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» 2008年05月22日 12時00分 UPDATE

現場主導で進める業務改善の手法(1):業務改善は業務の可視化から始めよう (2/2)

[松浦剛志,株式会社プロセス・ラボ]
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プロセス思考で現状把握を行う

 業務改善における現状把握とは、ありのままの業務を「見る」「計る」ことです。硬い言葉にすると、見るとは可視化のことで、計るとは定量化のことです。見えないものは分からない、計れないものはコントロールできないは、マネジメントの鉄則です。従って、改善の対象である業務を分かる、コントロールするためには、見ることと計ることが不可欠なのです。

業務改善に役立つための現状把握の方法

 では、どのように業務を見たり、計ったりすれば、業務改善に役立つ現状把握ができるのでしょうか。それには、分析的に業務をとらえることが必要です。分析的とは分けて(=分解して)とらえることです。

 例えば、会社全体を業務として大きな1つの固まりとして見ると最終結果しか分からないため、なぜうまくいっていないのかが分からず改善策に結び付けることができません。が、固まりになっている業務を分解して見る、計ることができれば、改善策が浮き上がってきます。

 マラソンでも、42.195kmの最終タイムだけを見たのでは、改善にはあまり役に立たないでしょう。ランナーはタイムを短縮(改善)するために、区間ごとに分けてラップタイムを計るものです。

業務を分解するためのコツ

 それでは、業務改善に役立つ現状把握をするには、どのような切り口で業務を分解するのがいいでしょうか。考え方としては、以下のようなさまざまな切り口があると思います。

  • 担当部門や担当者によって分ける
  • 難易度によって分ける
  • 必要とする時間によって分ける
  • 機能によって分ける

 しかし、業務改善の場面で最も重要なことは、インプットをアウトプットに変換したある1つの業務が、さらに次の業務のインプットにつながるという流れを理解することにあります。だからこそ、前述した切り口ではなく、手順で分解するのが最良の分け方なのです。このような手順で分けることを、ここではプロセス思考と呼ぶことにしましょう。

 業務プロセスの可視化のためには、業務フローチャートを利用します。また、業務プロセスの定量化はKPI(Key Performance Indicator、本連載第2回で詳しく説明する予定です)で把握します。業務プロセスを単に言葉で表現するだけだと、複雑だったりあいまいになってしまったりして共通の理解が難しくなりますが、業務プロセスを可視化・定量化することにより、誰にでも共通の理解が可能になります。つまり、業務を語る共通語になるのです。

 この共通語が難しいものでは現場主導の業務改善が実現できませんが、見る、計ることが簡単であればどうでしょうか。現状把握の対象はそもそも現場にあるのです。コンサルタントなどの外部の力を借りなくても、現場主導で業務改善を進めていけるようになります。

 それでは、次に、見る、計るを難易度の高いプロの技としてではなく、誰でも習得可能な簡単な技術として解説していきましょう。ただし今回は、見る技術について解説します。計る技術については、次回解説予定です。

見る技術をいかに現場で活用するか

 業務プロセスを見る場合、業務フローチャートを利用していくことになります。

 業務フローチャートとは、業務プロセスの構成単位を要素に分解し、それに流れを加え、視覚的に理解しやすい形に再構築したものであるといえます。業務プロセスの構成単位は、作業ですが、作業はさらにその作業をする人、使う書類、する動作などの要素に分解されます。分解しただけでは、部分と部分のつながりが分からないので、それぞれの要素に流れを加えますが、この流れは、各要素の間を時系列に線で結ぶことにより、表します。

ALT 図3 一般的な業務フローチャート

新しい業務フローチャートとは?

 ところが、ここで見ていただいた一般的な業務フローチャート(図3)を実際に作ろうとすると、よく生じる問題があります。皆さんの中にも、次のような問題に直面した経験がある方がいるかもしれません。

  • 正確に記述しようとすると、複雑になり、見にくくなってしまう。そのため、すべてのプロセスを描けない、すべての書類やデータベースを描けなくなってしまう
  • 描画ソフト(PowerPointやVisio)で作ることが多いため、作るのも大変だが、修正するのはもっと大変になる
  • 作業の単位の大きさや記述のルールが、作成者や利用目的によって違うため、読解できない、再利用できない

 このような問題を抱えたままでは、業務フローチャートを現状把握のための見る技術として現場で利用することは難しくなってしまいます。

 しかし、従来の業務フローチャートで起きる問題を解決し、現場主導に適した、新しい業務フローチャートの作成方法があります。それが松浦式業務フローチャートです(図4)。

 松浦式業務フローチャートは、従来のものと比較して以下のような特徴を持っています。

 特徴1.作業の流れと担当者の流れが分離されている

 特徴2.作業を書類やデータベース上で行う「情報の加工」と定義している

 特徴3.表計算ソフトで記述することができる

ALT 図4 新しいフローチャートは、作業の流れと担当者の流れが分離している点、作業の定義、一般的な表権ソフトで記述できる点に特徴がある(クリックで拡大)

 なお、新しい業務フローチャートの詳細については、「新発想の業務フローチャート作成術」を参照してください。特に新しいフローチャートについては、同連載第4回の「業務フローチャート上で時間を可視化する」で詳しく解説しています。

新しい業務フローチャートで分かること

 この3つの特徴から、この松浦式業務フローチャートが、どのように従来の問題を解決しているのか、順に見ていきましよう。

 特徴1により、担当者の枠の中で作業を記述する制約がなくなります。そのため、条件分岐や並行処理など、業務の流れの多様なパターンを忠実に表現できるようになりました。

 特徴2により、作業の定義が明確になります。そのため、誰が書いても作業の大きさ(単位)が一定になるようになりました。作業の大きさが一定になることで、誰でも読み書きができる共通語としての機能が高まりました(同じ業務については、誰もが同一のフローチャートを書くことができるようになります)。

 特徴1と2によって、従来1点で示されてきた業務フローチャート上の作業を、作業の構成要素に分解した3つの点(1列)で示すように記述構造の変化をもたらします。

 その結果、従来描画として作成されていた業務フローチャートはマトリクス状で表記でき、表計算ソフトでも作成できるようになりました(特徴3)。

 表計算ソフトを利用するメリットは大きく、描画ソフトを使っていた場合には難しかった、現場の変化に合わせた素早い修正や、見にくくなることを理由に網羅されていなかった書類なども表記することが可能になりました。

 例えば、新たな作業の追加・削除には、列の挿入・削除で対応し、担当者や組織の変更は、担当フローの担当者名の変更や担当者の列の挿入・削除で対応し、作業の対象となる書類の追加・削減も、同様に簡単に修正・追加が可能になりました。

現場の業務の可視化が可能に

 これまで見てきたように、新しい業務フローチャートを使えば、現場の担当者が日々実施している業務を簡単に可視化できます。

 簡単な見る技術は、現場で簡単に使えるだけではなく、新たな価値を現場に生み出します。それは、現場で業務改善に取り組む方々が業務改善を「やらされているコト」ではなく「自発的に取り組んでいるコト」と受け止めるようになることです。

 業務の全体像が見えるようになると、業務における自分の役割や、全体最適のために自分ができることが自然と見えてきます。問題点、解決策が、自分たちで作った業務フローチャートを見て、自分たちで発見・提案できるようになると、やらされている感じがしなくなります。

 自分たちで、工夫し、成果が上がれば達成感も上がります。

今回のまとめ

 第1回となる今回は、

  1. 業務改善とは何かについての定義付け
  2. 業務改善では現状把握が重要
  3. 現状把握とは業務プロセスを見ることと計ること
  4. 業務プロセスを見る技術

と話を展開してきました。次回は、業務プロセスを計る技術から話を始めたいと思います。

筆者プロフィール

松浦 剛志(まつうら たけし)

株式会社プロセス・ラボ 代表取締役

京都大学経済学部卒。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)審査部にて企業再建を担当。その後、グロービス(ビジネス教育、ベンチャー・キャピタル、人材事業)にてグループ全体の管理業務、アントレピア(ベンチャー・キャピタル)にて投資先子会社の業務プロセス設計・モニタリング業務に従事する。

2002年、人事、会計、総務を中心とする管理業務のコンサルティングとアウトソースを提供する会社、ウィルミッツを創業。2006年、業務プロセス・コンサルティング機能をウィルミッツから分社化し、プロセス・ラボを創業。プロセス・ラボでは、業務現場・コンサルティング・アウトソースのそれぞれの経験を通して培った、業務プロセスを理解・改善する実践的な手法を開発し、研修・コンサルティングを提供している。


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