“最後のひと押し”販促策で、売り上げが決まる!マーケティング入門〜売れる仕組みの作り方〜(5)(3/3 ページ)

» 2008年09月12日 12時00分 公開
[斉藤孝太,株式会社SIS(ストラテジック インテリジェント システム)]
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キャンペーンは顧客データの活用が鍵

 では次に、販売促進戦略のもう1つの柱、セールスプロモーションについて解説しましょう。こちらにはキャンペーン、クーポン、イベント、プレミアムといった手段があり、商品購入を直接的に促進します。

キャンペーン

 各種キャンペーンの中でも、商品購入を参加条件としたクローズドキャンペーンが頻繁に活用されています。例えば、商品に貼られたシールをハガキに貼って応募してもらう、あるいは、指定されたURLにアクセスしてシールの中に印刷された応募番号を入力してもらい、抽選で何らかの特典を付与する、といった施策がこれに当たります。飲料メーカーの実施例をよくみかけるのではないでしょうか? 商品購入を条件としないオープンキャンペーンも実施されていますが、こちらは縮小傾向にあります。

 大規模なキャンペーンになると、顧客からの問い合わせに対応することを目的にコールセンターを開設したり、応募のあった顧客の情報を基に電子メール広告を配信することもあります。そうしたキャンペーンの実行や、次のアクションへの情報活用をサポートする、キャンペーン・マネジメントツールも多数リリースされています。

 中には、営業部門内の情報共有を実現するSFAでありながら、商品開発やキャンペーン企画に生かすことを目的に、一元管理された顧客データベースを利用し、顧客リストを分析して見込み客や優良顧客を抽出するという、BI機能を持ち合わせたものもあるなど、この分野をサポートするITツールはかなり製品数が充実しているようです。

クーポン

 特定の商品に対してチケットを用意し、消費者が商品購入時、それを店頭で見せたり、あるいは店舗に送ったりすることによって一定金額分の値引きをする、何らかの特典を付与する、といったものです。キャンペーンの一環として使うことが多く、これをきっかけに来店、購買を促進します。近年は、ケータイやPCを利用した電子クーポンを使う例も数多く見受けられます。

 中でも有名なのは、レンタルCDショップ、TSUTAYAの事例です。レンタル会員限定の割引キャンペーン情報などを、会員顧客のPC、ケータイにメールで送信し、その際、オンラインクーポンをダウンロードできるURLも告知します。興味を持った会員には、そのURLからクーポンをダウンロードしてもらい、プリントアウトしたものを店頭で提出、あるいはケータイの画面を店頭で見せてもらうといった形で、来店を促進します。データウェアハウスに蓄積した会員の属性データや来店履歴に応じて、適切な内容、タイミングでキャンペーン情報を告知することで、来店、販促効果をいちだんと高めることに成功しています。

販促イベント

 ディスカウント価格を全面的にアピールして売り上げ向上を狙うバーゲンセールをはじめ、百貨店などで行われている物産品などの展示即売会や、商品PRをする商品展示会など、何らかの特別感をあおって消費者の購買意欲を高める手法です。

プレミアム

 おまけや景品のことです。キーホルダーやタオルなど、ちょっとした小物を商品に添付して購買意欲を刺激します。ソフトドリンクやワイン、ウイスキーなど飲料製品で実施する例が多く、スーパーマーケットなどでは多数のプレミアムを見ることができます。


 以上のように、消費者向けのセールスプロモーションにはさまざまな手段があります。ただ、販促効果をより高めるうえでは、キャンペーンやクーポンで紹介したように、顧客データを効率的に蓄積し、いかに活用するかが1つの鍵となります。次のアクションに効果的につなげていくうえでは、キャンペーン・マネジメントやBI、データウェアハウス、SFAなど各種ITツールをどう活用するか、熟慮することも重要なテーマといえるでしょう。

流通・小売業者を、“知恵”と“リソース”で援護射撃

さて、ここまでは一般消費者向けの販売促進策でしたが、流通・小売業者向けにも販売促進策が存在します。ディーラーヘルプ/リテールサポート、リベート、クローズド・Webサイト開設、といった取り組みです。

ディーラーヘルプ/リテールサポート

 まずディーラーヘルプとは、メーカーが販売店に向けて、販売員を派遣したり、販促支援イベントを開いたり、インナーキャンペーンを実施することを指します。仕入れ意欲の向上や、販売店自身の販売力を強化することを目的としています。その発展形がリテールサポートです。

 リテールサポートは、メーカーや卸売業者が、小売業者の経営や販売促進などを直接的に支援する活動で、財務や税務のアドバイスをはじめ、POSシステムの提供やPOSデータの分析、棚割り提案やマーチャンダイジング、売場作りなどをサポートします。さらにチラシ、POP、ディスプレイ、告知ボードといった販促ツールの提供も行います。

リベート

 リベートとは、メーカーが卸売業者、小売業者に対して、一定期間の商品取り引き量、取り引き金額に応じて支払う代金割り戻し(キャッシュバック)のことです。いわば、メーカーが販売経路拡大のために支払う“報奨金”といった位置付けです。メーカーが取り引き先別にリベート金額を調整することで、取り引き先の利益を補うケースも多くみられます。日本的な商習慣として根付いた取り組みではありますが、ビジネスを公平かつクリーンに行ううえでは問題もあり、現在は改善が叫ばれています。

クローズド・Webサイト

 一方、最近多くのメーカーが開設しているのが、卸売業者や小売業者向けのクローズド・Webサイトです。売り上げアップの成功事例や、新商品情報など、従来は営業パーソンが個別に伝えていた情報を、インターネットでも随時提供しようという取り組みです。この流れを受けて、メーカーの社内だけではなく、その取り引き先も含めて有効な情報を共有し、互いにビジネスの知恵を出し合う創発的コミュニケーションを実現するものとして、社内SNSをはじめ、情報共有のための各種ITツールが注目されています。

 また、インターネットへの対応が難しい、あるいはインターネットだけでは情報を正確に伝えきれない、といった懸念がある場合は、卸売業者や小売業者向けのコールセンターを設け、さまざまな相談事について対応するケースもあります。


 さて、これでマーケティングの4Pすべてを紹介しました。第1回「そもそもマーケティングって何?」でもお話しましたが、販売促進の分野は、4Pの中でもとりわけITツールが多いことを実感されたのではないでしょうか。販売促進業務は、ビジネスとして消費者に一番近い領域であり、かつ売り上げにも直接的に響く業務です。この領域は“口コミ”も含めて“情報”がモノをいいやすく、それをいかに効率的に管理・活用するかがポイントとなるだけに、今後も新たなITツールが次々と開発されることでしょう。

 ただ、それに振り回されてはいけません。自社を取り巻く状況を熟慮して3Pをしっかり整備することと、それを基盤に最後のひと押し、すなわち販促策をどう展開するか──各種施策の意義と目的をきちんと把握することが何よりも大切です。その実行手段として各種ITツールを見渡せば、より効果的に利活用できるのではないでしょうか。

 次回はマーケティングの4Pを踏まえて、「次世代型・顧客基点のマーケティング4P」についてお話します。

筆者プロフィール

斉藤 孝太(さいとう こうた)

株式会社SIS(ストラテジック インテリジェント システム)代表取締役。

大学卒業後、広告代理店に企画営業として勤務し、主に大手マンションデベロッパーの販売促進を担当。その後、企画・マーケティング会社にてマーケティングプランナーとして勤務。大手メーカーなどのマーケティング計画策定から販売マニュアル作成などを手掛ける。

その後、マーケティング・コンサルティングファームに入社し、多数の顧客案件を成功に導く。現在、店舗系ビジネスにおける顧客との関係性強化や、CRMを販売現場に導入するコンサルティングを実施している。


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