[デル]先進ベンダ買収は「ITのシンプル化」の象徴ストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(14)(2/2 ページ)

» 2008年02月28日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]
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PSシリーズは独自の市場を開拓する

 まず、MD3000iとDell AX4-5のすみ分けについて、デル エンタープライズ マーケティング本部 ストレージ ブランドマネジャー、矢部聖一氏は、ソフトウェア機能に大きな違いがあると話す。「AX4-5の場合、ファイバチャネル環境への導入もできるし、Dell CX3シリーズと共通のさまざまなソフトウェア機能を使える。MD3000iではスナップショットのような機能しか提供していないが、AX4-5ではクローンやレプリケーションなどの機能を追加して、システムを拡張していける」という。MD3000iはユーザー企業が自ら気軽にインストールして使うタイプの製品だが、AX4-5は本格的なサポートも提供されている。

 では、旧イコールロジックのPSシリーズは、デルのストレージ製品ラインにおいてどういう位置付けになるのか。

 旧イコールロジックは買収プロセス完了に伴い、組織としてはデルに統合された。ただし、営業に関しては、イコールロジック営業本部という新部門が設立され、この部門はPSシリーズ製品の販売やパートナー対応に専念している。その大きな理由は、旧イコールロジックが米IBMや米ヒューレット・パッカードなど、デル以外のサーバベンダもパートナーとして伸びてきたことにある。これまで完全に間接販売でビジネスしてきた旧イコールロジックの製品は、デルに入ったことによって、デル経由の直接販売ルートでも流されることになる。

 旧イコールロジックのPSシリーズは、価格帯としては700〜1500万円程度で、Dell|EMCブランドのDell CX3シリーズと完全に重なる。Dell CX3はファイバチャネル中心に販売されてきたが、iSCSIにも対応している。この点でも重なってしまう。

 PSシリーズのデルにおける位置付けについて、イコールロジック日本法人 代表取締役からデルのイコールロジック営業本部 本部長に就任した秋山将人氏は、「ビジネスクリティカルとミッションクリティカルの違いだ。簡単に運用管理できることを重んじる場合にはPSシリーズ、しっかりチューニングして使いたい場合にはDell|EMCブランド製品を勧める」と話す。同じ顧客でも、利用場面に応じて、双方を導入するケースが増えてくるだろうという。

 Dell CX3はiSCSIでも使えるが、どちらかといえばERPのようなアプリケーションで、パフォーマンスをしっかり管理して使いたい場面に適している。導入や管理は多少複雑だが、広範なサポートを受けることができる。一方PSシリーズは、パフォーマンス・チューニングも自動化されており、その分管理者の負担が軽くなっているわけだが、データベースで限界性能を求められるような場合には、人間がパフォーマンスを制御できるCX3に軍配が上がるだろうというのだ。

 秋山氏がPSシリーズで特に注目するのはサーバ仮想化関連のストレージ需要だ。ファイバチャネルではホストとストレージのポートの関連付けが静的に行われるため、サーバ仮想化によってホスト側の構成が動的に変化するような環境に対応するのが難しい。しかし、iSCSIの場合、仕様としてホストから仮想IPアドレスへのアクセスを、複数のポートに分散する仕組みが備わっている。この場合のポートは、複数のストレージシステムにまたがっていてもかまわない。このためサーバ側は、仮想IPアドレスだけを認識していればいい。ポートの再割り当て作業は不要だ。

 このiSCSIのメリットに、PSシリーズのそのほかの特徴、つまり初期導入作業が容易で小1時間で済むこと、稼働中でも追加ユニットを接続するだけで容量拡張ができること、シン・プロビジョニング機能によって小規模のシステムから始め、必要なだけ後から容量を追加していけばいい点などにより、PSシリーズはサーバ仮想化と非常に相性の良い製品になっていると秋山氏は話す。つまり、サーバとストレージの運用を同時に自動化し、コストの削減を目指すこともできるというメッセージだ。

 また、矢部氏は、PSシリーズの管理上の容易さが、本来なら、よりローエンドの製品を購入するような顧客からも歓迎される可能性があるとも話している。

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▼著者名 三木 泉


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