IBMコラボレーション製品は、どこへ向かうのか?特別企画 Lotusphere 2007に見るIBM Lotusの戦略(2/3 ページ)

» 2007年02月28日 12時00分 公開
[砂金 信一郎(リアルコム株式会社),@IT]

Web 2.0スイート「Lotus Connections」

 次に、Lotusphere 2007で最も注目を浴びた「Lotus Connections」について触れていこう。Lotus Connectionsは、Web 2.0的なツールを詰め合わせた“Web 2.0統合パッケージ”であり、「Profiles」「Communities」「Blogs」「Dogear」「Activities」という5つの機能を持っている。

Web 2.0的な機能

 Profilesは、Lotus Connectionsの中心的機能であり、その名のとおり個人プロフィールを管理・表示するモジュールである。ユーザーの属性や活動履歴などが表示され、「ひととなり」が分かる仕掛けになっており、名前や組織・得意分野などをキーワード検索できる。

 Communitiesでは、同じ興味関心を持ったユーザー同士がクローズドな小部屋を作ることができる。mixiのコミュのようなイメージだ。

 Blogsは、Lotusphereで公開されたプレベータサイトではまだ実装されていなかったが、いわゆる標準的なブログ機能が提供されるようである。

 Dogearという聞き慣れないモジュールは、ソーシャルブックマークの機能である。ユーザーはブックマークにさまざまな「タグ」を付けて、分類や整理をすることが可能だ。写真共有サイト「flickr」のタグクラウドのような、Web 2.0を志向したインターフェイスも用意されている。

 Activitiesについても、補足が必要かもしれない。Lotusが昨年あたりからメッセージしているActivitiesという概念は、語弊をおそれずに一般的な言葉にすると「プロジェクト」に近い。同じような機能はNotes 8 Hannoverでも、Activity Explorerとして提供されている。個々のプロジェクトで共同作業に必要な掲示板やグループスケジュール、ファイル共有などの機能を備えたチームコラボレーションサイトを持つことができる。

正体は、Notesとは無縁のJavaアプリケーション

 注意したいのは、Lotus Connectionsは「Lotus」を名乗りながら、Notesとは別物という位置付けになっているという点である。Connections自体、WebSphereで動く一般的なJavaアプリケーションであって、カンファレンスでもNotesとのデータおよびアプリケーション連携については多く語られなかった。Notesとは関係のない、独立した製品としてとらえた方がよいと思われる。

 また、扱いとしてはどうやら完成されたアプリケーション・サービスという方向性ではなく、これをベースにカスタマイズを行って最終化するテクノロジコアということらしい。「IBM社内で使われていたサービスを製品化した」という説明があったが、最終的にどのようなパッケージングで世の中に提供されるか、確定情報はいまのところない。

SPS対抗ツール「Lotus Quickr」

Microsoft Office SharePoint対抗の本命Microsoft Office SharePoint対抗の本命

 Quickrは、完全にMicrosoft SharePoint Serverを意識した対抗ツールである。SharePointは、ファイルの共同編集やワークフロー、バージョン管理機能を持つ、Microsoft Office System製品の拡張基盤である。マイクロソフトは今後のコラボレーション効率化やコンプライアンスのためにも、Office製品とファイルサーバに加えてSharePointが必要だと力説してきた。

 これに対してNotesユーザーは、既存のNotesでは上記機能を実現できておらず、仕方なくSharePoint移行を行うユーザーもいる。しかし、使い込んだNotesからSharePointへの移行は、コストやリスクが膨れ上がるため、大多数のユーザーは逡巡(しゅんじゅん)しているところだ。

 こうした中、マイクロソフトが訴求する機能を提供する(しかも、Officeが最新版でなくても使える)Quickrの登場は、ユーザーの離反を食い止めたいIBMにとって当然の策かもしれない。米国では、既存Notesユーザーに対して、Quickrのエントリー的位置付けのライセンスを無償にすると発表している。

機能のキモは、コラボレーションスペースと豊富なコネクタ

 Quickrを使うと、SharePointのチームサイトのように、クローズドなメンバーでの情報共有スペースを簡単に構築できる。

図2 Quickrのサンプル画面 図2 Quickrのサンプル画面(出典:IBM資料「Announcing IBM Lotus Quickr」

 主な機能としては、Office文書や音声・動画などのファイルをプロジェクトメンバーで共有することができ、チーム内の他メンバーがコメントを加えたり、属性情報を付けたりすることも可能だ。さらに、チームブログやWikiによる情報共有やタスクの進ちょく管理機能も提供されており、一通りのコラボレーション機能が備わっている。

 また、多様なコネクタで使い慣れたアプリケーションからファイルを扱えるのも特徴の1つである。Officeやエクスプローラへのプラグイン、Notes連携などを使うと、これらアプリケーションから編集中のファイルをQuickrに登録できるようになる。その先にはチェックイン・アウトやワークフロー承認などの機能がつながっている。

Lotus Quickrの実体も、Notesとは無縁のJavaアプリケーション

 こちらもLotus Connectionsと同じく、WebSphereで動く一般的なJavaアプリケーションである。Notes/Dominoとはクライアントの「コネクタ」でつながる関係でしかない。つまり、データのレポジトリはDominoサーバではなくDB2(またはOracle)となる。スケーラビリティや安定性もそれほど大きな不安はないだろう。

 ちなみに、このQuickrはいわゆる「ぽっと出」ではない。Quick Placeとしてかねて提供されていたものを、SharePoint対抗としてパッケージングしたものと考えられる。いまのところ、Notesユーザーにとっての確実なメリットはライセンスが無償である点と、Notesクライアントに対するコネクタが提供されている点のみである。加えて、レポジトリ統合、あるいは最低限コンテンツをバラバラで管理をしなくても済むような工夫をIBMがどのように提供してくるのかが、普及が進むか否かの鍵となってくるであろう。

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