ベトナムを徹底分析! 中国とどっちがいい?オフショア開発時代の「開発コーディネータ」(10)(2/3 ページ)

» 2005年06月30日 12時00分 公開
[幸地司(アイコーチ有限会社),@IT]

ベトナムの外国窓口〜vinasa

ALT 筆者ら視察団が宿泊したハノイの日航ホテル

 ベトナムの首都ハノイには、通称vinasa(Vietnam Software Association:ビナサ)と呼ばれるベトナムソフトウェア協会があります。われわれを出迎えてくれたキム氏はvinasaについて、こう説明してくれました。

 vinasaはベトナムIT業界の外国窓口として期待されており、中でも日本を重要視しています。ベトナム政府や日本政府からも支援を受けており、25名のベトナム人を日本に送り込んでいます。そのほかにも、ODA予算からIT大学設立を画策するなど、幅広く活動していますが、やはり最大の悩みは「日本語」の壁だといいます。

 キム氏によると、ベトナム企業は歴史が浅く、日本のパートナー探しに困っているほか、日本企業の「品質」というものを理解しているのですが、ベトナム側企業の実力が追い付かないのが現状だそうです。

ベトナム進出の勘所

 前出のvinasaは、自他共に認めるベトナムの公的なソフトウェア協会です。ところが、vinasaの窓口機能に頼らずに、独力で営業展開する独立系ベンダも少なくないようです。ベトナムに限ったことではないですが、海外で新規パートナーを選択する際には、公的機関からの紹介だけに頼らず、独立系、欧米系外資、日系企業など、さまざまな視点から情報を集めることが重要です。

 今回は触れませんでしたが、ベトナムの首都ハノイと経済の中心ホーチミンは、まったく別モノの町であるといえます。中国でも、北京と上海が「似て非なるもの」といわれますが、ベトナムにおけるハノイとホーチミンの差はさらに大きいと思った方がよいでしょう。



筆者が引かれたベトナムIT企業

 ベトナムでの取材の枠を広げてみると、意外なところで、きらりと光る宝石の原石が見付かりました。

ベトナム最大規模の日系企業「フジオーネ・テクノロジーズ」

 フジオーネ・テクノロジーズ・ベトナム(Fushione Technologies Vietnam Co., Ltd)は、ベトナムのハノイとホーチミンに開発拠点を持つ日系企業です。社員数160名は、日系企業ではベトナムで最大規模だそうです。

 親会社は、東京・新宿にあるフジオーネ・テクノ・ソリューションズ株式会社です。オフショア開発への取り組みは、中国が先だったようですが、1年半前にベトナムの開発拠点を立ち上げました。現地に駐在する日本人マネージャのN氏が筆者のメールマガジンの読者だったことが、この会社を訪問するきっかけとなりました。

オフショア開発拠点は『魔法の箱』ではない

ALT フジオーネとFPTの両社が入っているホーチミン市の「e-Townビル」

 5月27日には読者のN氏をはじめ、現地情報部門責任者を含む幹部数名の方から、温かい歓迎を受けました。正直なところ、ベトナムIT企業で、こんなにたくさんの日本人と会えるとは思いませんでした。われわれを招いてくれたN氏が開発部門を統括しているのですが、同氏の直属配下である5チームのリーダーはすべてベトナム人で占められているとのことです。

 フジオーネ・テクノロジーズ・ベトナムの日本人駐在員は管理部門で1名、技術部門で2名おり、さらに増える予定だそうです。それに対して現地のベトナム人は、プロジェクトリーダークラスが6名、プログラマーが35名です。社内のコミュニケーション言語は、公用語が日本語と英語で、ベトナム語は補完的に利用しているようですが、会社からの事務連絡はすべて日本語、現場におけるIT関連の会話や書類はすべて英語と、場面によって利用する言語を使い分けているようでした。

 開発実績には、欧州顧客向け会員管理システムや中東顧客向けの入札管理システムなどが挙げられており、現状ではまだ欧米の顧客が中心のようです。そこで、日本市場をどうとらえているかを聞いてみたところ、同社は日系企業でありながら、あえて欧州や中東向けの仕事で実績を残したそうです。

 その理由を聞いてみると、親会社であるフジオーネ・テクノ・ソリューションズは、中国にも開発拠点を持っているため、日本から自動的にベトナムに仕事が流れてくるわけではないのです。従って、日本は重要な市場だと認識しているようですが、「コスト削減」だけしか頭にないような会社とは取引しないと語っていました。また、「フジオーネ側から通訳を出すので、ベトナムで一緒に開発してくれる会社とお付き合いしたい。オフショア開発拠点は、丸投げして待てば良いだけの『魔法の箱』ではないのだ」と強調されていました。

 さらに今後の計画を聞いたところ、日本に招聘(しょうへい)しているベトナム人エンジニアの人数を現在の5名から20名程度に拡大するほか、ベトナム人留学生の採用やベトナム人エンジニアの採用促進(6月に新卒90名を採用)など、現地人の採用を強化する方針だそうです。そのほか、年内には日本人エンジニア6名を日本から招聘し、大学(日本語学科)でのプログラマ養成講座を開設したり、「CMMI レベル3」「ISO 9001」の取得やマイクロソフト・ゴールドパートナーシップの取得を予定しているそうです。

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