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» 2006年07月14日 12時00分 UPDATE

5分で絶対に分かるITIL (6/6)

[伊藤 正博,@IT]
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5分 − 落とし穴にはまらないようにするには

 ITILを活用してITサービスを強化する際に一番考えていただきたいことは、ITILはプロセスごとに実装すべきではないということです。例えば「取りあえずインシデント管理だけをやる」という人が多いのですが、それだけでは効果が出ません。

 インシデント管理では、すでに述べたようにすべてのインシデントを記録することが基本です。漏れなく記録することで、将来起りうるインシデントのための貴重な情報となるだけでなく、IT運用担当部署の作業量を算定するのに役立ちます。

 しかし、インシデントを記録し情報を蓄積するだけでは、内容が十分に分析できていないため、インシデントの実質的な削減にはなりません。次のプロセスである問題管理において、類似障害にどのようなものがあり、どこまで類型化して対応できるのか、エスカレーションが必要なインシデントはどれくらいあるのかが分からなければ、インシデントの数を減らすことや、作業負荷の質的な査定ができないのです。

 インシデント管理、問題管理、変更管理、リリース管理、構成管理といったプロセス毎に実装するのではなく、そのプロセスの中の活動レベルまで踏み込んで活用すべきものをピックアップして下さい。そして自社なりに最低限のPDCAサイクル「1周目」が回せるようにすることを考えるべきです。

 また、ITILの取り組みに終わりはありません。「20××年○○月までに導入し終わらなければ」という人をたまに見かけますが、ITILは一般の開発プロジェクトとはまったく異なり、「カットオーバー」という言葉もありません。何らかの製品や手順をまとめて導入したとしても、それでやっとITILのPDCAサイクルを回していくためのスタート地点に立っただけなのだということを認識してください。

 ITILでは、プロセス(Process)、ピープル(People)、プロダクト(Product)の「3つのP」の重要性がよく指摘されます。どれが欠けても、大きな効果は期待できません。

 プロセスについては、人に頼っていたり、あいまいにされてきたりしたことを手順として確立し、それを実行していくことがITILの基本ですので、その重要性は自明といえます。また、ITILの活用に伴って、IT運用担当者やIT部門全体で業務内容や業務目標の変更が出てきます。すると、これに抵抗する人が必ず現れます。しかし、抵抗に屈していては、改善は望めません。「ピープル」はITILにとって非常に重要な要素です。

 そして、「ツール」は、人間の作業を効率化させるために、大いに活用できます。すでに運用管理ツールを導入している企業でも、ほとんどの場合、ツールの持っている機能の10%も使われていません。

 例えば、監視ツールからエラーメッセージが上がってきた場合にこれを自動的に記録し、「トラブルチケット」として登録、さらに連絡すべき担当者を自動的に割り当ててくれるといった機能は、多くの運用管理ツールに備わっています。ITILを活用しても、管理ツールのこうした機能を活用せずに手書きで処理するようなら、無駄な仕事が増えるだけで、かえって状況は悪化します。「プロセス、ピープルが80%、ツールは20%」といわれていますが、20%のツールは80%のプロセス、ピープルに大きく影響するということです。

 ITILですべてを解決できると思う人ほど落とし穴に陥りやすいものです。ITILに大きな投資をしたにもかかわらず、効果が上がらないという人は、もう一度立ち戻り、自社において何が問題点であるか、その問題をITILに書かれている活動を活用することでどれくらい解決できるか、具体的にどのプロセスのどの活動を組み合わせて実施すべきか、という道筋で考え直してみてください。このアプローチこそが「ITILを活用する」ということなのです。

 ITILはITサービス上の多くの問題・課題を改善するための攻略法を提示してくれます。ぜひ、ITILをバイブルとしてではなく、辞書・攻略本として活用してみてください。

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著者紹介

▼著者名 伊藤 正博

日本CA株式会社


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