前節の例のようなケースを、実際に経験された方もいらっしゃるかもしれません。この場合、ビジネス側の視点から見ると、「受注業務」と「在庫照会業務」というビジネス機能は、すでにシステム化されて稼働しています。ですから、この2つを組み合わせれば、目指す業務プロセスが効率的に出来上がるはずです。
にもかかわらず、IT側の視点から見ると、そう簡単にはいかないのが現実なのです。一体なぜ、このような「ビジネスとITの乖離(かいり)」が起こるのでしょうか?
先ほどの、システム担当者の言葉を思い出してみてください。
「OSが異なる、開発言語が異なる、ネットワークが異なる……」
バラバラに開発されたシステムは、このような状態に陥りがちです。そして実際のところ、インフラや開発技術が異なるシステム同士を連携させるには、その違いを吸収する仕組みが必要になるため、少なからぬコストが掛かり、技術的な困難を伴うことも多いのです。
さらに、バラバラにシステムを開発するやり方では、ほかのシステムの都合まで考慮することはほとんどありません。先ほどの例でいえば、在庫管理システムを開発した際には、在庫照会機能がほかのシステムから必要になるなどとは、まったく想像だにしなかったことでしょう。その結果、在庫照会機能は在庫管理システムの内部で動作するためだけに開発され、ほかのシステムから再利用することが極めて困難になってしまったのです。
結局このケースでは、受注システムと在庫管理システムを連携させるために、多大な開発コストを投じることになるかもしれません。あるいは、受注システムに新たに在庫照会処理を追加するかです。しかしこれもコストが掛かるうえ、すでに在庫照会処理は在庫管理システムの中に存在しているのです。にもかかわらず、同じ機能のものをもう1度別に作らなければならないというのは、IT側の都合はともかく、ビジネス側の視点から見れば無駄な投資に映ることでしょう。
本来、システムはビジネスを支援するためにあるはずです。システムのOSや開発言語やネットワークなどといった技術的な制限のために、ビジネスの変化や発展が阻害され、結果としてビジネスの足が引っ張られてしまうとしたら、これは本末転倒です。とりわけ、変化の激しい昨今のビジネス環境を考えると、これはどの企業にとっても無視できない問題です。
少し前置きが長くなりましたが、SOAはこうした課題を解決し得るものとして、近年大きな期待を寄せられているのです。では、SOAは具体的にどのような解決策を提供するのでしょうか。キーワードは「疎結合」(そけつごう)です。
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