急激なデータの増加に対応するために計画的なストレージ環境の構築が間に合わず、さまざまなベンダのストレージ環境が混合してしまうケースも多いだろう。今回は、そのような、マルチベンダのストレージ環境を効率的・自動的に管理できるSAN管理ソフトウェアを紹介する。
今回は「SAN管理ソフトウェアによる生産性向上を目指す」と題して、マルチベンダのストレージ環境を効率的に管理するためのソフトウェアについて解説します。増え続けるデータとストレージを限られた人数のIT管理者で効率的に管理するには、IT管理者のルーチンワークを軽減し、より戦略的な業務に工数が割けるようにするための自動化ツールが必須です。すでに導入が始まっているSAN管理ソフトウェアの機能と、導入による効果について説明します。
ストレージシステムの運用においては、システムを構成する物理的なハードウェアやユーザー、アプリケーションが利用する論理的なボリューム、ハードウェアやソフトウェアの上に論理的に構築されるアクセスパスなど、さまざまなものを管理する必要があります。一般にSAN管理という場合、管理項目には下記のものが含まれます。
これら管理機能の多くは、ストレージハードウェアに付属するソフトウェア製品として提供されています。これがストレージ管理ソフトウェアです。またWindowsに添付されているLDM(Logical Disk Manager)のように、サーバOSの運用管理機能の一部として提供される場合もあります。ただし、特定のハードウェアを管理するストレージ管理ソフトウェアだけでは、SAN全体を管理することはできません。
SANはストレージの統合化・集約化によって、運用管理コストの低減に貢献します。しかし90年代の後半以降、SANの普及が進むにつれて新たな問題が発生してきました。ストレージ容量の爆発的な増加やデータ価値の増大により、運用管理コストはむしろ増加する傾向にあります。さらにSANに接続するデバイスの多様化やマルチベンダ化により、IT管理者の負荷は高まる一方です。
例えば、いままではA社のディスクアレイの機能と管理ソフトウェアについて習熟していればよかったのに、新しくB社のディスクアレイを追加導入するとなると、B社のディスクアレイの機能と管理ソフトウェアについても、学習する必要があります。
A社ストレージ製品専任のIT管理者と、B社製品ストレージ専任のIT管理者に役割分担できればいいでしょう。しかし、実際は少ない人数でサーバ管理とストレージ管理、さらにネットワーク管理やアプリケーション管理を担当しなければならず、IT管理者は複数の業務を兼務せざるを得ないのが実情です。また新人や他部門から異動してきた社員に、ストレージ管理のノウハウや、ストレージ管理ソフトウェアの使用方法を教育するための負担も大きくなっています。そのため、異なるベンダのストレージ装置を管理する場合でも共通した操作方法で利用できる、汎用的なSAN管理ソフトウェアが求められてきました。
SANの運用管理は、ネットワーク上のさまざまなストレージ装置やサーバを対象とします。もしも、あらゆるベンダのストレージ製品を1つのユーザーインターフェイスで設定・管理できる統合管理ソフトウェアがあれば、IT管理者の負担は大幅に軽減されるのではないでしょうか。その場合、IT管理者はマルチベンダ対応のSAN管理ソフトウェアの操作方法のみ習熟すればよく、その管理ソフトウェアを使用してストレージを運用監視すれば、効率も高まります。
これにより、ハードウェアベンダが自社のストレージを管理するために提供しているソフトウェアとは別に、マルチベンダのストレージを統合的に管理するためのソフトウェアがいくつかのベンダから提供され、急速に市場を広げています。
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