ディスカッションテーマのおもちゃ箱(1)何かがおかしいIT化の進め方(31)(2/4 ページ)

» 2007年03月19日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]

企画段階におけるディスカッションの材料その2

企画・計画と結果の評価が1人の人間の中で完結することについて

 これによって責任感が生まれ、PDCAサイクルを通じた企画・計画の能力の育成が可能となる。

 企画にかかわった人には実施結果に責任を持ち、結果を見定めよう。

他社の成功事例をまねすることについて

 背景事情の違う他社の成功事例をまねしても、成功の可能性は少ない。また、まねしたころには、相手はその先に行っている。

 社外の事例情報は自分の発想を広げるために使い、自社に本当に必要な、最適な課題・内容だけを考えよう。

 同業他社の情報をくれるベンダやコンサルには気を付けよう。自社の情報も同じように他社に流れているだろう。

経営とITをつなぐのは「手続きや技法ではなく人」である

 効果を出すためには、やる人の強い意思とそれに基づく発想や行動が必要になる。その人が組織の中で責任を果たすためには、それに応じた権限が必要だ。

  • 情報化のプロジェクトの中でやらなければならないこと(責任)と、その実行に必要な権限は、実質的に誰(どのポジション)が持っているかを整理してみよう
  • IT部門は、実質的に「何に責任を持つべきなのか、持てるのか」を、よく考え直してみよう(権限のないことにまで、責任を求められているようなことになっていないだろうか? もし、そうならIT部門の説明・啓蒙不足だ。逆にやるべきことを「やれる力がないからやらない」ということにしていないだろうか。「やらないからできるようにならない」場合が多いのだ)
  • 情報化の企画案は、的確な方向のたたき台を作りユーザー部門を巻き込んで検討し、お互いに協力してまとめ上げよう
  • プロジェクトの起案、プロジェクト責任者は当該ユーザー部門長にお願いしよう
  • 情報化・IT担当は事務局・裏方として内容をしっかり支え、関係者間の調整やプロジェクト管理の実務面と、情報システムの部分に責任を持とう

情報は、組み合わせによって価値を増す特性を持つ

 1つ1つの縦割りの情報システムも、将来横断して情報の活用ができるよう、データやソフト・機器などの整合性の維持をできる仕組み・ルールが必要である。

 全社のITを統括する立場のユーザー企業のIT部門には、将来を含めたこの全体最適化に対する責任が求められている(この問題は、1つのプロジェクトの中で考えられる問題ではない)。将来は分からないというが、「見ようとすれば、具体的には無理だが、粗いイメージぐらいは見えるもの」である。

  • 最初は粗くてもよいから、自社の情報化のビジョン(理念・方針)、戦略を考えてみよう。背景を整理すると情報システムの位置付けが見えてくる(付録参照)。情報システムから情報システムを見ようとしても、影しか見えない
  • それを基に情報化(業務改革と情報システム)のグランドデザイン(中長期の全体構想)を描いてみよう(グランドデザインのプロセス参照)
ALT グランドデザインのプロセス

※例えば、新しい商品ごとにシステムが必要になるような業種では、具体的なシステム内容は分からなくても、「こんな分野、こんな種類のシステムが新しくいくつ必要になるか?」くらいは想像できるだろう。それによって、個別にシステムやDBを作るか、共通システムのスケルトンを考える価値があるかの判断が可能となる(アーキテクチャをどうするべきかという問題だ)。


IT技術の高度さや新しさと、経営上の効果の間に相関関係があるわけではない

 ITの技術は、これを用いた製品やサービスを事業対象とするベンダ側にとっては日進月歩であっても、ユーザー側にとって、自社の業務プロセスを抜本的に変えるような技術は数年に1つぐらいしかない。

 技術が進み制約がなくなるほど、ユーザーにとっては気にしなくてもよい存在になる。

  • 技術進歩は価格やコストで評価しよう
  • 標準化によるトータル・コストの削減や、信頼性向上に注意を向けよう

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