事業継続計画書の具体的な事例事業継続に真剣に取り組む(6)(2/3 ページ)

» 2007年02月27日 12時00分 公開
[喜入 博,KPMGビジネスアシュアランス株式会社 常勤顧問]

4. BCP発動フェイズ

1. 初動対応

 災害発生時、事業所などで勤務中の場合は、以下の優先順位に従って行動する。なお、勤務時間内・外にかかわらず、外出先や自宅で災害に遭遇した際には、遭遇場所での避難指示などに従って行動すること。

優先順位 対応項目
1 避難・救助・消火活動
2 資産の保全・持ち出し

(a)避難・救助・消火活動

 防災マニュアルに従って、人命を最優先に行動する。

(b)資産の保全・持ち出し

 安全が確保されている状況においては、避難などを行う際に、重要な資産を施錠可能な場所に保管する。また、別紙の「緊急時持ち出しリスト」に従って必要最低限のものを搬出すること。

(c)BCPの発動

 BCPの発動とは、本BCPに従って行動を行うことの指示である。

1. BCPおよび警戒態勢の発動基準

 BCPの発動基準とは、BCP発動権限者がBCPを発動する基準およびBCP発動権限者に発動を求める基準のことをいう。BCPの発動は、次のような規模の災害が発生された場合に行われる。

リスク BCP発動基準
地震 事業所所在地の都道府県で震度6強以上の地震が発生した場合
台風 事業所所在地の都道府県で超大型台風が直撃した場合
火災 事業所で火災が発生した場合

 なお、BCPの発動基準に達しない場合においても、以下の状況の場合は警戒態勢の発動を行う。

リスク 警戒態勢の発動基準
地震 事業所所在地の都道府県で震度5強以上の地震が発生した場合
台風 事業所所在地の都道府県で超大型台風が直撃する予報が出された場合
火災 事業所近傍で火災が発生し、事業所に影響を及ぼす可能性がある場合

 警戒態勢が発動された場合には、従業員などは、直ちに初動対応や初期対応が取れる態勢で待機すること。また、地震の場合には、災害の規模がBCP発動基準に達していない場合においても、施設や設備の損傷、公共インフラの長期停止などにより業務の継続に影響があると判断した際には、BCPの発動に切り替える。

2. BCPおよび警戒態勢の発動権限者

 BCPの発動権限者とは、BCPを発動や警戒態勢の発動を行う権限を有するものである。BCPおよび警戒態勢の発動権限者は、以下の順位に従う。

第1順位 社長
第2順位 BCM統括責任者
第3順位 上記以外の取締役

3. BCP発動までの流れ

 BCP発動までの流れは以下のとおりである。

 BCP事務局は、災害発生時の初動対応後、災害のレベルについての情報収集を行い、BCP発動基準に達する災害の場合、または直ちに業務に大きな影響を与えると判断した場合には、BCPの発動をBCP発動権限者に促す。また、災害のレベルが警戒態勢に示す警戒レベルに達していると判断する場合には、警戒態勢の発動を発動権限者に促す。

 BCP発動権限者に対する各発動の要求は、BCM統括責任者が行う。BCM統括責任者が不在の場合は、BCM統括グループの責任者、また両者が不在の場合は、BCM統括グループの各担当者のいずれかが発動を要求する。

 災害が夜間や休日などに発生した場合においては、BCM統括責任者およびBCM統括グループのメンバーは、本社中央防災室と連絡を取り、必要に応じてBCPおよび警戒態勢の発動要求を行う。

ALT 図2 BCP発動までの流れ

2. 初期対応

 BCPが発動された後、24時間以内に以下の初期対応に着手する。

(a)緊急対策本部の招集と設置場所

 BCPの発動後、緊急対策本部、事務局、および情報収集チーム、広報チームのメンバーは、直ちに下記対策本部設置場所に集合する。その他のチームは対策本部より指示があるまで待機する。

 緊急対策本部は、本社ビルの役員会議室に設置する。本社ビルでの設置が不可能な場合には、以下の順位の場所に緊急対策本部を設置する。

第1順位 本社ビル 役員会議室
第2順位 ●●データセンター 大会議室
第3順位 ▲▲事業所 第1会議室

(b)被害状況の調査

[1]安否確認

  情報収集チームは、別紙の安否確認マニュアルに従って、従業員などの安否確認および事業者や居住地域の被災状況を確認し、被災状況をまとめ、緊急対策本部に報告する。

[2]そのほかの被害状況の調査

  情報収集チームは、リソースの被災状況をチェックリストに基づき確認し、その結果を緊急対策本部に報告する。

(c)非常用食料・用品の準備・調達、宿泊先の確保

 総務チームは、備蓄している非常用食料や用品を確認し、緊急対策本部の指示により配布する。また、使用状況や在庫状況を確認し、必要な調達を行う。

(d)広報・顧客対応

 緊急対策本部は、被害状況の調査結果などを検討し、顧客、マスコミなどへの通知や問い合わせへの回答にかかわる内容や発表時期などを決定する。広報チームは緊急対策本部の決定に従って広報・顧客対応を行う。

(e)代替手段による業務の継続、および復旧処理

 緊急対策本部は、被害状況の調査結果を踏まえ、次の事項の実施についての判断を行い、各担当チームを招集する。なお、判断に当たっては、別紙の業務の目標復旧時間および復旧優先順位を参照すること。

  1. 各業務の代替手段による実施
  2. 各業務やリソースの復旧処理

(f)従業員などの帰宅

 緊急対策本部は、事業所、各地域などの被災状況、および代替手段による業務実施や復旧処理などに必要な要員数などを考慮のうえ、従業員などの帰宅について検討し、指示を行う。

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