BPMを使いこなすコツとは?一問一答式:BPM実践テクニック(5)(2/2 ページ)

» 2005年04月13日 12時00分 公開
[林計寿,アルティマスジャパン株式会社]
前のページへ 1|2       

システムの移行のコツとは?

 ツールを利用した新しい業務プロセスへの移行は、現行の仕組みとのリンケージを重点的に検討する必要があります。

 BPMツールはプロセス内を常にタスクが流れているので、「ツール導入フェイズの時期に、現状流れているタスクをどうコントロールするか」が大きなポイントになります。

 新しい組織や人事に合わせて、新システムを新年度から稼働──などの例がよく見られますが、組織そのものに慣れていない状況でプロセスの変更を行うと想定以上の負荷が掛かる可能性があります。

 こうしたことから、組織移動が少ない時期に短期的にプロセスをいったん止めて、大きなプロセスのタスクがすべて完了してから、BPMツールでのタスクを開始する──という方法がしばしば採用されます。実際の業務上は非常に大変かもしれませんが、移行時のトラブルを最小限に抑え、導入コストを下げることにもつながります。また、会社全体でのコンセンサスも必要になってくるのであらかじめ検討しておく必要があります。

 導入や全社展開などのフェイズでは、通常運用フェイズとは異なる要員アロケーションとコストの計画が必要です。現場への利用の説明や運用開始直後の問い合わせなどのサポート体制などをしっかり計画しておきましょう。これを忘れたり準備が不十分な場合は、「システムは出来上がったが運用できない」というようなケースに陥る可能性があります。

 最近では利用マニュアルがプロセス利用画面に埋め込んである製品が多くなりましたが、そういった機能が備わったツールを選定することも要員削減のポイントになるでしょう。

利用者の心理的壁を考慮

 最後に、利用する人の心理面について考えてみます。

 「BPMの仕組みそのものが“コンピュータ・システムによって自動化されたプロセス”と“人間系のプロセス”を融合させたサイクル活動」と考えた場合に、人間系のプロセスが十分に機能するようにしなければ、本当の意味での全体最適・効率化はできません。

 例えば稟議書のプロセスをシステムで、“「起案」→上司へ転送→「上司が承認」→さらに上長へ転送”といったように設定した場合に、「上司が承認」という行為はおそらく単純に「承認」というボタンを押すことだけで実現できるようになるでしょう。

 この「ボタンを押す」という行為が「職責に応じ、起案内容を、責任を持って承認する」ということを意味するのだということを、当の利用者が理解する(してもらう)必要があります。

 方法論は簡便になったとしても、そこにあるビジネスの意味は変わらないはずです。いいかげんな判断でボタンだけを押すようになった承認システムは、スピードアップには貢献しても本来のビジネス上のプロセスの意味を成さなくなります。

 また、逆に紙で回ってきた稟議書は机に滞留すると目に付くのですが、システム内の稟議データは必ず人間がアクセスしてチェックする仕組みを作っておかなければ、滞留してしまう可能性があります。もちろん多くのBPMツールは、滞留時のスキップ機能や差し戻し機能、滞留通知機能、進ちょく状況レポート機能など、効率的にプロセスが流れるようにするサポート機能を持っています。

 しかし使う側の人間が、「滞留させると会社としての機能が非効率的になり、他部署に迷惑を掛け、自分自身の評価も下げてしまう場合がある」という危険性をはらんでいることをしっかりと理解していなければなりません。

 少々ネガティブな表現になりましたが、現実のビジネスの世界では年齢層の高い役職者にITリテラシ不足を理由に「うまく運用できない」と答える人が多いことも事実です。これは、「新しいシステムは新しい仕事のプロセスであって、その仕組みを使うことで会社の利益(コストダウン)にこれだけつながる」という心理面からのインプットがしっかりなされていない企業に見られがちです。

 BPMをうまく回すコツ──それは仕組みをシステム的に自動化することは当たり前として、使う側の人間をしっかり教育・指導して運用していくことに重点を置くべきなのかもしれません。

profile

林 計寿(はやし かずとし)

神戸市生まれ。ビジネスマネジメントに関する造詣が深く、ITを有効的に活用するコンサルテーションを多業種の多くの企業に対して手掛ける。「ソフトウェア開発工程管理」に関する講演多数。IT・マネジメントなどに関する執筆活動を行う。日本システム監査人協会会員No.871。アルティマスジャパン株式会社CEO(?2004年9月)を経て現在、トラステッドソリューションズ株式会社。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ