モデリングだけでは語れない業務分析の現場〜IT技術者のための戦略・業務分析入門〜事例で学ぶビジネスモデリング(5)(2/4 ページ)

» 2005年11月23日 12時00分 公開
[大川敏彦(シニアコンサルタン),ウルシステムズ]

第1章 現状業務分析

 プロジェクトは4月初めからスタートし、まずは現状業務分析の準備から着手した。結局、私もみんなよりは3週間遅れでこのプロジェクトに参加することになった。

 私は、まずそれまでの遅れを取り戻すべく、提案時からの参加メンバーに準備状況を聞いてみることにした。今回の現状業務分析の目的は、現場担当者から日ごろ感じている業務上の問題点をヒアリングすることだった。その際、限られた時間の中である程度網羅的に問題点を聞き出すために、業務フローをあらかじめ作成していって、それを確認しながらそれぞれの業務での問題点を抽出していこうと考えていた。

 これは、顧客PMとヒアリング計画について話し合っている際に、現場担当者は日常の業務で忙しいので、ヒアリングの時間は、極力短く効率的に行ってほしいというご要望を反映してのことである。このように業務分析でのヒアリング作業は、本業を別に持っている現場担当者を対象としているため、こうした配慮は重要である。現場の担当者にとっては、日常の業務が主であって、このプロジェクトにはその合間を縫ってご協力いただいているのだ。我々はそういった状況の中でヒアリングさせていただくということを忘れてはいけない。

 次に体制について確認してみた。今回の業務分析は、食品全般を対象としており、数種類のカテゴリに分かれていた。今回これらのカテゴリごとに弊社分析担当者を2名ずつ割り当て、それぞれが同時進行で分析作業を行うとのことである。この計画を聞いたとき、私は、同時並行作業は業務フローの記述内容や、課題の抽出の仕方などがチームによってバラついてしまい、後で整合性を取るのに苦労することを懸念した。従って、可能なら1カテゴリについてのヒアリングを先行して始め、ほかのカテゴリについてはそれをベースに展開していくような方法は取れないだろうかと提案してみた。ところが当初彼らも同じ提案を顧客にしてみたが、スケジュールの都合などから、顧客は全社一斉に分析することを強く望んでおり、これを覆すことは難しいとのことだった。

 このような準備を行った後、現場でのヒアリングを開始した。ヒアリングのスケジュールは1カテゴリに対して1回2時間、週3回程度いただいた。

 ヒアリングでは冒頭から問題が2つ発生した。我々が用意していった業務フローが顧客にとってしっくりいっていないようだった。私が担当した加工食品チームでも、状況は同じだった。初日のヒアリングが終了した後、各チームのリーダーで確認し合って、急きょ、ゼロベースで業務フローを作成しながらヒアリングを行うこととした。

 2つ目の問題は1日目のヒアリングが終了した夕方に発覚した。各チームのリーダーでその日のヒアリング内容を確認し合ってみると、それぞれのチームで業務フローの詳細さやヒアリング内容に大きな差が出てしまっていたのだ。あるチームで取り上げられた問題は、ほかのチームでは全く話題になっていなかったが、自分のチームでも確認したほうがよさそうだった。この問題は、6チーム同時進行でヒアリングしていくことによって起こっているのだが、1日のヒアリングが終了した後、各チームのリーダー間で確認会を開き、業務フローの内容や問題点について自分のチームで確認が必要なところは次のヒアリングの冒頭で確認することとした(これは当初は苦しんだが、後々考えてみると効果もあった。相互で問題点を確認し合うことで、問題点の取りこぼしが少なくなった)。

ALT 図2 それぞれのチームで業務フローの詳細さやヒアリング内容に大きな差が出てしまっていた

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