日本版SOX法対応コストを将来への投資に変える新発想の業務フローチャート作成術(5)(3/4 ページ)

» 2007年10月10日 12時00分 公開
[松浦剛志(プロセス・ラボ),@IT]

業務改善に業務フローチャートを応用する

 業務改善とは、業務プロセスの品質向上、スピードアップ、コストダウンを達成することである。つまり、「改善」といえるかどうかを判定するためには、品質、時間、コストの3つの切り口でとらえる必要がある。品質は、顧客満足であったり、法令順守であったり、業務自体の正確性であったりと、目的によってその具体的な中身が変わる。しかし、早くて安いことは常に要求される。

 業務プロセスの可視化は、この3つの切り口から課題をとらえることを容易にしてくれる。前回までに紹介してきた新発想の業務フローチャートを利用しながら、課題の認識をパターン化して考えていこう。

図1 業務フローチャートをどういう視点で見るべきか

 図1は、第4回で登場した業務フローチャートである。この例はシンプルなので業務改善の余地はないが、どのような視点で見るべきかを考えてみよう。

 業務フローチャートから、業務改善のための課題を認識するきっかけをつかむには、以下のような着眼点がある。

■時間と作業を見る

  • 作業の連なりが長い
    作業自体の数が多いことは、最終アウトプットまでの業務プロセスの所要時間が長くなっている可能性が高い。時間のスイムレーンと比較対照すると、問題のありそうな作業を特定しやすい。
  • 例外処理が多い
    業務が標準化されておらず、不要な作業が発生している可能性がある。

■担当者を見る

  • 作業が複数の担当者間を行ったり来たりしている
    「いった、いわない」の伝達ミスや、コミュニケーションの無駄が発生している可能性がある。
  • 1人の担当者に多くの作業が集中している
    分割して並列処理することで業務における最終アウトプット完成までの所要時間を短くできる可能性がある。また、多くの作業がブラックボックス化し、代替が難しくなっている可能性がある。さらに、その結果として、複数の担当者で分担して相互にチェックすべきことが、ノーチェックになっている可能性がある。
  • 担当欄に出てくる人数が多い
    コミュニケーションの無駄が発生している可能性、または待ち時間が多くなっている可能性がある。
  • 担当欄に出てくる人数が少ない
    一連の業務プロセスの中でも、通常は作業により難易度の差がある。実際に難易度の差があるにもかかわらず、担当者が少ないとすれば、簡単な作業を能力の高い人が行っている可能性がある。

■媒体を見る

  • 紙の媒体が利用されている
    転記ミス、検索の不便さ、保管スペースの無駄などが発生している可能性がある。
  • Excelなどの表計算ソフトが利用されている
    表計算ソフトは、リレーショナル・データベースと違い、複数の担当者が同時に利用することができない。そのため、業務における最終アウトプット完成までの所要時間が長くなっている可能性がある。また、シートの修正履歴が残さずに容易に変更できるため、ミスの発生原因になっている可能性がある。
  • 同一種類で似た名前の媒体がある
    本来まとめられる作業を複数に分けて行っている可能性がある。
  • 媒体数が多い
    無駄な転記がされている可能性がある。
  • 作成された後に、参照されていない媒体がある
    不要なものを作成している可能性がある。

■動作を見る

  • 確認が多い自動化・IT化されていないために、無駄な転記作業が多い可能性がある。
  • 1つの媒体が何度も参照されている一度で行える作業が複数回に分割されている可能性がある。
  • 照合が多い無駄な照合がある可能性がある。

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