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» 2008年03月24日 12時00分 UPDATE

世界のオフショア事情(1):インドオフショアが、いままた熱い (3/4)

[幸地,アイコーチ株式会社]

2007年初頭の低迷期を経てアウトソーシング市場はさらなる拡大へ

 「世界のアウトソーシング市場は、2007年初頭の低迷期を切り抜け、大きく立ち直ってきた」

 これはコンサルティング会社のTPIが、2500万ドル以上に相当する世界のアウトソーシング契約を分析して発表したものです。

 2007年初頭のアウトソーシング市場は、対前年50%減ともいわれ、踊り場に差し掛かったとうわさされました。ところが実際には、先進主要国でアウトソーシングが普及したことから、わざわざ契約締結をプレス発表する企業が激減したこと、報道価値のない小規模のアウトソーシング契約が増えたこと、さらに機密保持の観点から契約締結してもマスコミに公表しない案件が増えたことなどが、統計上の「市場低迷」を招いた原因だと推測されます。

 結局のところ、コスト削減を志向する海外顧客からのアウトソーシング需要に支えられて、統計上のインドIT企業の業績はあっという間に持ち直しました。アウトソーシング発注件数で見ても、インドは日本を上回りアジア太平洋地域でトップです。大口の契約が増えてきており、大口上位10社からの売り上げに占める割合は、最大手のタタが24%、インフォシスは33%、ウィプロは24%あります。ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)では、2007年10-12月期に最高益を上げるなど大躍進を遂げました。特に金融サービス分野が牽引役となりました。

参考記事
上海オフショアベンダが生き残りをかける施策とは? (@IT情報マネジメント)

 とはいえ、現実には、発注側の各企業では、アウトソーシングを成功させる決定要因は見付かっておらず、いまでもうまいやり方を模索している状況です。それで、1件当たりの範囲を小さくしてリスク分散するとともに、委託機能ごとに最適な業者を選定し委託していっています。各社ともアウトソーシングの業務プロセスや評価基準、契約事項などについて最適なやり方も模索しています。

 またインド一極集中の状況は、インドにおけるコスト上昇などを招き、コスト管理の観点からもさらなる改善が求められてきています。まだ実現してはいませんが、SaaSなどの新技術がアウトソーシング形態に与える影響についても、注意深く観察していく必要があります。

インド経済の見通しと、中国との連携強化

 ここで一息入れて、インド経済の概要を軽く紹介します。

 インドのチダムバラム財務相は、2007年度の経済成長率が9%近いとの見込みを示しました。英バークレイズ銀行は、2007年度のインドの経済成長率見通しを9.4%としていましたが、今回の予測はこれを少し下回っています。

 インドのシン首相は、2012年度までに成長率を10%まで引き上げることに自信を示しています。インドのエコノミストからは、高位安定成長を続けることで近い将来日中独を追い抜いて、米国に次ぐ世界第2位の経済大国になるとの分析も聞こえ始めています。

 インド首相府直属の経済諮問委員会EACも17日に、2007年度の経済成長見通しを8.9%、2009年3月期は8.5%に小幅減速するとの見通しです。これは米国など先進国の景気減速や、通貨ルピー高が下振れ要因として考慮されたものです。

 インドのGDP成長率は、2003年8.5%、2004年が7.5%、2005年が8.4%、そして2006年度が9.4%と高度成長を続けています。これからさらにシン首相がいうように10%になっていけば、インドが経済大国になるのはもうすぐです。

ALT 表4:インドと中国の実質GDP成長率

 インドの勢いは中国にも届いています。2006年末には、国立中国銀行から1億ドル規模の大型案件をインドのタタが受注し、私たちを驚かせました。

 中小企業が中心の中国ソフトウェア業界では、優秀なプロジェクトマネージャが不足しています。そこで中国は一計を案じました。IT産業を手っ取り早く強化するために、ライバルであるインド企業を中国に誘致して、世界で活躍するインドIT企業の優れた手法を学ぼうとしています。

 同時にインドIT大手も市場の大きさ、中国に進出した欧米の顧客へのサービス、そして対日戦略という点で中国に注目しており、次々と中国での開発拠点を増強しています。IT分野では、インドと中国の蜜月関係はしばらく続きそうです。

表5.インドIT大手の中国事業の状況
タタ 2007年750人の陣容を合弁設立し5年で5000人に増員
インフォシス 数年で6000人規模に増強
ウィプロ 上海拠点で250人、北京拠点で50人がおり、増強予定
サティヤム 2007年400人の陣容に加え、2008年2500人で新拠点開設予定

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