第7回 「設計」作業の成果は完成品質を左右するキーワードでわかるシステム開発の流れ(3/3 ページ)

» 2008年01月31日 12時00分 公開
[高田淳志,株式会社オープントーン]
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間違いは、より早い段階で訂正することが重要

青木室長 「いやあ、若井さんの確認は毎回細かくて大変だよ」

赤井君 「だから信頼できるんですよ。今まで数多くの開発に携わった経験から、トラブルになりそうなことや発生しそうな問題点を想定して、事前に確認してくれているんですから」

青木室長 「(それでも面倒くさそうに)まあ、そうだが……。この前の設計書のレビューだって、1行1行読み合わせるような感じで進めずに、大切そうな個所だけピックアップしてササッと済ませてくれればいいのに、あんな調子で進めるから丸1日かかったじゃないか」

赤井君 「その“1日”はそんなにもったいない1日とお考えですか?」

青木室長 「いや、そういうわけではないんだが……。少し面倒だなと」

赤井君 「確かに根気のいる作業ですよね。けれど、もし若井さんたちの開発チームが何かを誤解していて間違った内容がそのままになってしまったらそれこそ一大事じゃないですか? うちの工場が製造ラインを新設する時だって、設計図段階で間違いに気付けばその時点で指示を与えて修正してもらえば済みますが、機器設置が始まってからそんな事態になったら、対応するのに相応の期間や費用が発生しますよね。システム開発も同じですよ。設計に変更が発生したら、再度打ち合わせを行った後設計書を更新し、その部分のプログラムを作り直し、さらにはその部分のプログラムと関係のあるすべての部分との連携を再確認し……、といった具合に大きな作業が発生します。設計工程で修正を行うコストは、プログラム製造工程を終えてから修正を行う作業量の1/10で済むともいわれているんです。いいじゃないですか、10日分の追加作業コストをこの1日で防いだと思えば」

青木室長 「うーん。面倒な気分は変わらないが、損得勘定に置き換えると少しやる気がわくよ。もっとも、基本的にはそうした重要な間違い探しは赤井君がやってくれるから、私は監督してるだけで済むけどな」

赤井君 「……。(やっぱり、そういうことになるか)」

  発注サイドのプロジェクト担当者も、本来的な業務と兼任で開発作業を担当していることが多く、それに加えて設計書のレビューを逐一行うことになりますから、間違いなく大変だろうと思います。しかし、1つ工程が進むたびに修正作業量は10倍近くに達するという見方もあります。「期待した通りのシステムが完成しない」「システム開発には必ず追加コストが発生する」など、システム開発を成功させることの難しさを示す声を耳にすることが少なくありません。複合的な原因によりそのような状況が生まれているとは思いますが、それを防ぐ方法として「発注サイドの担当者が、システム開発推進に必要十分な時間を割く環境を用意する」ということも1つなのではないかと思います。私の感覚では、設計書の誤字・脱字まで指摘するような発注サイドの担当者が1人でもいると、設計の段階まで遡(さかのぼ)って変更対応しなければいけないような大きな問題が発生する可能性は小さいように思います。

 「専門家である開発サイドに、いちいち口を挟むのは気が引けて……」と遠慮せずに、ぜひどんどん口を挟んでください。そして、それによって開発サイドの責任者が嫌な顔をするようであれば、責任者を交代してもらってください。どうせそのまま進めても、失敗の可能性が高いのですから。

筆者プロフィール

高田 淳志

株式会社オープントーン


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