中国オフショア開発で発生する“ほうれんそう”とフィードバックの問題については、たくさんの意見が寄せられています。その一部を紹介します。
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大事な報告は、相手が分かったとレスポンスを返すまでいい続けることが大事です。
「メール報告だけでは駄目」を何度も教えて、翻訳が分かりづらいときは、必ず翻訳者と原文を書いた人の顔を見ながら話をするようにしています。
それでも、大事な問題を見落とすことがあります。
-----Original Message-----
経験の浅い20代前半の社員が主力の中国ベンダでは、「ほうれんそう」は常に深刻な経営課題です。
-----Original Message-----
大きな問題のうち、すごく細かい部分だけを説明するので、大した問題ではないと思っていたら、その細かい問題が引き起こすことが重大な問題で、担当者はそこまで分かっているのに、最後まで説明してくれなくて気付けなかった、とか^^;
特に翻訳が分かりにくい一文を読み飛ばしたときなどに限り、実はそこに重要な問題が書かれていたりするので、注意するようにしています。
後は、なるべく報告しづらい雰囲気を作らないことが重要なのかもしれないと思っています。
「この人に問題を報告すれば怒られる」と思われてしまうと、報告は上がってきませんが、「この人に相談すれば何とかなるかも」と思ってもらえれば、まずは報告してくるようになると思いますので。
(中国に駐在する日本人マネージャ)
-----Original Message-----
「しかる」と「怒る」の違いが難しいですね。筆者の中国人の友人から「日本人はみんなの前ですぐに怒るので嫌い」と聞いたことがあります。
さらに中国に駐在する日本人中間管理職からのコメントを紹介します。この方の上司は中国人役員、部下も中国人。すべての読者にとって有益なネタの宝庫でしょう。
-----Original Message-----
私自身、中国人の部下から報告を受けても、問題の本質を読み誤り、間違った判断をすることは多々あります。
これは相手に伝わるように報告をしないという相手側の問題もさることながら、正しく本質を読めないという、こちら側の問題もあると認識しています。
確かに大きな問題が発生したときには、きつねにつままれたみたいで、「どうしてこうなるまで気付けなかったのだろうか?」と自分に腹立ち、報告方法が悪かったせいにして片付けたい気持ちになります。
しかし、ふと冷静になったとき、次回の再発防止に向けて、相手の行動を変えてもらうよう働き掛けるだけでは足りない気がします。この問題については日々試行錯誤のさなかです。
-----Original Message-----
現状に不満を感じているものの、有効な対策が打てずに四苦八苦している様子がうかがえます。
-----Original Message-----
いま試している方法としては、昼食は毎日一緒に取って、堅苦しい場面以外で進ちょく報告をもらうようにしています。
業務としてはわざわざいう必要がないと思われていることでも、食事の場では気楽に周辺の情報も拾える感じです。
後は、小さなことでも紙に書くか、メールにして文字情報として記録しています。「いった、いわない」の水掛け論は日常なので、せめてもの防御策です。
しかし、完ぺきな対策などないため、新しい業務が発生するたびに「これは初めてのことだから失敗しても仕方がない」とある程度は割り切っています。
(中国に駐在する日本人中間管理職)
-----Original Message-----
ほかにも詳細なコメントが来ていますが、割愛させていただきます。
日本人駐在員が、中国人と会話するときには、
などの自衛策が欠かせません。知人の日本人マネージャは、みんな同じような苦い経験をしていて、その人が落ち込んでいると、
「君も仲間になったね。これで同じ視点で話せるよ」
と冗談ともなく話せるようになります。中国現地では、こうして互いのキズをなめ合う日本人であふれかえっているのです。
しかし、日本人駐在員だって、いつまでも落ち込んでばかりはいられません。中国オフショア開発では、はんらんする「舌足らずな」日本語をカバーするために、日ごろから「正確さ」を高める質問力の向上に余念がありません。
「順調です」
→「そう。順調にってどのくらい進んだの?」
→「どうやって計算したの? 根拠は?」
→「“できた”というのは、どうやって判断したの?」
→「○○さんは、それを見てOK出したの?」
「仕事が多過ぎる」
→「何と比べて?」
→「誰と比べて?」
「日本の仕様書はあいまい」
→「どこがあいまいなの?」
→「何が不足しているの?」
→「○○さんの意見は?」
「納期はだいたい1カ月くらいです」
→「納品物に含まれるものは?」
→「品質をチェックする人は誰?」
→「いつから作業に着手できますか?」
「わが社には日本語人材が豊富です」
→「具体的な人数は?」
→「どこと比べて豊富ですか?」
→「いますぐ稼働できる人は誰?」
「彼は優秀なブリッジSEです」
→正確さを高めるには、どんな質問が有効だろうか。
このような部分は、あなたも一緒に考えてみることが大切です。
幸地 司(こうち つかさ)
アイコーチ有限会社 代表取締役
沖縄生まれ。九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門 〜失敗しない対中交渉〜」や社長ブログの執筆を手がける傍ら、首都圏を中心にセミナー活動をこなす。
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