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» 2006年03月25日 12時00分 UPDATE

企業システム戦略の基礎知識(17):そもそも「企業システム」とは何か? (1/2)

長く続いた連載も今回でいよいよ最終回。ここでは、あらためて企業とは何か?という視点から、求められる情報システムを考えてみよう。

[青島 弘幸,@IT]

 最終回として、企業システム戦略を考えるうえにおいて「企業システム」とはいったい何か、その本質に迫ってみたい。ここでは、企業システムも、それ自体が1つの情報処理システムだととらえている。

 最近では、経営とIT(テクノロジ)の融合といわれてるが、経営そのものが、広義のIT(情報術)であり、ITは、単なるテクノロジ(道具)ではなく、勝つための企業活動(戦略行動)そのものであり、それは、孫子の兵法など、多くの兵書が物語っている。

 これは、私なりの「IT Doesn't Matter(もはやITに戦略的価値はない)」に対するアンチテーゼである。これも、1つのとらえ方として、皆さんの企業システム戦略の参考としていただければ幸いである。

企業システムの構成要素

 一般にシステムの主要な構成要素として、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークが存在する。企業システムの構成要素としてこれらに当たるものは、経営資源としてよくいわれるように「人、物、金」ではないだろうか。人には、組織構造が含まれ、物には、ビルや工場、機械設備、伝票帳票類などが含まれる。そして、これらのハードウェアを動かしているソフトウェアは、ビジョン、戦略、企業文化、業務標準、マニュアルなどである。ビジョンや経営戦略、企業文化はオペレーティング・ソフトウェア(OS)に当たり、各部門の業務標準やマニュアルなどがアプリケーション・ソフトウェアだ。そして、これらのハードウェアやソフトウェアをつないでいるネットワークが、FAXや電話、社内LAN、社内郵便などだ。

 これら企業システムを構成するハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどの基本構成をエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)という。経済産業省が策定した「業務・システム最適化計画(EA策定ガイドライン Ver. 1.1)」も、この基本構成要素を最適化するためのガイドラインであり、その基本構成は、ビジョンや経営戦略→業務体系→データ体系→アプリケーション体系→技術体系となっている。まず、ビジョンや経営戦略ありきのソフトウェア主導だ。

企業システムの機能と性能

 システムを「環境に対して入力→変換→出力という機能を持つ一定の仕組みである」と定義すれば、入力は、市場のニーズや資金、原材料、仕入れ品などであり、これらを変換し何らかの付加価値を付けて、商品やサービスとして出力する。また、付随的に資金や廃材、廃棄物なども出力する。企業システムは、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークという資源を使って、この機能を実行し、その性能を評価している。

 『能力構築競争──日本の自動車産業はなぜ強いのか』(中公新書)の中で「ものづくりとは、設計情報の板金など媒体への転写である」と定義されているように、製造業という企業システムにおいては、この入力→変換→出力という機能こそが「ものづくり」だ。そして性能が、変換効率だとすれば、設計情報を効率よく板金に転写し商品化できる企業システムが、性能が良いシステムだといえる。

【参考書籍】
・能力構築競争──日本の自動車産業はなぜ強いのか(藤本隆宏 著/中央公論新社/2003年6月)(藤本隆宏 著/中央公論新社/2003年6月)

 顧客満足度の高い企業は、ニーズを商品やサービスに効率よく変換できる機能と性能を持つ企業システムだ。環境面では、原材料から商品やサービスへの変換効率が高く、廃棄物などが少ない企業システムが環境に優しい。お金に着目して変換効率を評価しているのが損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書だ。企業システムの性能評価には、変換効率に焦点を当てた評価指標が望ましい。最近の企業会計でキャッシュフロー計算書が重要視されているのも、企業システムの性能を、キャッシュの変換効率という観点から評価できるためである。

「人、物、金」も情報

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 企業システムは「人、物、金」を資源とし、商品やサービスに変換するが、例えば「人」という資源の変換における役割は、ニーズを業務プロセスに従って、商品やサービスに変換していくことであると定義してみよう。すると「人」という資源の意味は、変換に必要なスキルや量という情報である。

 同様に「物」や「金」もすべて情報に置き換えることができる。設備能力という情報を持つ「機械設備」という資源、顧客満足やビジョンという情報を市場に伝達するための媒体としての商品やサービス、金額という情報を持つ「金」という資源。「金」などは、まさにコインや紙幣を直接扱うことは少なく、帳簿や情報システム上の情報そのものといえる。

 結局、企業システムが入力→変換→出力の過程で扱うすべての物は情報であり、企業システムは、情報処理システムそのものである。第1回で、ITの本質は「読み、書き、そろばん」だと説明したが、企業システムの本質も「読み、書き、そろばん」である。市場や顧客ニーズを読み(入力)、必要な「人、物、金」という情報を読み(入力)、それらを基にそろばんを弾いて計算し、付加価値という情報に変換し、商品やサービスという情報伝達媒体に書き込み市場や顧客に提供(出力)する。あるいは、入力情報を、商品やサービスに変換して市場に出力することで、利益という情報に変換する。企業システムの全体最適化とは、この情報処理システムの変換効率を最大化する最適化問題にほかならない。

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