Office互換ソフト市場の行方―Microsoft Officeのお買い得感はいかほど?―(2/2 ページ)

» 2006年12月08日 12時00分 公開
[三浦優子,@IT]
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とにかく価格にこだわるのならビューアやオープンソースソフト

 価格を最優先するのであれば、マイクロソフト自身が提供しているビューアを利用するのも1つのやり方だ。

 ビューアはOfficeアプリケーションを持っていなくても、それぞれのアプリケーションを閲覧するためのソフト。筆者はこのビューアの存在を知って、「PowerPointに関してはビューアを利用することにして、わざわざソフトを購入する必要はなかった」と悔やんだくらいだ。

 ただ、ビューアだけに、何かを書き込むといった作業はできない。添付ファイルで届いたデータを新たに加工することはできないので、「このアプリケーションについては、絶対に加工はしない」と思えば、このビューアを利用することも可能だろう。

 オープンソースのソフトウェアは、ユーザー自身がダウンロードして使うものだ。

 ソースネクストの「スタースイート」、インフォースが販売する「シンクフリー」といった製品も、オープンソースソフトがベースとなっている。

 OpenOffice.orgの日本のユーザー会(http://oooug.jp/)では、日本語のページを提供し、そこからダウンロードができる。英語や専門知識がないユーザーであっても、ダウンロードして利用することは可能だ。

 サポートについても、日本語のFAQがかなり充実しているので、基本的な操作方法は紹介されている。ただし、「OpenOffice.orgのバイナリは業務で利用することができますか?」という質問に対しては、次のように回答されている。「OpenOffice.org のバイナリは業務で使うことができます。お使いになられる前に、このソフトウェアは開発途上であること、それと機能が完全でないかもしれないことをよく理解しておいてください」

 この答えからも分かるように、すべてメーカーにサポートしてもらえると考えてしまっているユーザーにはオープンソースは向いていない。

システムの一部と位置付けるマイクロソフト

 全世界で、「Windows Vista」と「the 2007 Office system」の企業向けライセンスの提供がスタートした11月30日、日本でも発表会が開催された。この席上、マイクロソフトは、「11月30日に、Windows Vista、the 2007 Office system、Exchange Server 2007の3製品を同時発表したのは、これらの製品が総合的なインフラソリューションという位置付けを持った製品であることを示すためだ」と強調した。

 同社代表執行役のダレン・ヒューストン氏自身が行ったデモンストレーションも、3製品をすべて利用しているからこそ実現する機能を中心に紹介された。

 マイクロソフト自身は、対企業向けビジネスという観点では、「Microsoft Officeという個別製品」というよりも、Windowsを含めた企業のインフラとなるシステム製品の一部分としてアピールしている。

 最初に紹介したように、筆者は「the 2007 Office system」にバージョンアップすべきか、悩んでいる。すでに、「Microsoft Office 2003」の機能でも十分と感じているため、「ExcelやWordで、どうしてもこの機能が欲しい」と思える機能があるのか、ないのかを確認したいのだが、そういう紹介は案外少ない。Officeファミリーのアプリケーションも多くなったため、すべての機能が紹介されないせいもあるが、進化し続けたOfficeには初期のころのような劇的進化を生みにくい側面も多いように思う。

 マイクロソフトでは、製品の価値という点で、他社の製品やオープンソースのものと比較して、「メーカーとして責任をもってバージョンアップを行い、最新技術に適応した製品をリリースしている点が大きなバリュー」と説明している。

 最近では、マイクロソフトが「バリュー」として説明する最新技術への対応が、Windows Vistaをはじめ、サーバアプリケーションとセットとなって示されることが多い。企業のシステムすべてをWindowsファミリーで統一しているユーザーにとっては、確かに他社のソフトにはない大きなバリューといえそうだ。

 ただし、企業インフラのすべてをマイクロソフト製品で統一しているユーザーではない場合、マイクロソフトがバリューとして示す機能が利用できない場合も多い。そうなると、「Microsoft Officeの価格」が高価なのか、安価なのかに対しては、Windowsを使いこなしているユーザーとは違う意見となるのではないか。

どんなソフトをどう使うのか、意識をもって選択することが必要

 あらためてOfficeソフトの価格について考えてみると、必要な機能やソフトに応じて、さまざまな選択肢が用意されていることが分かる。

 本当にコストを考えるのであれば、自分の会社が、どんなソフトを、どのような場面で、どのように利用するのかを明確にすることが必要だろう。

 業務で利用するアプリケーションであれば、機能や価格を見比べて選択しているだろうが、案外、Officeのようなデスクトップアプリケーションについては、「取りあえず、これを導入しておけばいいだろう」といった感覚で導入してしまっているケースが多いのではないか。

 さまざまな選択肢が用意されていることから、「自社に必要な機能やソフトは何か。代替ソフトを利用した場合に比べ、生産性にはどれくらいの違いがあるのか」をきちんと確認してみてはどうか。筆者のようにPowerPointを購入したものの、PowerPointで何かを作成したことが一度もなく、「ビューアで十分だった」と後悔してしまう場合だってある。

 逆に、「低価格に引かれて購入したものの、生産性が著しく落ちたため、その点をコストに換算すれば高くついてしまった」というケースも考えられる。

 Officeの価格が高いのか、安いのかの判断は、一般的な意見から考えるのではなく、ユーザーが自分の利用状況と照らし合わせて判断すべきことだろ。

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