、幹部候補生に経理部や主計局を経験させました。企業活動は何らかのカネの動きを伴うので、伝票を見れば各部門の動きが分かるし、予算編成をするには各部門の活動の評価が必要だからです。すなわち情報の集まるところに、将来の指導者を置いたのです。現在の情報が集まるところは情報システム部門です。しかもその情報はカネだけではなく、多様な情報が集められているのです。

 ぜひ、ハードやソフトではなくデータに関心を持ってください。いろいろと分析すれば、多様な問題の発見があります。部下にデータ加工の専門家がいるのですから、分析は容易ですし、あるいは対策検討の机上実験までしてくれるでしょう。

 そのような問題発見や課題解決案などを持って経営者や他部門の部長と話をすれば、あるいは大きな金脈が掘り当てられるかもしれません。企業に貢献するだけでなく、あなたの評価も高まるでしょう。このような事例が多くなれば、情報活用に関する評価も高まり、情報システム部門の地位も向上します。しかも、このような作業を部下に行わせる過程において、部下の能力の向上や、戦略的な人材の育成にもなります。

 このような活用での問題提起は、部外から来た新部長でないと気付きません。それに、部下はこのようなことを“したがって”いるのです。好意を持って応援してくれるでしょう。ところが、古だぬき部長が突然いい出したら裏の意図を見抜かれてしまいますし、加工技術にまで口出ししがちなので、部下は嫌がります。

  (3)計画的なローテーションを   

 他部門間の異動と比較すると(しなくても)情報システム部門のローテーションは、異常に少ないのです。情報システム部門が業務を知らないといわれますが、このような“異動の少なさ”が大きな原因です。ローテーションが少ないのは、他部門が「コンピュータ・バカは要らない」ということもあるでしょうが、その多くは、情報システム部門の管理者が、「彼(彼女)を転出させたら、その彼(彼女)が担当している情報システムがブラックボックスになってしまう」という理由で反対するからです。そして長期間にわたって閉じ込めるから、コンピュータ・バカになるのだともいえます。

 不謹慎ないい方ですが、彼(彼女)が会社を辞めても、会社はつぶれないでしょうし、おそらく担当していた情報システムもそれなりに稼働していくでしょう。むしろ、積極的に転出させることにより、先方の部門の情報活用能力が上がりますし、本人のキャリアパスの面でもプラスでしょう。また、転出させるから転入があるので、それにより情報システム部門の他部門に関する業務知識が向上するのです。さらには、転出が多いことから、自衛的に業務の文書化や標準化などの対策を考えるようになります。これは大きなメリットです。私は、全社的な情報化の成熟度を向上させるのには、ローテーションが最良の手段だと思っています。

 これも古だぬき部長になると、担当業務の重要性や戦力ダウンがよく分かるので、転出させる勇気がなくなります。あまり事情を知らない新部長の方が英断(勇み足?)しやすいのです。この英断が続けば、ほかの部門と同じ程度のローテーションになるでしょう。

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