COBITの成熟度モデルでITILを裏付ける体験的ITIL攻略法(3)(4/4 ページ)

» 2007年10月18日 12時00分 公開
[鈴木 広司エクセディア・コンサルティング株式会社]
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COBITの成熟度モデルを利用したアセスメントの実例

 筆者は実際のコンサルティングワークの中で、COBITの成熟度モデルを使用したアセスメントを実施している。今回のテーマの最後に、その事例を紹介する。少しでもCOBITの使い方に関心を持っていただければありがたい。

 ここで紹介する事例では、「計画と組織」ドメインのITプロセスの成熟度モデルを使用し、IT組織の情報化能力の診断を試みたものである。使用したCOBITのバージョンは3であった。

 前述した成熟度モデルのチェックリストを作り、項目ごとの評価は4段階とし、成熟度としては「1.68」のように小数点第2桁まで計算するようにした。詳細は割愛するが、計算ロジックに工夫は埋め込んである。

 ここでは、実際のアウトプットをいくつか示す。企業名を伏せてある点はご容赦願いたい。

ALT 図4 目標レベルとのギャップ(クリックで拡大します)
ALT 図5 ベンチマーキング(クリックで拡大します)
ALT 図6 成熟度モデルからの課題抽出の例(クリックで拡大します)

 11個のITプロセスに関して、チェックリストを基に現在の実力を数値化し、あらかじめヒアリングしておいたプロセスごとの目標レベルとのギャップを表現したものが図4である。ここでの目的は、目標レベルと現在のレベルとのギャップが大きいプロセスを取り組みの優先度の高いものとして抽出することにあった。

 次に、業種および企業規模によるベンチマーキング結果を示したものが図5になる。COBITは米国のホームページ上で成熟度レベルのベンチマーキングができるようになっており、それを利用している。ここでの目的は、同業あるいは同規模の企業に比べて劣っているプロセスを抽出することである。

 図6は、チェックリストを基に、プロセスごとに対応が必要な項目を課題としてリスト化したものである。実際には、課題抽出後、改善機会と解決策を検討し、さらに取り組みの優先度を定義し、具体的な実行スケジュールまで落とし込んでいくことになるが、今回のテーマの本題からは外れるので、それらの説明は、また別の機会があればということにさせていただく。

 次回は、「あるべき姿」および「現状の実力」が定義できたことを受けて、「あるべき姿」に到達するために取り組むべき目標と、それらを評価するための指標を、BSC(バランスド・スコアカード)の考え方を利用して策定する方法を説明する。

 COBITでは、今後の普及を見通し、ITILの資格と良く似た、COBITファウンデーションという資格制度も導入されている。筆者も機会をいただき、今後「COBIT認定インストラクター」として研修を担当することとなった。ITILに比べてCOBITはまだまだ「知る人ぞ知る」部分が多いと思うが、ITILを活用するためにCOBITをうまく利用することなどで、今後COBITの認知度は高まっていくと筆者は期待している。

著者紹介

▼著者名 鈴木 広司(すずき ひろし)

PwCコンサルティング、IBMビジネスコンサルティングサービスを経て、現在エクセディア・コンサルティング シニアコンサルタントとして、ERP導入プロジェクトにおけるベーシス・インフラ関連のコンサルティングから、ITマネジメントコンサルティングまで幅広く手掛ける。

ITガバナンス研究分科会(itSMF Japan)座長、ITガバナンス協会(ISACA)会員、ITコーディネータ、技術士(情報工学部門)、システム監査技術者。電子メールアドレス:hsuzuki@xiidea.com


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