IT管理のあるべき姿とISO 20000体験的ITIL攻略法(2)(2/3 ページ)

» 2007年07月18日 12時00分 公開
[鈴木 広司,エクセディア・コンサルティング株式会社]

ISO 20000-1、ISO 20000-2、そしてJIS Q 20000

 ISO 20000は、以下の2部構成となっている。

  • ISO20000-1 サービスマネジメント仕様(要求事項)
  • ISO20000-2 サービスマネジメント実践のための規範(実践ノウハウ)

 なお、ISO 20000文書自体は、「ISO/IEC20000-1:2005」および「ISO/IEC20000-2:2005」として、日本規格協会より英和対訳版が発行されており、書籍として購入可能である。また、つい最近のトピックであるが、2007年4月20日に、ISO 20000がJIS化され、「JIS Q 20000-1:2007」および「JIS Q 20000-2:2007」として、同じく日本規格協会から発行された。JIS Q 20000文書は、ダウンロードPDF版として、ISO20000対訳版より安価で購入できるので、関心を持たれた方は、検討してみていただきたい。

 JIS Q 20000は、対応する国際規格であるISO/IEC20000と“一致する”関係であり、適用範囲はISO/IEC20000と同一とされている。ただし、原文(英語)に対する訳語に違いがある。具体的な違いについては、ISO/IEC20000とJIS Q 20000の用語の対比表が公開されているので参照できるが、JISの用語が使用されたことによって、ITILの対訳との整合性が少し崩れている個所が見受けられる。例を挙げると、「既知のエラー」が「既知の誤り」、「ワークアラウンド」が「回避策」、「切り戻し計画」が「リリース前の状態に戻す計画」といった感じである(いずれも前者がISO 20000、後者がJIS Q 20000)。今回のテーマであるITILの活用に当たって、「あるべき姿」としてISO 20000を参考にする、という趣旨からすれば、筆者としては、ISO 20000の英和対訳版を読まれることを推奨したい。

 ISO 20000-1、ISO 20000-2、およびITILの関係を図示すると、以下のようになる。

ALT 図1 ISO 20000-1、ISO 20000-2、ITILの関係

マネジメントシステム構築とISO 20000

 今回は、ISO 20000の認証取得を目的としているわけではないので、認証を取得するためにはどうしたらよいのか、といった説明はしない。ISO 20000をテーマとして取り上げた理由の1つは、多くの企業でマネジメントシステムの構築が求められている点にある。ISO 20000では、適切なITサービスマネジメントを構築するだけではなく、その品質を継続的に改善するためのフレームワーク(マネジメントシステム)を実現することが要求されているのである。ISO 20000-1の要求事項を以下に示し、引き続きマネジメントシステム構築のメリットについて少し触れる。

ALT 図2 ISO20000-1の要求事項

 ITILを活用して、組織にとって効果的・効率的なITサービスマネジメントが構築できたとしよう。その仕組みをただ漫然と運用しているだけでは、仕組みはいずれ陳腐化していく。ITサービスマネジメントの品質を維持し、さらに改善していくためのマネジメントシステムが必要になる。ITILにも、「継続的サービス改善プログラム」(CSIP)が記述されているが、マネジメントサイクルとしてPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルの構築を規格として要求しているのがISO 20000なのである。要点をまとめると次のようになる。

1.文書化、記録を徹底することにより、ITサービスのマネジメントプロセスの手順および運用状況を可視化できる

1.自己診断(内部監査)、外部監査(審査登録機関による審査)、マネジメントレビュー等の手段を組み込むことによって、評価基準を明確化し、改善につないでいける

 また、今後の連載で述べる予定にしているが、最近の話題を独占している感がある「財務報告に係わる内部統制の評価」への対応(通称:J-SOX法対策)において、ISO 20000がIT全般統制の整備に関して有効である、との提起がされている。例えば、筆者が座長を務めるITガバナンス研究分科会(itSMF Japan)でも、「IT統制におけるITIL/ISO 20000の有効性」というテーマで研究が行われている。この内容については、いずれ紹介する機会もあると考える。

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