安いって本当? ベトナムオフショアの事例紹介します現地からお届け!中国オフショア最新事情(10)(2/3 ページ)

» 2007年12月14日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ株式会社]

ベトナムの1人月の単価を日本と比べると4分の1〜7分の1

−日本とベトナムでは価格はどれほど違うのですか?

 INTELSOFTは、1人月1200ドル(1ドル110円として13万円強)でした。日本の中小企業では1人月70〜100万円、あるいはそれ以上かかる場合もあります。ベトナムでの開発の場合、開発単価は日本と比べて4分の1〜7分の1ですね。

−ベトナム人は勤勉、誠実であるといううわさですが、実際にお付き合いされていかがでしたか?

 うわさは本当でした。私はINTELSOFTのDongさんしか知りませんが、一緒に仕事をしてみると、メールの返事は1〜2時間で返ってきます。事前に霜田さんから「Skypeのビデオ機能を使って顔を合わせながら打ち合わせをするといいですよ」とアドバイスもいただきましたが、Skypeの必要がないレスポンスです。

 誠実であるという点に関しては、コードの修正依頼などお願いしてもすぐに対応してくれた点が驚きでした。いままでの日本の経験では、2〜3日回答がなくても仕方がないと思っていましたが、レスポンスが早いのは助かりました。

−INTELSOFTを候補として選んだ理由は?

 開発単価も安かったですし、弊社の大規模開発の時期と重なったため、まずは3カ月のお試しでやってみようと思いました。弊社のサービスを開発していただきき、実力・品質などを拝見させていただこうと思った次第です。

ベトナムオフショア契約における3つの不安

−契約時に不安な点はありませんでしたか?

 以下の3点が不安でした。

 1つ目ですが、ベトナムに限らず、オフショア開発の悪いうわさはいろいろ聞いていました。契約したけれどそのまま逃げられてしまったとか。日本で設計した後、現地で開発を任せたら品質が最悪で、結局日本でかなりの工数をかけて修正したりとか。

ALT ベトナムベンダの開発風景

 2つ目。これは、日本のパートナーさんの場合でも同じですが、相手の技術レベルが分からないのが心配でした。だから、まずお客さまのシステムではなく、自社のシステムで試してみました。失敗しても自社が損害を受けるだけでお客さまには迷惑は掛からないと思いましたので。

 3つ目。Dongさんとはお会いしたことがないのですが、対面したことがないのは不安でした。特に日本語のレベルや、対応の良さは実際に話してみないと分かりません。

 日本人は細かいですから、大ざっぱな対応をされてしまうと困りますし、こちらからの要望をどれだけ聞いてくれるかが心配でした。

 これらの不安要素がありましたが、日本の連絡窓口としての霜田さんがいらしたのは心強かったです。定期的に電話連絡はしていましたし、何か問題があれば直接相談すればよいと思っていました。

ベトナム企業に直してほしい2つのこと

−開発体制はいかがでしたか?

 日本側の弊社は2人、ベトナムのINTELSOFTは数人が専任で担当されたようです。INTELSOFTの窓口はDongさんだけでした。

 日本からは、最初に詳細設計書とサンプルコード、デザインを送っただけで、開発やプロジェクト管理も含めてINTELSOFTにしていただきました。日本側は定期的に連絡を受けるだけでした。

−INTELSOFTの技術力はいかがでしたか?

 今回はLAMPで開発をお願いしたのですが、最初は開発速度は遅かったです。おそらくMojaviを使用した開発は、初めてだったのではないでしょうか。しかし、しばらくすると開発速度は追い付きました。Dongさん以外の技術者の基礎知識も高いと思いました。

−INTELSOFTへ、直した方がいいと思うところを教えてください。

ALT 日本語を教えているところ

 2点挙げます。

 1つ目。ここまで細かいことはいいたくないのですが、ちょっとしたところを自分たちで見付けて修正してくれるといいと思います。CSSに関しては特に多かったですね。

 例えばセンターでお願いしていたところを左寄せになっていたり。日本の場合、CSSで組むケースが多いのですが、そのあたりは、INTELSOFTが慣れていなかったのではないでしょうか。こういった細かな間違いは、日本側で修正しました。

 2つ目は、ドキュメントの品質ですが、日本語のニュアンスが伝わらないことがありました。例えば、「RSSが動作していないので、以下のソースを追加してください」と日本語でお願いしたところ、見当違いの場所に追加されてしまったことなどがありました。ただし、英語と日本語の両方で納品されたので、英語で理解することができましたが。ちなみに、メールの日本語はほぼ完ぺきでした。

−オフショア開発はどんなケースに向いていると思われますか?

 新規の開発は向いています。詳細設計と最終的な総合テストは日本で作業し、プログラム開発からテストまでお任せして、丸ごとプログラムを納品してもらう形です。

 逆に、システムのリニューアルで外部からのアクセスに神経質なケースは向いていないかもしれません。デザイン変更やシステム変更のために、お客さまのシステムに外部からアクセスしなければなりません。

 事前にシステムへのアクセス許可を得るために、IPアドレスをお客さまへお知らせする必要がありますが、そのIPアドレスでどの国や地域からアクセスされるのか分かります。

 お客さまによっては、海外から、それも顔も合わせたことのない人からシステムへアクセスされるのを心配されます。こういった問題は、今後日本側でも改善していくべき課題だと思っています。

−今後もオフショア開発は続けられる予定ですか?

 はい。継続して仕事をお願いする予定です。オフショア開発は利益を双方でシェアする方法ですね。日本国内のケースだと「もっと安くしてよ」といわれて、価格交渉の結果、発注元か受注先かのどちらかが涙をのむケースが多いじゃないですか。

 それは、自分たちも苦労しているので身に染みているところです。だから、ベトナムの開発パートナーを犠牲にして仕事をしたいとは思わないです。対等に仕事をしたかった。そういう意味もあって、オフショア開発に踏み切りました。

−今後INTELSOFTへの期待・ご要望をお聞かせください。

 日本語のできる人材をもっと育てていただけると、うれしいですね。今後、弊社とINTELSOFTとの人材交流、育成もできるのではないかと思います。今度、ぜひベトナムへ伺わせていただきDongさんに直接ごあいさつさせて頂いたり、現地の様子を見たいですね。

 また、INTELSOFTの力量が高いことが分かったので、今後は複雑でないシステムの場合は、日本で作る設計書を簡単にして、設計書もINTELSOFTへお願いしようかと思っています。現在、受注しそうなASPシステムもあるので、そちらもお願いする予定です。

 強力なパートナーを得られたので、これからは価格でも勝負できます。これからも弊社にお力添えいただければ幸いです。

(筆者注)以下に追加資料として、今回のヒューマン・オンラインのプロジェクトのスケジュールと発注工数、そして日本とベトナムの役割分担を紹介します。

ALT INTELSOFTとヒューマン・オンラインの開発体制
プロジェクトスケジュール(発注工数:6.77人月)
プロジェクト開始
2007年3月23日
第1回ソースコード納入
4月23日
第2回ソースコード納入
4月27日
第3回ソースコード納入
5月4日
第4回ソースコード納入
5月16日
受け入れテスト支援
5月28〜7月9日
総合テスト&追加開発期間
8月1日〜10月15日

 ヒューマン・オンライン側の対応は以下のとおりです。

発注前
詳細設計書作成&
サンプルソースコード(1人月)
プロジェクト開始から
第4回ソースコード納入まで
開発サポート
プロジェクト終了後
細かい部分の修正&
総合テスト(約1.5人月)

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