中国ベンダには“嫌いだ”とはっきりいおう現地からお届け!中国オフショア最新事情(5)(3/3 ページ)

» 2006年11月21日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]
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論理的に相手を評価するより、感情的に好き嫌いをいってしまおう

 通常、「良い/悪い」は論理的な根拠に基づきますが、それがかえって双方一歩も引けない真っ向勝負を招いてしまいます。揚句の果てには「中国は間違っているのに自分勝手、ずうずうしい」といい出す始末です。

 その半面、個人の「好き/嫌い」には、絶対的な尺度が存在しません。「中国の品質保証は嫌いだ」で終われば、それは単に個人の価値観の問題に過ぎません。少なくとも契約不履行など、重大な責任問題に発展することはありません。

 昔からオフショア開発の現場では、日本はプロセス重視、中国は結果重視といわれます。ここであなたが「中国側の結果重視な論調は間違っている」と口に出した途端、相手の面目は丸つぶれとなります。「良い/悪い」の議論は、必ずどちらかの責任問題に発展します。

ALT 北京中関村から少し離れた街並み

 一方で長期的なパートナーシップを重視するなら、「私は結果重視の姿勢は嫌いだ」とはっきり物申すくらいでちょうどいいのです。相手国とは、それくらい何でもいい合える信頼関係を構築したいものです。双方が大人の対応に徹すれば、不毛な水掛け論などなくなります。オフショア開発に携わるものは、この絶妙なバランス感覚をぜひ身に付けていただきたいと思います。

 一通りの原因分析が終えたら、この教訓を次のプロジェクトに生かすために具体的な改善策を示します。以下、品質管理に関して日本側からよく聞かれる代表的な意見を列挙します。

  • 日本的なレビュー重視の姿勢を理解してもらう
  • 中国を巻き込んで一緒にレビュー作業に当たり、責任を負わせる
  • 常に現物を見て品質を管理する

 こうした改善策を提示する際、日本からの一方的な押し付けは絶対に良くありません。外国人技術者とひざを突き合わせて、とことん説明して相手を納得させるスキルと精神力が必要です。日本語を用いる以上、日本側が100%説明責任を負うべきでしょう。オフショア開発のPDCAサイクルを回す際には、こんな点に気を付けていただきたいと思います。

  • トラブルが表面化した時点で「もう遅い」
  • 計画段階で納得させないと手遅れ
  • 見積もり見直し(日本側の負担増)も辞さない
  • 書いていないということは、発注側に落ち度がある
  • 「常識なので行間を読め」はあり得ない
  • 「中国の落ち度」といういい方は良くない
  • 日本の落ち度を認めて、新しく修正を依頼する

 強大な権限を持つ発注側こそ、こうした原理原則を守って、フェアにオフショア開発を進めていただきたいと思います。普段から正しい姿勢を保っていれば、いざというとき「次の仕事をチラつかせながら無償対応してもらう」などの裏技が効果的に使えます。

 今回は、筆者主催のオフショア開発イベント参加者から寄せられたアンケートを基に、イベント参加者から出てきた生の声をお届けしました。特にトラブル対策では、日本人の視点から見た解決策などを紹介しました。次回は、中国人の視点から見たトラブル解決策などを紹介します。お楽しみに。

筆者プロフィール

幸地 司(こうち つかさ)琉球大学非常勤講師

オフショア開発フォーラム 代表

アイコーチ有限会社 代表取締役

沖縄生まれ。九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。現在はオフショア開発フォーラム代表を兼任する。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門?失敗しない対中交渉?」の執筆を手掛ける傍ら、東京・大阪・名古屋・上海を中心にセミナー活動をこなす。

オフショア開発フォーラム:http://www.1offshoring.com/

アイコーチ有限会社:http://www.ai-coach.com/



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