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» 2007年09月27日 12時00分 公開

5分で絶対に分かる:5分で絶対に分かるCRM (4/6)

[齋藤孝太,株式会社SIS(ストラテジック インテリジェント システム)]

3分 −CRMシステムの本来の役割

 これまで、本来CRMは販売現場でのアクションを含めた、マーケティング施策全体を網羅しなくてはいけないものであることを説明してきました。では、CRMシステムはその中でどのような役目を果たすのでしょうか。主に、以下に挙げる3つの機能があります。これらの機能はCRMを実践するうえで、ある部分的な役割を果たすことは間違いありません。しかし前にも述べたとおり、CRMシステムの機能がそのままCRMの成功に直結するわけではありません。

(1) 顧客抽出

 1つ目の機能は、顧客抽出機能です。

 マーケティング活動とは、単純にいうと「誰に、何をするのか」ということに尽きます。この「誰に」を顧客データベースの中から抽出する機能が、顧客抽出機能です。確かにCRMシステムを使えば、購入金額・購入頻度・最近の来店日など、さまざまな条件で自由に顧客をデータベースから抽出することができます。

 しかし、その抽出条件はマーケティング担当者が考えて設定するものであり(当たり前といえば当たり前ですが)、システムが自動的に与えてくれるものではありません。最適な顧客抽出を行うためには、CRMシステムを導入するだけでは不十分で、それ以前に顧客との継続的な関係作りというCRMの本質について深い理解が必要になるのです。

(2) ポイントシステム

 2つ目の機能は、ポイントシステムです。

 今日、多くのCRM導入企業がポイントシステムを導入しています。典型的なポイントシステムの例は、顧客にポイントカードを発行し、購買ポイントに応じて値引きサービスを提供する、というものです。企業は、ポイントカードを顧客に発行することにより、顧客の購買情報をPOSシステムから収集することができます。のちに購買情報を分析して精度の高いマーケティングを実施することにより、値引き分以上のメリットを享受できる、とされてきました。

 現実には、そのとおりにうまく実施できている例は極めて少ないようです。本来は、ポイントシステムで獲得した購買情報を、マーケティング施策全体の中でどのように活用し、顧客の育成につないでいくことが重要なのです。しかし実際には、ポイントシステムの値引きによる顧客の囲い込みが主眼となってしまっているケースがほとんどです。値引きは、短期的には顧客を引き付けますが、それ以上顧客との関係を深めることはできません。また、競合他社も同じくポイントシステムを導入すると、お互いに値引き率を競うことで顧客の囲い込みを図るようになり、たとえ売り上げが上がっても利益はなかなか上がらないということになってしまいます。これではCRMではなく、単なる値引き合戦です。

 これもまた、CRMシステムがCRMの施策全体の中でうまく生かされていない一例といえるでしょう。

(3) 購買データ分析

 最後に挙げる機能は、購買データ分析機能です。

 「CRMは顧客の購買データを入手できるので、詳細な分析ができ、PDCAサイクルを通じて、マーケティングの質を上げる」といわれています。しかし、顧客の購買データはあくまでも結果です。顧客がそのような購買行動に至った原因までは教えてくれません。原因が分からなければ、PDCAサイクルは機能しません。

 例えば店舗ビジネスでは、エリア特性・立地・顧客層・店長の方針・スタッフの対応・店構え・売り場作り・販売促進などといった多くの要因が複雑に絡み合っているため、顧客が購買した原因は容易に特定できません。購買データをいくら詳細に分析しても結果だけを見ていることに変わりはなく、マーケティングのPDCAサイクルは十分機能しません。

 ただし、カタログ通販・ネット通販は例外です。これらのビジネスモデルは店舗ビジネスとは異なり、顧客が購買を決定する要因は非常に限られています。マーケティング部門が作成するカタログやWebサイト、メールマガジンなどがそのまま「現場のマーケティングアクション」になります。戦略立案部門と現場が一体になっているため、マーケティングのPDCAサイクルが高いレベルで実現されているケースがあります。今日、数少ないCRM成功事例のほとんどがカタログ通販・ネット通販ビジネスなのは、そこに理由があります。

 逆にいえば、店舗型のビジネスでは本部と現場が分離していますから、いかにこの両者の間の距離を縮めるかが課題になります。本部は店舗からデータを吸い上げるだけではなく、販売現場でのマーケティングに活用できる情報を積極的に現場にフィードバックしなくてはいけません。さらに、そうした情報を基に現場でマーケティングアクションを実行し、その実行結果や蓄積されたノウハウを本部に伝えます。そうした過程の中で、PDCAサイクルが機能するのです。

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